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アルゼンチン帝国召喚

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第十八話「それぞれの動き2」

第十八話「それぞれの動き2」
「そうか……、アルゼンチン帝国は我々以上であったか」

グラ・バルカス帝国帝都ラグナの皇城にて皇帝グラルークスは観戦武官から戻ってきたミレケネス等の報告を聞き深く絶望とも言える息を吐いた。
ミレケネスはここまで自国の船で戻ってきたわけではない。グレート・ディアボロス級原子力戦艦三番艦リヴァイアサンを含む艦隊に乗艦して真っすぐ戻ってきたのである。この時現地人にすら知らせていない本土の正確な位置を知るアルゼンチン帝国にミレケネスは改めて恐怖し絶対に敵対してはならないと考えていた。

「はっきり言いますがアルゼンチン帝国には絶対に勝てません。技術面でもそうですが何より敵対すれば本土が焦土と化します」
「……」
「陸については分かりませんが少なくとも陸軍も勝てないでしょう」

ミレケネスの言葉を聞きグラルークスは頭を抱えた。全世界ユグドでも見た事がない超大国アルゼンチン帝国。彼の存在の前にこの世界を支配するというグラルークスの野望が大きな音を立てて崩れ去っていった。

「……ですが、一つだけ良い報告があります」
「何だ?」
「アルゼンチン帝国の弱点とも言えるものです」
「ほう?」

ミレケネスの言葉にグラルークスは反応した。別にこちらから敵対するわけではないが絶対に勝てない相手の弱点を知れれば多少なりとも心が落ち着く。

「アルゼンチン帝国は敵には容赦がありません。それは自治領を見れば分かります」
「現地人には一切自治を行わせない、だったか?」
「はい、その通りです。一方でアルゼンチン帝国は内に入ったもの、友好国と判断した国に対しては異常なほど甘くなります。パーパルディア皇国は滅ぼされましたが領土は神聖オーストリア・ハンガリー帝国とヌナブト連邦共和国という国にも提供しています。神聖オーストリア・ハンガリー帝国は分かりますが後方支援しかしていない国に大量の領土を与えています。更には統治に失敗していたという話もありますがロデニウス大陸にあった自治領も譲っています」
「それは……、いくら何でも異常ではないか?」
「ええ、ですがもしグラ・バルカス帝国がアルゼンチン帝国にとって友好国だと判断されれば……」
「かの国の恩恵が多少なりとも貰えるはずか……」
「ええ、その可能性は高いです」
「ならばやるべきことは単純だ。外交官を派遣し今以上に友好関係を築くのだ。他にも相手が望むなら我が本土に大使館の設置を許可するのだ。他にも……息子を留学という形で送るか。アルゼンチン帝国を深く知る事が出来るかもしれないし何よりアルゼンチン帝国という国を感じさせたい。この世界は彼の国を中心に動き出すだろうからな」
「はっ!」

グラ・バルカス帝国は即断しアルゼンチン帝国との友好関係を更に強化する為に動き出すのであった。




「……また、戻って来れるとはな」

パーパルディア皇国の皇女レミールは再開発が行われているエストシラント、現ラグナ―・インペリオに戻ってきた。エストシラント空襲からまだ一月ほどしか経過していない。それなのにレミールは随分と離れている気になっていた。
レミールは未だ治らない左腕と右足にギブスを付け帝国軍の女性士官に車椅子を押してもらいながらラグナー・インペリオを見る。瓦礫などは大体が撤去され今は大工の寝泊まりする仮設住宅が並ぶ何とも殺風景な物となっていた。かつてレミールが住んでいた館も、栄華を誇った街も、皇帝の居城も何もかも無くなりあのころとは全く違ったアルゼンチン帝国の都市がつくられる。

「(ああ、願わくばアルゼンチン帝国がこれ以上パーパルディア皇国、いや帝国領パールネウスの者たちを虐げないように祈るばかりだ)」

レミールは一月前と比べやせ細り生気のない体を車椅子に深々と座らせ今後を祈るのであった。






「魔王、ね」
「いかがいたしますか?」

インペリオ・キャピタルの総統府にてアイルサン・ヒドゥラーはトーパ王国からの使者から聞いた内容の報告を受けていた。内容はかつて封印されていた魔王が目覚めたため討伐するのを手伝ってほしいというものだった。
パーパルディア皇国との戦争(蹂躙)も終わり余裕が出来つつあるアルゼンチン帝国だが流石にこれ以上の戦争は避けたいというのが本音であった。

「本来なら無視する、というのが普通だがこれを見る限り、な」
「魔王とその配下の二体のオーガですね」
「ああ、恐らく我々が調べた中では一番最強だろう。更に型落ちとは言えオーガも千を超えている。配下のゴブリンも含めればフィルアデス大陸程度なら制圧できるだろうな」

フィルアデス大陸南部を勢力下に置くアルゼンチン帝国からすれば無視する事は出来ない。
もし、ここで援軍を派遣しなければフィルアデス大陸北部から人々が逃げてくる可能性がある。そうなれば獲得したばかりのフィルアデス大陸南部の領土は大混乱に陥るだろう。そうなるのは避けたいのが本音だった。
アイルサン・ヒドゥラーは決断する。

「……仕方ない。ヨルムンガンド級原子力空母を旗艦とした特殊機動艦隊を向かわせろ。決して上陸せずに海から殲滅するのだ」
「もし、それで倒せなかったら?」
「その時は負担になるが軍勢を送る必要があるな。最悪の場合……」

アイルサン・ヒドゥラーはその先を言わなかった。アルゼンチン帝国最大の切り札にして惑星破壊兵器。使えばその土地は死に絶える禁忌の兵器をアルゼンチン帝国は厳重に封印していた。それこそ国家機密と言えるほどに。
だからこそアルゼンチン帝国は願う。願わくば、禁忌を使わずに済む程度であるように。

「……そうだ、あの国にも連絡を入れて置け。恐らく喜んで向かっていくだろう」
 
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