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星河の覇皇

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第七十二部第二章 アウトカースト政府その三十三

「それでいて自分は酒池肉林でした」
「贅沢三昧のな」
「そのうえでの世界の指導者の一人になろうという野心ですから」
「別格だな」
「特別です」
 悪い意味でそうだというのだ。
「何かがおかしいまでにです」
「例外だな」
「こうした人物もいますが」
「大抵はだな」
「はい、私生活が質素で私人としては批判される謂われはない」
「そうした人物こそがだな」
「危険です」
 そうなるというのだ。
「野心が強いです」
「そこに能力も備われば」
「さらに」
「そうだな、そういえば金日成だが」
 アッチャラーンは再び彼の話をした。
「酒池肉林を楽しんだうえでの野心家だったが」
「それでもですね」
「能力はどうだったか」
「所詮小国の独裁者と言うべきか」
「その程度の器だったな」
「偉大なる首領様と自称していましたが」
 だが、とだ。カバリエも言う。
「その実はです」
「全くの正反対だな」
「はい、国家経済も産業も破壊してしまい」
「深刻な飢餓状態に陥らせたな」
「しかし軍備と自分の贅沢費に国家予算を割いていました」
 何とどちらも国家財政の二割以上を占めていたという、これで国家経済が成り立つかと言うと答えは明白だ。
「問題外です」
「その通りだな」
「サハラにも時折こうした独裁者が出ましたが」
「どの独裁者も消えたな」
「滅んでいきました」
 その国家ごとだ。
「当人は天寿を全うしましても」
「後で国は滅んだ」
「そうなってきています」
「私利私欲ばかりでしかも野心のみ巨大だとか」
「かえってそうした人物はです」
「資質がない」
「そうかも知れません」
 欲を極めることにのみ熱心で他の方面への関心も努力も希薄なせいか、実際に金日成は息子の制肘も軍人としての才能も政治家としての資質もなかった。あったのは政治家というよりはヤクザ者の資質であった。
「所詮は」
「そうだな」
「しかしジャバル主席はです」
「まだよくわかっていないにしてもか」
「少なくとも金日成とは違います」
 そうしたタイプの人間ではないというのだ。
「政治家としての業績を挙げていますし」
「その政策も見事だな」
「尚且つ必ず立法化させています」
 つまり実現させているというのだ。
「一介の議員であった頃から」
「ヒトラーでなくともカエサルか」
「ユリウス=カエサルですね」
 ローマの英雄だ、共和制の政治システムが限界にきていたローマを帝政として生まれ変わる礎を築いた人物だ。彼からローマは広大な範囲を統治出来る国家になった。
「カエサルは質素ではありませんでした」
「金銭を湯水の様に使ったな」
「呆れるばかりの借金をして」
 ローマの十個軍団の兵士を一年間食わせられる程だったとさえ言われている。とかく桁外れの借金王であった。
「女性と遊び公の場で着る服に凝り」
「書籍も買っていたな」
「当時ではかなり高価でしたが」
 それ自体が財産と言えるまでにだ。 
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