星河の覇皇
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第七十三部第一章 野心家のはじまりその二十九
「そして軍事費もだ」
「これまで以上にですね」
「苦しくなる」
「だからですね」
「ここは、ですね」
「国債の発行ですか」
「再びな、まただが」
それこそというのだ。
「エウロパは今は特にだ」
「国債を発行してもですね」
「それでもですね」
「予算が必要ですね」
「まさに建国以来のことですね」
「そうだ、こうした状況だからこそだ」
敗戦後で復興と発展が必要な状況だからだ。
「必要なのだ」
「国債は国家の借金です」
エットーレは強い目になってだ、ギルフォードに言った。ギルフォードの同志であり腹心の一人でもあるがあえて国家の為に言っているのだ。
「借金が増えますと」
「よくないな」
「国家でも個人でも家庭でも」
「それはそうだ、しかしだ」
「今のエウロパはですね」
「その借金をしてでもだ」
「予算が必要ですか」
ギルフォードに言ったのだった。
「どうしても」
「そうだ、他に予算を工面する方法があるか」
「そう言われますと」
「今でだな」
「はい、あらゆる手を尽くしました」
「財務省もです」
フェルゼンも言ってきた。
「とかくです」
「そうしてきたな」
「そのうえで、ですから」
「そうだな、国債もだ」
「既に多く出しています」
「これ以上国債が増えますと」
エットーレはあえて言った、再び。
「今後返済がです」
「不安になるな」
「そうも思いますが」
「わかっている、しかし今エウロパは復興をしていてだ」
ギルフォードはローズティーの香りと甘さを楽しみつつ答えた、飲む口からも薔薇と茶の香りがしている。
「このままいくとだ」
「発展ですか」
「その段階に移れますか」
「最初からそのつもりだったしだ」
ギルフォードは二人に話した。
「予算もだ」
「そのつもりで、ですね」
「多く用意しようとして」
「そして、ですね」
「国債も」
「借り入れたのだ、だがここでだ」
フェルゼン、そしてエットーレに話した。
「軍事にだ」
「諜報ですね」
「そちらもですね」
「力を入れる為にだ」
「予算を確保する」
「その為の国債発行ですね」
「増税はしない」
この手段はとだ、ギルフォードは言い切った。
「もう税収もだ」
「極限まで、ですね」
「行っていますね」
「ですからこれ以上の増税はですね」
「出来ないですね」
「そうだ、これ以上の増税は経済に悪影響を及ぼす」
その目を鋭くさせてだ、ギルフォードは言った。
「市民は自身の家計を守る為に消費を控える様になる」
「消費が減ればです」
フェルゼンが応えた。
「その分経済の動きが鈍ります」
「それだ、経済はだ」
「これまで通り、いえこれまで以上にですね」
「動かしていきたい」
こう考えるからこそだった。
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