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戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~

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第1楽章~覚醒の伴装者~
  第8節「胸に宿した誓い」

 
前書き
この回は書くにあたって、ニコニコ大百科の世話になりました。
1話の新聞記事を全文まとめてくれてたのがとてもありがたい……。
さて、ここから独自展開が混ざり始めます。お楽しみに! 

 
「純、俺今日も寄る所あるから」
「今日も?別にいいけど、あんまり遅くならないでよ?」
「分かってるって。そんじゃ、行ってくる!」
 教室を駆け出していく親友を見送る。これで三日連続だ。
 
 事の発端は一昨日。昔のクラスメイトに会えるかもって、出て行った日から翔はこんな感じだ。
 帰ってきた時に話を聞いたら、どうやら会う事が出来たらしい。教室を出た時の何処か暗い顔は何処へやら、楽しげに喋る姿に少しホッとした。
 土曜日の午後には、その元クラスメイトの子と二人でお好み焼き屋さんへ行くつもりらしい。
 僕も一緒にどうか、と誘われたんだけど敢えて断っておいた。
 そのクラスメイトの子、どうやら女の子らしいからね。翔はあまり意識していないらしいけど、それどう考えてもデートじゃん。友人のデートを邪魔するほど、僕は無粋じゃない。
 
 それにね翔、多分君自身は気付いてないと思うんだけど、その子の事を話す時の君、かなりキラキラしてるんだよ?
 君はきっとその子の事が……いや、敢えて何も言うまい。その答えは君自身が見つけて欲しいからね。
 そして、もし君がその気持ちに気付く事が出来た時は、僕は親友として誠心誠意祝福しよう。
 
「待ち人来たる、か……」
 親友に春の兆しを感じながら、何となく窓の下に広がる運動場を見る。
 校内には合唱部の歌声と、吹奏楽部の演奏が響き渡り、オレンジ色の空を彩っていた。
 夕陽に照らされながら、僕はポケットの中から定期入れを取り出し、その中に収められた一枚の写真を取り出す。
「僕の待ち人は未だ来ず……いや。いつか、きっと、必ず……迎えに行くから……」
 歌を聞く度に思い出す、面影の中の()()へと語りかける。
 写真に映っているのはまだ小さかった頃の僕と、一緒に手を繋ぎ眩しいくらいの笑顔をカメラへと向ける銀髪の少女。
 今から7年と8か月前、NGO団体の一員だった両親と共に内戦中の国家へ向かい、行方不明となっていた僕の幼馴染。彼女との思い出の一枚だ。
 2年前の11月に救出され、今年の1月5日未明、成田空港の特別チャーター機で日本に戻ったって聞いていたんだけど、用意された宿舎への移動後、再び行方不明になってしまったと、新聞でも話題になっている。
 果たして彼女は何故、何処へ消えてしまったのか……。
 
「君は今、何処に居るんだい?」
 この日本に居るんだろう?
 また、君に会いたいよ──クリスちゃん……。
 
 ∮
 
 立花との再会から2日ほど。約束の日はいよいよ明日に迫っていた。
 無論、その間何もしていなかったという訳でもなく、俺は放課後になる度に二課本部へと足を運び、立花の戦いを見守っていた。
 姉さんは相変わらず快進撃を続けている。しかし、全てのノイズを自分一人で倒し尽くそうとしているきらいがあるのは問題だ。
 叔父さんも困ってるし、俺の方から一言言おうとしてもここ2日連続で逃げられている。
 緒川さんからは、何やら困ったような顔で「今はそっとしてあげてください」って言われるし……やれやれだ。
 
 一方、立花はというと未だに逃げ腰。迫って来たノイズを迎撃する程度ならできるけど、迫られるとつい逃げ出してしまう。
 何やってんだ、とモニター越しに何回突っ込んだ事か……。元々戦士として鍛錬していた訳でもないから仕方がない、とはいえこれではシンフォギア奏者としてあまりにも頼りない。
 これはもう、叔父さんに修行付けてもらうしかないのでは?
 
 そうやって、これまでの立花の事を振り返りながらエレベーターを降りる。
 コンソールルームに入ると、丁度ブリーフィングが始まるところだった。
「は~い、それじゃあ仲良しブリーフィングを始めるわよ~ん」
 了子さんの明るい声が響く。
 ブリーフィングを取り仕切っているのは基本的に、ムードメーカーの了子さんの役割だ。
「お、今日は翔くんも参加?」
「はい。まだ正式な配属ではありませんが、自分にも立ち聞きする資格くらいはありますからね」
「翔くんやっほ~」
「今日も元気そうだな、立花」
 立花が手を振って挨拶してくれたので、こちらも手を振り返す。
 一瞬、姉さんの方から鋭い視線を感じた気がするけど、気の所為だろうか?
 
「さて、今回集まってもらったのは、この特異災害対策機動部二課を指名して、護送任務が入って来たのが理由だ」
「護送任務?何を運ぶというのです?」
「もっちろん、聖遺物よ」
 姉さんからの疑問に答え、了子さんが操作したモニターに画像が表示される。
 それは、錆びて朽ち果てた矢の鏃のような形をしていた。
「了子さん、これは?」
「今朝、遺跡から出土したばかりの聖遺物、〈生弓矢(イクユミヤ)〉よ」
「イクユミヤ……?」
 立花が首を傾げる。まあ、確かに日本神話に詳しくないとパッと浮かばない名前だろう。
「須佐之男命が所持していたとされている生太刀(イクタチ)生弓矢(イクユミヤ)、そして天詔琴(アメノノリゴト)。出雲の三種の神器と呼ばれている聖遺物の一つだ」
「ほえ~……翔くん詳しいね」
「まあな」
 立花から向けられる尊敬の眼差しが、少し照れくさい。
 しかし、どうやら俺の事は忘れているらしい事が、何だか少し寂しいな……。
 
「他二つの聖遺物、生太刀と天詔琴は発見されなかったのですか?」
 そういえばそうだ。三種の神器なんだから、同じ場所に安置されている可能性は高い。
 姉さんからの疑問に、了子さんは大袈裟に肩を落としながら答える。
「残念ながら。多分、経年劣化で他の2つはダメになっちゃったのかも」
「残ったのは生弓矢だけか……」
「今回の任務は、発掘された生弓矢を研究施設へと輸送する運搬車、それを護衛する事だ。何も無い事を祈りたいが、万が一という事もある」
 確かに、聖遺物の護送となればシンフォギア奏者の出番だ。
 二年前にライブ会場の裏で行われていた、完全聖遺物の起動実験。その際、二課が保有していた第2号聖遺物イチイバルと、実験中だった完全聖遺物が失われた。どさくさに紛れ、何者かに盗まれたと考えるのが妥当だろう。
 聖遺物は世界各国が極秘で研究を重ねている。他国から盗みたい国家だって、幾つ存在することか。
 故に、警戒は厳重でなくてはならない。またしても聖遺物を何者かに奪われるなど、あってはならないのだ。
「任務は明朝。翼と立花、それから……」
 
「俺も行かせてください!」
 叔父さんの言葉を途中で遮り、挙手で意志を示す。
 その俺の顔を真っ直ぐ見て、叔父さんは問いかける。
「遊びじゃないんだぞ?」
「承知の上です。俺も姉さん達と一緒に、人々を守りたいんです!戦えないなら、戦えないなりに出来ることがある筈です!」
「では、今一度聞こう。翔、お前は何故二課への配属にそこまで拘る?」
 知れた事!その理由は変わっていない。
 いや、少しだけ形は変わったと思う。罪滅ぼしとはいえ、自分の命を軽く見てはならない。今ならその実感が、この胸の奥に強く有る!
「今日を生きる誰かの命を、明日へと繋ぐため。そして、誰かを守る為に戦っている人達を支えるため!理由はただ、それだけです!」
「自らの命を懸けてでも、か?」
「命を懸けなければやっていけない仕事ですから、それは当然です。しかし、だからといって死んでもいい、なんて言うほど俺も馬鹿じゃありません!誰かの命を救って、自分も必ず帰って来る。それこそが俺の、常在戦場の決意です!」
 
「その言葉を待っていた!」
 叔父さんは満足そうな顔で俺の肩に手を置いて続けた。俺が待ち焦がれていた言葉を。
「風鳴翔!今日からお前を正式に、我らが特異災害対策機動部二課の実働部へ配属する!」
「ありがとうございます、叔父さん!」
「あと、任務中は司令と呼ぶように」
「はい、司令!」
 夢にまで見た二課への配属。数年越しの祈願の成就に胸が踊る。
 これで俺は、姉さんや立花の戦う姿を見ているだけじゃなくて、二人を支える事ができる!
 
「やったね翔くん!」
「うおおおおおおおっ!?」
 声をかけられ振り返ろうとした瞬間、立花が背中から飛び付いてきた。
 立花的には無邪気なスキンシップのつもりなのだろうが、何か柔らかい感触がッ!?立花のやつ、意外とあるぞ!?
「たっ、立花!あんまり引っ付くな!距離が近い!!」
「そっ、そそそそうだぞ立花!なんのつもりの当てこすりだ!公衆の面前でそのような破廉恥、この私も看過できんぞ!」
「え?あっ!ごめんごめん、ついうっかり……」
 軽く頭を下げつつ、てへっと笑う立花。不覚にも可愛いとか思っちまった。
 この子、危ないくらいに純粋だな……。
「いいか立花!そういう事、他所の男子にはやるんじゃないぞ?あらぬ勘違いを受けるからな」
「うっ、それは確かに困るなぁ……。分かった、気を付ける」
「おい立花、あああ後で些かばかり話が……」
「はいはい、翼ちゃんは少し頭を冷やして来なさ~い」
 何やら真っ赤になりながら騒いでいる姉さんが、了子さんに抑えられている。
 同じ女子として、今の行動については厳しく言っておきたいんだろうか?
 やっぱり姉さん、真面目だな……。
 
 そんな三人を見て、声を潜めて話し合う大人達がいた。
友里(ともさと)さん、もしかして響ちゃんって……」
藤尭(ふじたか)くん。あれは響ちゃんどころか、翔くんの方も割と……」
「俺も気付いたのは今だが、って事はつまり翼のやつ……」
「「今頃気付いたんですか!?」」
「うーん……俺って、そんなに鈍いのか?」
 オペレーターの藤尭と友里に同時に突っ込まれ、弦十郎は頭を掻くのだった。 
 

 
後書き
藤尭「藤尭朔也です」
友里「友里あおいです」
藤尭「僕達、名前出るまで結構かかりましたね」
友里「ここまで名前出すほど喋ってなかったし、仕方ないんじゃない?」
藤尭「僕達の活躍はここからですからね!」
友里「ここから独自展開らしいけど、どうなるのかしらね」
藤尭「タイトル回収、いつになるんでしょうね?」
友里「それは作者のみぞ知る話よ。今突っ込んだら首が飛ぶわよ?」
藤尭「えっ!?」

果たして「伴装者」とは何なのか。この先もお楽しみください!
今日のところはここまで。また明日、お会いしましょう。 
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