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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第1楽章~覚醒の伴装者~
  第7節「頑固な剣(あね)との向き合い方」

 
前書き
さあ、姉さん対策会議の始まりです。
今思えば懐かしいなぁ、ブラコン全開だった頃って意味でも面倒臭かった頃の翼さんw 

 
「それで、姉さんとの接し方で迷ってるんだよな?」
 立ち話もなんなので、二人でソファーに腰掛ける。
 立花と立ち話、ね……。いや、なんでもない。
「顔を合わせてもこっち向いてくれないし、口も聞いてくれなくて……」
「完全に拗ねてるな……。加えて、辛いことは全部自分一人で抱え込もうとしてる時の姉さんだ。これは中々厳しいぞ……」
 姉さんが完全に覚悟ガンギマリ状態になりかけているらしい。これはあまり宜しくない流れだ。
 さて、どうしたものか。
 
「翼さん、どうすれば機嫌直してくれるんだろう……?」
「三人で一緒に飯でも食いに行ければ、打ち解けやすいと思うんだけど……」
「三人でご飯!!」
 ご飯。その一言に反応して、立花が勢いよく立ち上がる。
 好きな物はご飯、と豪語した彼女だ。食事に喜びを見出すタイプなのは目に見えていた。
 キラキラと輝いているその顔は、間違いなく歳相応の少女のもので。
 彼女の純粋な笑顔には……少しだけ、引き付けられてしまうほどの、眩い輝きが宿っていた。
「人間、誰かと美味い飯を囲めば気は緩むし、満腹になれば気分も丸くなる。飯の力なら、ガッチガチの石頭な姉さんも話を聞いてくれるようになると思うんだけど……」
「いいじゃないですか~それ!ご飯の力は私もよく知ってます!なにより、憧れの翼さんとご飯……想像しただけでもお腹が鳴るよぉ~」
「気持ちは分かるが落ち着け立花。問題なのは、姉さんをどう誘うかだ。弟らしく、可愛く頼めば来てくれそうな気はするが……」
 仕事と任務にピリピリしてる時は、流石の姉さんでも「悪いが後にしてくれ」の一点張りなんだよなぁ。
 それが読めてる上で秘技・弟の特権を無駄打ちするとか恥ずかしくて無理。
 他の方法を考えるとすれば、緒川さんにも根回ししてもらうとか……。
 
「可愛く頼めば……?」
 立花が首を傾げる。可愛らしい……じゃない。やっべ、口に出てた!?
「ん?……あっ、いや、何でも……」
「ほほ~う。翔くん、見かけによらずお姉さん大好きなんだ」
「いっ、いや、そうだが!これは家族愛とか姉弟愛とか、そういったライトな類のものであって!」
「あっはは~、照れちゃって~このこの~」
 立花に肘で軽く小突かれる。距離近いなこの子、どんだけフレンドリーなんだ!?
 あーもうっ!そうだよ、俺は昔っから姉さんっ子だよ!尊敬してるし、綺麗だと思うし、何処に出しても恥ずかしくない自慢の姉だと思ってるよ!
 でも決してシスコン的な好意ではないからな!?
「い、今のは聞かなかったことにしろ、立花ッ!綺麗に忘れるんだ!」
「分かってるって~♪︎」
 やれやれ、思ってたほど緊張する必要なく話せるのはいい事だけど、それはそれとして調子が狂う……。
 
 ……でも、悪い気はしない。むしろこの空気には、心地良ささえ感じる。
 あの日、ただ陰から見ているだけだった立花響という少女がどんな人となりをしているのか、今になってようやく分かった気がする。
 ついでに、あの頃の俺は意外と彼女の事を見ていなかったのだとも実感した。
 こんなにいい子なんだ。あの惨劇さえ無ければ、きっとクラス一番の人気者になったかもしれない……。
 けど、きっとその"もしも"は必要ない。
 だって、彼女は今を生きているのだから。……まったく。負い目だのなんだのと悩んでいた自分がバカらしくなってくるじゃないか。
 
 ∮
 
 仕事の時間までの合間に、本部のシュミレーターで一汗かいてシャワーを浴びる。
 毎日欠かさず行っている鍛錬を終え、喉の渇きを潤そうと休憩スペースに向かうと、何やらいつもより騒がしい。
「む?先客か。この声は……」
 耳を澄ませながら近付くと、声は二人分。私より歳下の男女の声だった。
 
 ……待て。私より歳下で二課に出入り出来る者など限られている。
 一人は立花。そしてもう一人はまさか……?
 足音を忍ばせ近付くと、視線の先には予想通りの、それでいて並んでいる所を見るのは初めてな二人がいた。
「立花と翔、か。一体何を話しているんだ?」
 昨日、弦十郎叔父様に二課への配属を頼みに来るとは聞いていたし、あの二人が中学時代の学友同士だったとも聞いている。
 しかし、笑い合いながら談話する二人を取り巻く雰囲気は、とても楽しげだった。
 久方ぶりの再会に積もる話がある、という考えに至るのが普通の筈だ。
 だが私は、昨日の緒川さんが言っていた一言──「おそらく彼は、響さんの事が好きなんだと思います」──あの一言が気にかかり、こう考えていた。
 もしや、二人で逢い引きの約束でもしているのではないか……と。
 そうだとすれば、私はこの場を去るべき筈だ。
 しかし……姉としては、どうしても気になってしまうのだ。
 弟は……翔は、立花とどのような言葉を交わしているのだろうか……?
 
「食べに行くとして、何にする?店ではなく、鍋パやたこパという手もあるが……」
「ふらわー、って美味しいお好み焼き屋さんの店があるんだけど、どうかな?」
「へぇ、そんなに美味いのか?」
「おばちゃんのお好み焼きは世界一だよ~!行ったことないの?」
「店の名前自体が初耳だ」
「じゃあじゃあ、今度下見って事で食べに行きません?」
 
 ……会話がはっきりと聞き取れる位置まで辿り着いて早々、私は度肝を抜かれた。
 これは……間違いなく逢い引きの相談!
 しかも立花のやつ、誘い方が思った以上に自然かつさり気ないぞ!?
 もう少しド直球で誘う性分だと思っていたのだが、人は見かけによらないな……。
 さて、翔の方は……。
 
「お、いいのか?なら、奢らせてもらおうかな」
「ええ!?い、いいんですか翔さん……そんな恐れ多い……」
「二課に来たばかりの新人、姉さんの後輩なんだ。この程度は、かっこつけさせてくれよ」
「わ~いやったー!ありがとうございます!」
 
 キリッ、としたキメ顔で言いきった!?
 何の臆面もなく支払いを自分で負担する事を宣言する……。翔、昔のお前なら女性に対し、ここまで余裕のある対応が出来ていなかっただろう。
 緒川さんの言う通り、お前も成長しているのだな……。
 
「それで、いつ行くの?早いに越したことはないないと思うんだけど……」
「なら、平日より休日の方が都合もいいだろう?今週の土曜日、昼前でどうだ?」
「OK!じゃあ、その日は空けとくね!集合は……」
 
 トントン拍子で計画が立っている……だと!?
 あの二人、いつの間にここまで親密な関係になっていたんだ……。
 緒川さんからは学友としか聞いていないが……まさか、その頃から既に!?
 いや、それはない。あの頃の翔はどれだけのラブレターを貰っても、開封した後でまとめて処分しつつ無視を決め込むくらい、言い寄ってくる女子にはうんざりしていたのを知っている。
 となれば……まさか、その理由は既に立花がいたからだというわけか!?
 あの二人、一体何処まで進んでいるのか……気になって仕方がない!!
 いや待て、落ち着け風鳴翼。この程度の事で動揺してどうする?
 この身は剣と鍛えた身。この国を守る使命を帯びた防人たる私が、弟の恋愛関係に心を乱されてなんとする!
 しかし翔の相手が立花だと!?昨日の今日で突き放した立花が翔と……。
 この場合、私はどうすればいいんだ……!?
 
 こうして、二人の預かり知らぬ所で会話を盗み聞きし、その関係を勘違いして一人悶々としている姉がいる事を二人は知らない。
 この後翼は、迎えに来た緒川に声をかけられるまで頭を抱えていたという。
 
 

 
後書き
余計な重荷は降ろせるうちに降ろした方がいい。
そうして残ったものこそ、その荷の本来の重さ。持ち続ける重荷は、本来の重さの分だけで充分ですからね。

翼「今回あれだけ仲睦まじく会話してた上に、前回の後書きでもイチャついていたと聞いている。私はどうすればいいんだ!!」
奏「随分とお悩みらしいな?」
翼「奏!?どうして此処へ!?」
奏「それは今置いといて、素直に謝ればいいんじゃないか?」
翼「それはそれで格好付かないし……」
奏「ならお前らしく、堂々といったらどうだ?」
翼「私らしく、堂々と……」
奏「ああ。ちゃんと向き合えば、きっと仲良くなれるはずさ」
翼「ありがとう奏……お陰で少しだけ、楽になったよ」
奏「そりゃあよかった。ところで、あたしの出番まだ?」
翼「ってそっちが本題なの!?」

さーて、次回はようやく話が動きますよ!ご期待下さい! 
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