| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

星河の覇皇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七十二部第三章 ジャバルという男その十二

「やはり」
「はい、被差別階級の蜂起もです」
「歴史ではあるな」
「革命とも言いますか」
「そう言うと素晴らしいことに聞こえるかも知れないが」
「しかしです」
「革命の実は違う」
 領事はこのことも看破して言った。
「革命は多くの血を伴う」
「急激な社会変革は」
 しかもそれが武力を伴うとだ、現にドラクロワの代表作である自由の女神では蜂起する民衆の足元に死体がある。
「そうなります」
「人類はそれを学んだ」
 これまでの歴史でだ。
「清教徒革命でもフランス革命でもな」
「多くの血が流れました」
 フランス革命では百万単位で死んでいる、ギロチンだけでなく町単位での粛清もあった。フーシェは軍を率いてある街の人口の一割を粛清するとして実行した。その一割の者の中に革命に反する者が幾らいたかは不明だ。街を破壊したうえでギロチンでは間に合わないと見ると受刑者自身に墓穴を掘らせ大砲で吹き飛ばした。このあまりにも冷酷なやり方にさしものロベスピエールも警戒したが彼を殺すことは彼を以てしても出来なかった。そして後にナポレオンもタレーランと共に欺き失脚させている。
「そうなりましたし」
「革命はだ」
「犠牲はつきものといいますが」
「犠牲になる者としてはたまったものではない」
「全くです」
「だからだ、革命はだ」
 領事は連合の考えで述べた。
「行うものではない」
「その為の選挙です」
「政府によるな」
「そうです、秩序ある政権交代による社会変革です」
「そうあるべきだ」
「しかしアウトカースト層の政府がこのままあると」
 そしてマウリア社会の影に隠れているとだ。
「何時かはです」
「革命もだな」
「起こそうとしていたかも知れません」
「クリシュナータ主席は危惧されたのでしょうか」
「この危険をだな」
「やはり」
「そうかも知れないな」
 領事もその可能性を否定しなかった。
「やはり」
「左様ですね」
「そうなれば元も子もない」
「マウリアという国自体が」
「名前はそのままでもだ」
「全く違う国家になりますね」
「カーストが崩壊する」
 ヒンズー教の最大の根幹の一つであるそれがというのだ。
「そうなってしまう」
「だからですね」
「手を打ったのかも知れない」
「彼等を社会に戻し」
「叛乱も防ぐ」
「マウリアの国家としての秩序の維持ですね」
「それも考えられたのだろうか」
 こう推察するのだった。
「やはり」
「そうだとすればクリシュナータ主席はいつも通りの冴えを発揮されましたね」
「そうだな、以前より鋭利な切れ味の方だったが」
「内政でも外交でも」
「それを発揮されたか」
「そうかも知れないですね」
「しかしそれで一人とてつもない人物の存在が明らかになった」
 その人物こそがだった。
「ジャバル主席か」
「果たしてどうした方か」
「それが問題だ」
 連合中央政府の領事館の一つで話されていた、これは連合だけでなくエウロパでも同じだった、エウロパ外務省は早速だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧