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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第5楽章~交わる想い、繋がるとき~
  第50節「カ・ディンギルの謎」

 
前書き
純くんの事情も分かったところで、いよいよクライマックスへの助走が始まる! 

 
「「失礼しましたー」」
 響と未来が、職員室に提出物を出して退室する。
 晴れ渡った青空、明るい日が照らす校舎には、合唱部が歌うリディアンの校歌が響き渡っていた。
「ふんふふふーんふーん、ふふふふふーん……♪」
「なに?合唱部に触発されちゃった?」
 未来が響の方を振り向くと、響は窓から運動場や別の棟を見渡しながら答える。
「うーん。リディアンの校歌を聴いてると、まったりするっていうか、すごく落ち着くっていうか……。皆がいる所って思うと、安心する。自分の場所って気がするんだ。入学して、まだ2ヶ月ちょっとなのにね」
「でも、色々あった2ヶ月だよ」
「……うん、そうだね」
 翼の新曲CDを買いに行った矢先、ノイズに襲われた少女を助けようとして、胸のガングニールが覚醒したあの日。
 ノイズと戦う特異災害対策機動二課と出会い、シンフォギアについて知り、戦う覚悟を決めた夜。
 そして翔と出会い、彼と関わる中で惹かれ合い、そして結ばれた。
 2ヶ月間、本当に色んな事があった。それこそ、彼女の人生を変えるほどに。
 でも、これから先もこの日常だけは変わることなく、これから先も続いていくのだろう。
 確証はないが、そんな事を思いながら響は、リディアンという日常の風景を眺め続けるのだった。
 
 ∮
 
「……やっぱり、あたしは」
 本部に戻るべく、フィーネの屋敷を出ていくエージェント達。
 車に乗り込もうとした弦十郎に、クリスはそう声をかけた。
「一緒には、来られないか?」
「……」
「お前は、お前が思っているほどひとりぼっちじゃない。お前がひとり道を往くとしても、その道は遠からず、俺達の道と交わる」
「今まで戦ってきた者同士がか?一緒になれるというのか?世慣れた大人が、そんな綺麗事を言えるのかよ」
「ほんと、ひねてんなお前。ほれ──」
 弦十郎が投げて寄こしたそれを、クリスは片手で受け取る。
「通信機……?」
「そうだ。限度額内なら公共交通機関が利用できるし、自販機で買い物もできる代物だ。便利だぞ」
 そう言って弦十郎は運転席のドアを閉めると、エンジンをかける。

 クリスは意を決したように、弦十郎へと声をかけた。
「…………『カ・ディンギル』!」
「ん?」
「フィーネが言ってたんだ。『カ・ディンギル』って。それが何なのか分からないけど、そいつはもう、完成しているみたいな事を……」
「……カ・ディンギル。後手に回るのは終いだ。こちらから打って出てやる」
 弦十郎はハンドルを握る。それを見てクリスは慌ててもう一言付け足した。
「あとそれから……あたしの知り合いが、フィーネに連れてかれた。あたしを庇って……だから、見つけたら教えてくれ!あたしは絶対に、そいつを迎えに行かなくちゃいけないんだ!」
「……分かった。見つけ次第、連絡しよう」
 そう言って弦十郎はエージェント達と共に、屋敷を後にした。
 砂埃を上げて去っていく車を見送って、クリスは屋敷で拾った眼鏡をポケットの中から取り出した。
(ジュンくん……。待ってろ、もう少しだからな……)
 
 ∮
 
 昼食も終わって、未来と2人で寮へと戻ろうとしていたわたしの通信機のアラートが鳴る。
「師匠からだ!響ですっ!」
『翼です』
『翔です』
『3人とも、聞こえているな。敵の目的について収穫があった。……了子くんは?』
『まだ出勤していません。朝から連絡不通でして……』
 師匠の一言に、友里さんが答える声が聞こえた。
「そうか……」
『連絡が取れないとは、心配ですね。以前の広木防衛大臣の件もあります』
 翼さんが不安そうに呟く。
「了子さんならきっと大丈夫です!何が来たって、わたしと翔くんを守ってくれた時のようにどがーんッ!とやってくれます!」
『いや、戦闘訓練もろくに受講していない櫻井女史に、そのような事は……』
「え?師匠とか了子さんって、人間離れした特技とか持ってるんじゃないんですか?」
『叔父さんは戦闘力、緒川さんは忍者、藤尭さんは暗算能力、友里さんは健康状態把握力……。二課は大人、いや、OTONA揃いだから、了子さんのあのバリアーもその科学力の産物だと思うんだけど……叔父さん、見たこと無かったんですか?』
 翔くんに言われて驚いた。い、言われてみれば確かに、二課の人達って凄い人だらけだ……。
『いや、そのような発明は俺も聞いていないが……』
『や~っと繋がった~。ごめんね、寝坊しちゃったんだけど、通信機の調子が良くなくて~』
 そこへ了子さんの通信が入る。な~んだ、ただの寝坊かぁ。よかった~。

『……無事か。了子くん、そちらに何も問題は?』
『寝坊してゴミを出せなかったけど……。……何かあったの?』
『……ならばいい。それより、聞きたい事がある』
『せっかちね、何かしら?』
『──カ・ディンギル。この言葉が意味するものは?』
『……カ・ディンギルとは、古代シュメールの言葉で『高みの存在』。転じて『天を仰ぐほどの塔』を意味しているわね』
『何者かがそんな塔を建造していたとして、なぜ俺達は見過ごしてきたのだ?』
「確かに、そう言われちゃうと……」
 そんな大きな塔なんて建ててたら、皆すぐに気付いちゃうと思う。
 バレなかった理由があるなら……うーん、何だろう?
『だが、ようやく掴んだ敵の尻尾。このまま情報を集めれば、勝利も同然。相手の隙にこちらの全力を叩き込むんだ。最終決戦、仕掛けるからには仕損じるなッ!』
「了解です!」
『了解です』
『了解!』
 師匠の号令に、わたし達3人が同時に答える。
『ちょっと野暮用を済ませてから、私も急いでそっちに向かうわ~』

 了子さんの声と共に通信を終えたわたしは、ポケットに通信機を仕舞いながら呟く。
「カ・ディンギル……。誰も知らない秘密の塔……」
「検索しても、引っかかるのはゲームの攻略サイトばかり……」
「う~ん、なんなんだろう……」
 検索をかけていた未来も首を傾げる。
 翔くんに電話してみようかな?こういうの詳しいのは翔くんだし。
 そう思ってケータイを取り出した時、ノイズ出現の警報音が鳴り響いた。
 
 ∮
 
「さて……私の計画も、そろそろ大詰めね」
 廃墟の非常階段。撃たれた腹部を押さえながら、櫻井了子は呟いた。
 血に濡れた服、しかし痛む理由は傷ではない。その様子を見て、純が心配そうに声をかける。
「大丈夫ですか?」
「爽々波クン、あなた自分の立場を分かってるのかしら?私の計画よりも、私の身を心配するなんて、お人好しにも程があるわよ」

 了子の呆れたような言葉に、純は苦笑いする。
「こればっかりは性分なので。……僕の役目は時間を稼ぐだけ、でしたよね」
「ええ、そうよ。東京スカイタワーに、シンフォギア装者達が突入出来ないよう相手してあげなさい。改良したとはいえ、聖遺物の力を解き放ったそのギアが安定稼働できるのは3分間。それ以上持たせられるのかは、あなたの精神力次第よ」
 そう言って了子は立ち上がり、白衣の下から取り出したソロモンの杖を空へとかざす。
 バビロニアの宝物庫から呼び出されたのは、旅客機のような姿の巨体を持つ、空中要塞型ノイズ。それを4体、街の上空へと放った了子は、念を押すように純へと言い放つ。
「私との契約を破って手を抜こうとしても無駄だから、その辺り覚えておきなさい。少しでも手を抜いたら、鎧の内側に仕込んだネフシュタンの欠片があなたの心臓を貫いちゃうし、私の目的が達される前に負けようものなら、ノイズ達に命じてクリスを集中攻撃させるわ」

「……やっぱりあなたは真性の魔女だ」
 苦虫を噛み潰したような表情の純を見て、了子は笑った。
「なら、力の限り戦いなさい。あなたが誓った愛のために、ね」
 了子が去って行くのを確認して、純はメットを被る。
 自動でバイザーが降り、口を覆い隠すマスクが展開された。
『……頼むよ、翔。僕があの人との契約を完遂するには、君が本気で僕と戦ってくれないといけないみたいだからね……』
 マスクの裏に封じられた言葉。それでも彼は、こちらの事情を一切知らずとも何とかしようと動いてくれるであろう親友に望みを託し、天高く伸びる塔へと向かって行った。 
 

 
後書き
弦十郎「それにしても、血文字の『I LOVE YOU. SAYONARA』か……。彼女は、誰に対してこのメッセージを残していたんだろうな……」
クリス「知るかよ……。フィーネが愛してる、なんて暇を告げるような相手がいるのか?」
弦十郎「クリスくんへ宛てたものではないか?」
クリス「んなわけねぇだろ!あたしを殺そうとした奴だぞ!?」
弦十郎「ならば、一体誰へ……」
クリス「案外、おっさんに対してだったりすんじゃねぇの?」
弦十郎「俺……だと?」
クリス「ここがバレてんの察して、おっさんがここに来たら爆弾で始末するつもりだったからこそ書いた……とかよ」
弦十郎「……了子くんが、俺へと宛てて……か」
クリス「ま、あいつの考えてる事なんてあたしにゃ読めねぇけどな」
弦十郎「ふむ……。まあ、どちらに宛てていたせよ言えるのは、別れを告げる程度には大事に思われていた……という事だろうな」
クリス「あたしはぜってー認めないからな。あんな奴が、人を本気で愛してるはずがねぇ」
弦十郎「……戻るぞ。もうここに用はない」

本日は補完パート。
果たしてあの手紙、誰に宛てたものだったんでしょうね?

次回、スカイタワーにノイズが迫る!
急行する二課の装者達。そこへ現れたのは……!? 
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