星河の覇皇
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第七十二部第三章 ジャバルという男その四
「敵国であり国交のないあの国の」
「その通りだ」
「そのことが特にですね」
「大きい、だからな」
「是非ですね」
「この国は敵に回したくない」
マウリアはというのだ。
「出来る限りな、大使もそうお考えだ」
「正しいお考えですね」
「全くだ、外相もだしな」
カバリエ、彼女もというのだ。
「お二方のお考えはこのことでは同じだ」
「マウリアは敵に回さない」
「同盟国のままでだ」
「いてもらうのですね」
「是非共な」
「敵ではなく」
「何度も言うが敵は少ないに限る」
領事はまたこの言葉を出した。
「実にな」
「その通りですね」
「連合は敵は必要だ」
「はい、国家統合の為に」
連合という雑多な多種多様な文化、文明、宗教が存在し民族や人種も入り混じっているモザイク国家はというのだ。
「共通の敵が」
「それがエウロパだが」
「それでもですね」
「敵は少ないに限る」
「特定の敵だけに目を向けるべきですね」
「だからだ」
それ故にというのだ。
「マウリアは敵にすべきではない」
「では若しも」
「そうだ、ジャバル主席がこれまで以上に世に出てだ」
「権勢を持つなら」
「それを目指す野心があればな」
その場合はというのだ。
「困難ではあっても」
「マウリアの国家主席に」
表の政府のそれにだ。
「なれるかも知れない」
「では」
「その彼が連合の敵にならない様にする」
「あらゆる手段を使って」
「そうしていこう、もっともだ」
ここでこうも言った領事だった。
「ジャバル主席の資質ならな」
「若くして政府の元首にまでなった」
「運の要素の必要だがそれだけではなれない」
「だからだ」
それでというのだ。
「それだけの資質があるならな」
「連合との関係もですね」
「理解している筈だ」
「では」
「マウリアにとってもだ」
「連合と敵対することはですね」
「いいことはない」
領事はこう看破した。
「何一つとしてな」
「これまで通りバランサーとしてですね」
「ある方が遥かにいい」
「マウリアにとっても」
「だからだ」
「ジャバル主席が権勢を持ったなら」
これまで以上にだ。
「その場合でもだ」
「これまで通りバランサーであり」
「我々を利用しようとしてもな」
「敵対することはですね」
「ない」
「連合との関係、そしてその状況を考えますと」
外交官も言う。
「やはり」
「利用してくることはあってもな」
「敵対することはですね」
「それはない」
こう言うのだった。
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