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星河の覇皇

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第七十二部第四章 気付きだした者達その一

                 気付きだした者達
 日本の首相である伊東もジャバルについての情報を受け取っていた。それは数少なかったがそれでもだった。
 その数少ない情報からだ、官邸の自身の執務室に小柳を呼んで言った。愛弟子である彼女に対してだ。
「こうした人物こそね」
「注意すべきですね」
「そうよ、個人的な欲望は少ないけれど」
「その分ですね」
「国家に求めるものは大きいわ」
「愛国心が強いのですね」
「個人的なエゴは希少だけれどね」
 それでもというのだ。
「野心は大きいわ」
「国家に対するそれは」
「冨貴を求めていなくて」
「女性等もですね」
「求めていないわ。趣味も質素なものばかりで」
 読書や音楽鑑賞といったものだというのだ、そして水泳と書いてあるそうしたデータを見て言っているのだ。
「食事も美食家ではない、着る服もね」
「凝ってはいなくてですか」
「住居もね」
「裕福な家ですが」
「特に求めてはいないわ」
 贅沢な暮らしはというのだ、居住に関するそれも。
「そうしたタイプこそね」
「最もですね」
「危険なのよ」
「ヒトラーですね」
 小柳もすぐにこの人物を出した。
「カエサルではなく」
「カエサルはカエサルで特別だったわ」
「自身の遊興等にお金を使っていましたが」
「全て借金からだったわ」
 このことでも歴史に名を残している人物である。
「あの英雄はね」
「そうでしたね」
「ある意味において凄いわね」
「自分も贅沢をして」
 当時は高価だった書籍を買い集め女性に贈りものをして公の場で着るトガに凝っていた。それ以上に政治活動の資金も借金で手に入れていたのだ。
「政治もでしたからね」
「普通の神経ではないわね」
「はい、どう考えましても」
「借金を怖れていなかったわ」 
 普通は違う、あくまで普通の人間はだ。
「全くね」
「自身も贅沢をしたうえで」
「そうした人物もいたにしても」
「例外ですね」
「流石にね」
 実際カエサルまで極端な人物は他にはいなかった、借金の額が大きくなり過ぎてカエサルがいないと返せないので借金取りが彼に生きてくれと頼む位になったというから驚きだ。
「けれどこうした人物か」
「ヒトラーですか」
「極端な野心家はどちらかね」
 そうなるというのだ。
「そしてジャバル主席はね」
「ヒトラーですね」
「質素よ」
 その生活はというのだ。
「個人の欲は希薄よ、けれど」
「野心は大きいですか」
「だからね」
「はい、今では終わらず」
「必ずマウリア主席の座を狙うわ」
 伊東は確信して言い切った。
「間違いなくね、そして」
「さらにですね」
「それで終わりではないわ」
 その野心はというのだ。
「マウリアの主席になり」
「マウリアをですね」
「これまでよりも強大な国にするわ」
 このことを考えているというのだ。 
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