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星河の覇皇

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第七十三部第一章 野心家のはじまりその二十八

「話をしよう」
「飲みものは」
「何を用意しましょうか」
「私は決まっている」
 ギルフォードはまず自分のものから述べた。
「これだ」
「ミルクティーですか」
「そちらですか」
「いや、紅茶は紅茶だが」 
 イギリス人らしくこれは変わらなかった。
「しかしだ」
「別の紅茶ですか」
「ミルクティー以外の」
「ローズティーがいい」
 こちらの紅茶だというのだ。
「紅の薔薇のな」
「はい、それでは」
「そちらの紅茶にされますね」
「ではお二人は」
「蔵相と総裁は」
「彼等の好みのものにする」
 笑みを浮かべてだ、ギルフォードは官邸の者達に言った。
「コーヒーだ」
「そちらですか」
「そちらにされますか」
「蔵相のコーヒーはクリームと砂糖を多く入れてだ」
 まずは彼のものから話した。
「総裁は逆に何も入れない」
「ブラックですね」
「それも無糖の」
「それにする、ではだ」
「はい、これよりですね」
「会議室の一つで、ですね」
「話をしよう」
 彼等とだ、こう話してだった。
 程なくして二人の妙齢の女達が来た。一人は黒髪に黒い目で彫のある面長の鼻の高い長身の持ち主だった。膝までのスカートの端整な黒いスーツが似合っている。
 もう一人は赤い膝までのスーツの茶色の短い髪と青い目の四角い顔の整った女だった、年齢は先程の女よりも若く見える。鼻は低めで唇は艶やかだ。
 先の女はクリムヒルデ=フォン=フェルゼン。エウロパの現蔵相だ。そして次の女はカリーナ=デル=エットーレという。二人共ギルフォードの同志だ。フェルゼンはスウェーデンの子爵家出身でエットーレはイタリア系スイス人の騎士階級の娘だ。
 二人が来てだ、ギルフォードは会議室で彼女達に言った。
「話は早速だが」
「はい、予算のことですね」
「そちらのことですね」
「マウリアにおける諜報網への予算をだ」
 それをというのだ。
「これまで以上に増やしたい」
「そしてそれの予算の調達をですね」
「我々にですか」
「頼みたい、しかしだ」
「はい、我々はです」
「今はです」 
 エウロパはとだ、フェルゼンとエットーレはギルフォードにあえて話した。
「予算がです」
「極めて苦しい状況です」
「これ以上の予算の確保となりますと」
「それこそ」
「また、だな」
 ギルフォードもあえて言った、言いながらもその手にはティーカップがあり紅茶を飲む余裕はしっかりとある。
「国債だな」
「それの発行となりますが」
「宜しいですか」
「諜報網の件だけではない」 
 ここでだ、こう言ったギルフォードだった。
「他の件、特に軍事費だ」
「それの確保で、ですね」
「これまでの国債が必要ですか」
「そうなりますか」
「だからこそ今日我々を呼ばれたのですか」
「そうだ、卿達に頼みたい」
 それぞれのコーヒーを飲む二人にまた言った。
「国債の発行をだ」
「これまで以上に」
「そうされたいですか」
「さもないとマウリアでの諜報網が予算面で苦境に陥る」
 このことを危惧しての言葉だった。 
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