星河の覇皇
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第七十二部第三章 ジャバルという男その十四
「お願いします」
「はい、それでは」
「そちらも用意します」
「晩餐の方も」
「そちらも」
「その時ですが」
晩餐の時のこともだ、サントスは話した。
「ヒンズー教徒ですので」
「牛肉は出さない」
「それは、ですね」
「注意すべきですね」
「くれぐれも」
何があってもというのだ。
「お願いします」
「やはり牛肉はご法度ですね」
「どうしてもそうなりますね」
「ヒンズー教徒ならば」
「そちらの方であるなら」
「私もアウトカースト層のことは知りません」
サントスにしてもというのだ、実は彼女にしても外交官それもマウリアに対するそれに通じている者としての勤務がある。外交官としての手腕を買われ大使にもなっているのだ。
「ですが」
「牛肉についてはですね」
「やはり極力避けるべきですね」
「どうしても」
「そうです、ただフォークとナイフは」
何を使って食べるかという話にもなった。
「いいと思います」
「別にこちらの料理を出してもですね」
「構わないですね」
「こちらがそうしても」
「別に」
「そう思います、流石に手で食べはしないでしょう」
二十世紀の様にというのだ、インドと呼ばれた時代のマウリアはカリーにしても手で食べてその感触も楽しんでいたのだ。
「やはり」
「そうですね、流石に」
「アウトカースト層でもです」
「食器の差別はないでしょう」
「幾ら何でも」
「ですから」
だからだというのだ。
「お出しします」
「その様にされますね」
「フォークやナイフ、スプーンも」
「用意しますね」
「失礼の無い様に」
このことは釘を差した。
「必ず」
「マウリアでは差別されている」
「そうした立場の方でもですね」
「政府の代表としての礼を以て対する」
「そうされますか」
「そうです、そして重要なことは」
それはというと。
「下に見ないこと、マウリアの階級は関係ありません」
「あくまで一国の代表ですか」
「そうして対しますか」
「アウトカーストがマウリアでどういったものかは構わず」
「その様にされますか」
「マウリア主席に出すレベルのメニューと」
大使館で出す最高級のものをというのだ。
「食器は銀を」
「やはり最高級の」
「それとされますか」
「そうです、杯はダイアで」
やはり最高級のものだった。
「ワインも然りです」
「最高級のワインですね」
「マウリア主席の為のものを」
「出すべきですね」
「そうです、出してです」
そしてというのだ。
「礼を以て対しましょう」
「マウリアではです」
ここで大使館員、若い通訳の者が言った。
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