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小ネタ箱

作者:羽田京
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東方
  【加筆修正】幻想郷がソ連に蹂躙される話②

 
前書き
幻想郷がソ連に蹂躙される話の加筆修正版です。美鈴の出番までいかなかった・・・。 

 
「お姉さま、また妖怪の失踪事件が発生しました」


 扉を開けて、クレムリンの執務室に入ってきたのは、10歳ごろの容姿で背中の羽に無数の宝石を下げた少女。
 御年500歳を超える吸血鬼、フランドール・スカーレットでKGBのトップを務める。
 人間ならばとんでもない長寿といえるが、妖怪の中では若手と言えた。


「はあ、またなの? 私たちソ連に喧嘩を売るなんて、いったいどこの誰かしら? 被害者が無事に帰ってきているのだけは、不幸中の幸いね。記憶を失っているけれど」


 フランドールに答えるのはソ連のトップ、レミリア・スカーレット書記長である。
 彼女も吸血鬼であり、背中には蝙蝠のような翼があった。
 ソ連を建国したカリスマ的独裁者である。「赤い皇帝」と畏敬を込めて呼ばれていた。
 妹のフランドールを猫可愛がりしている彼女は、妹の姿に目を綻ばせるも、すぐにきりりとした表情を作った。


「あなたたちKGBでもわからないのね?」

「ダー(そうです)。目撃者が大勢いる中、こつ然と姿を消すそうです。おそらく、何らかの魔術によるものだと思われますが、痕跡が残されておらず調査は難航しています」

「同士パチェは何と言っているのかしら?」

「転移魔法とはまた違うようだと言っています。いま、現場を回って詳細な調査をされています」

「同志こいしの方は?」


 古明地こいし内務省(NVD)長官。彼女は、人の心が読める、さとり妖怪である。
 紆余曲折を経て、フランドールの忠実な下僕となっていた。
 彼女に褒められたいがために、秘密警察を率いて、国内の反乱分子を嬉々として粛清している。
 心の声が聞こえる彼女は、尋問にぴったりである。が、あえて拷問することも多い。
 レミリアは密かに、隠れサド、と呼んで恐れている。トラウマなんてなかった。


「やはり調査中です」

「そう、ありがとう。苦労をかけるわね」


 苦笑しながら、ねぎらう。


「ニェット(いいえ)。そんなことはありませんわ、お姉さま。いまの仕事には、やりがいを感じています」


 ふわり、と笑いながら頼もしい言動をするフランドール。 
 フランも立派になったわね、と、レミリアは訳もなく嬉しくなった。
 泣く子も黙るスパイ機関である国家保安委員会(KGB)のトップである。対外諜報活動を一手にになっており、レミリアに次ぐ権力をもっている。
 少しでも彼女の機嫌を損ねれば、ルビヤンカの地下送りかシベリアに流刑にされるといわれ、恐れられていた。とはいえ、あまり粛清しすぎないように、レミリアは気を付けるようにしている。


 そのフランドールは、生まれたときから強力すぎる能力を持っていた。
 さらに、悪いことに狂気におかされてもいた。親は、そんな彼女を殺そうとした。だから――


「もう、家を出て500年かしらね」


 ――家出した。フランドールを連れて。楽な旅路ではなかったが、妹とともに根気強く狂気を抑えようとした。旅の途中で仲間になった魔女パチュリー・ノーレッジや武闘家である紅美鈴の協力を得て、やっと日常生活を送れるようになったのだ。
 100年以上かかったが、嬉しそうに笑うフランをみて、彼女は幸せだった。
 フランドールも、常に自分に味方してくれた優しい姉を心から愛していた。
 

 というか、愛しすぎていた。


 レミリアの失くしたぱんつが、フランドールの部屋から大量に見つかったり。
 配下のKGB職員に命じて、四六時中レミリアの盗撮と盗聴をさせていたり。
 部屋の壁という壁にレミリアの盗撮写真を貼っていたり。
 レミリアを批判した人間や妖怪を、ルビヤンカの地下に送って拷問したり。
 レミリアはこう思ったという。
 

(どうもてもヤンデレです。本当にありがとうございました)


 ちなみに、ブラはなかった。理由は(察し)。


 当の本人は、前世でヤンデレ好きだったために、意外とこの状況を楽しんでいた。
 フランドールの行動を咎めるどころか、愛なら仕方ないね、といって周囲を呆れさせている。
 誰もが認める仲良し姉妹だった。それでも、レミリアにも悩みはある。
 前世は男だった。だから、男と付き合う気は毛頭ない。
 じゃあ、女は?というと、ありかも知れない。が、相手が妹というのはNGだ。近親趣味はない。
 フランドールの性的なアプローチとの戦いは、まだまだ続きそうだった。 


「あっという間でした。偉大なるソ連を建国してからは、もう無我夢中で」

「ふふふ、まさかここまで大きくなるとは思ってなかったけれどね」


 しみじみと昔話に花を咲かす。
 仕事の疲れが癒されるのを感じながら、自分の選択は間違っていなかったと再認識した。
 その最中、水を差すような言葉が耳に入ってきた。


「あと、世界革命までもうすぐですね!」

「あー、同士フラン? 別に、私はいまのままで満足しているわ」

「お姉さまは優しすぎます。資本主義の豚どもや、資本主義に魂を売った修正主義者という悪魔どもを粛清し、革命を輸出することで、いまこそ万国のプロレタリアートの楽園を作るべきです! 世界の全てはお姉さまの前にひれ伏し、真の救済を得るのです! 世界は全てお姉さまのもの。お姉さまが何をしようと誰が咎められるでしょうか」


 思わず頭を抱えそうになった。あくまでも、共産趣味者だったレミリアは、共産主義に幻想を抱いていない。
 しかし、さすが史実で世界を二分した麻薬のような思想だけあって、共産主義に傾倒するものは多かった。
 このソ連という共産主義によって栄えた大国があるのだから、無理もない。
 無理もないが、妹が共産主義にここまで傾倒するとは、予想外だった。KGB長官として辣腕をふるう彼女は、過激派の元締めになってしまったのだ。


 さらに、史実のスターリンやレーニンのようにレミリアへの行き過ぎた個人崇拝も加わる。
 ソ連の都市には、必ずレミリア像が立っている。学校の教室には、必ずレミリアの肖像画がある。
 独裁者の宿命かもしれなかった。


 この過激派が、フランドール一人だったらまだよかった。
 問題は、彼女以外のソ連の幹部にも過激派が多いということだ。
 下僕、あの花妖怪やきゅうりマッド、バカ妖精のせいで、妹が染まってしまったのだ。と、彼女は思っているが、実際はフランの方が感染源である。
 事あるごとに過激な主張をするようになったフランドールを見て、レミリアは、ひっそりと涙を流した。 
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