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おぢばにおかえり

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第五十八話 入学前のその十五

「今までね」
「それが奥手っていうの。とにかくね」
「これからは」
「恋愛もしなさい丁度ね」
 ここでお母さんは笑ってこんなことも言いました。
「お相手もいるみたいだし」
「?いないわよ」
 私はすぐにこう返しました。
「そんな人は」
「そうかしらね」
 凄く思わせふりで楽しそうな顔で言ってきました。
「果たして」
「いや、本当にいないわよ」
 私は心から言い返しました。
「誰も」
「そう思って実はよ」
「そうかしら」
「千里が気付いていなくてもね」
「そんな人いないから」
「心当たり本当にないのね」
「ないわよ、そんな人」
「やれやれね、それじゃああの子も苦労するわね」
 今度はあの子と言ってきました。
「何かと」
「あの子って誰よ」
「それがわからないのがまだまだってことよ」
「まだまだって言われても」
 本当に心からでした。
「何が何だか」
「まあそのうちわかるわね」
「そのうちなの」
「そうよ、お母さんはあの子でいいと思うしね」
「そのあの子が気になって仕方ないけれど」
「そのうちわかるわ、幾ら何でも」
 やっぱり笑って言うお母さんでした。
「千里でもね」
「私でもって」
「そう、相手のアタックでね」
「相手もわからないけれど」
「それでもわかる時が来るから」
「大学に入ってから?」
「そう、千里詰所から大学に通うでしょ」
 お母さんは今度はこのことを言ってきました。 
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