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星河の覇皇

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第七十二部第二章 アウトカースト政府その三十二

「生活が質素で個人としては無欲な人物はです」
「野心を持っていればだな」
「その野心は大きいです」
「ヒトラーだな」
「ヒトラーは私人としては質素でした」
 それも非常にだ、酒も煙草も口にしない菜食主義者で趣味は読書と音楽鑑賞であり身の回りの装飾も簡素で服も制服が主だった。しかも女性にも清潔であり個人的な欲望は極めて希薄な人物だったことは事実だ。
「しかしです」
「その野心は大きかった」
「そうした事例もありますので」
「ヒトラーを考えるとな」
「やはりです」
「若しジャバル主席がそうした人物ならば」
 生活が質素で私人としては無欲ならだ。
「警戒が必要です、一概には言えないですが」
「質素な人物程危険か」
「その場合が多いかと」
「ヒトラーは確かにそうだった」
 アッチャラーンもその指摘に頷く、彼のことは実によく知られている。
「個人としては質素だった」
「そうでしたね」
「しかしその野心は極めて大きかった」
「ドイツを欧州の覇者とすることでした」
「自身はそのドイツと結婚した者だった」
 実はこのことは奇怪だと言われている、何故ならヒトラーは元々オーストリア生まれだ。そしてドイツ人は普通はドイツを父なる国と呼んでいた。しかし彼は母なるドイツと結婚した男だと言っていたのである。
「そのドイツをだな」
「欧州随一の大国とする野心に満ちていました」
「ウラル山脈から大西洋までな」
「地中海もおそらく制覇してです」
「ローマ帝国以上の帝国を築こうとしていた」
「流石に世界征服までは考えていなかったでしょうが」
 チャップリンの映画等ではそうなっているが実際は欧州の覇者になるまでしか考えていなかったのではと言われている。
「しかしそれでもです」
「その野心は大きかったな」
「非常に」
「そうだった」
「中には私利私欲に満ちた人物もいましたが」
 ここでカバリエが例えに出す者はというと。
「金日成の様な」
「あの独裁者だな」
「自身の欲を極めたうえで世界の指導者の一人となろうとしていました」
「朝鮮半島を己がものとしたうえで」
「そう考えていました」
「贅沢を極めていた」
 このことは息子の金正日もまた然りだ、人民を飢餓地獄に追いやり己は美酒美食に囲まれて過ごし成人病にさえ悩まされていた、これは主に息子がそうであった。
「己の欲に」
「美酒、美食、美女と」
「そしてそのうえで世界の指導者の一人になろうとしていた」  
 第三世界の会合に積極的に顔を出してだ。
「そこまでの野心もあった」
「野心もとんでもないものでした」
「そうだな、例外的だな」
「そこまでの人物は」
「物欲のみでした」
 金日成はというのだ。
「ヒトラーは国家を立ち直らせドイツへの愛情は本物でした」
「曲がりなりにも」
「しかし金日成はどうだったか」
「己だけだったな」
「個人崇拝を強要してです」
「そのうえでな」
「国家を飢餓状態に陥らせました」
 二十世紀後半においてだ、人類は二十世紀から飢餓からまさに飛躍的に解放されていったが北朝鮮は別であった。むしろ飢餓状態に陥ったのだ。 
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