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星河の覇皇

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第七十二部第二章 アウトカースト政府その二十九

「多くのことが」
「絶対のことがない」
「それが絶対かと」
 何が絶対と言うならだ。
「政治の世界においても」
「だからだな」
「若しもです」
「ジャバル主席にそれだけの資質があるなら」
「マウリアの主席にもです」
「なるか」
「はい、その不可能を可能とします」
 アウトカースト層の国家主席にというのだ。
「この度の人口統計で理論上は可能になりました」
「マウリアの法律ではな」
「人口統計に出てしかもです」
「市民権も与えられた」
「市民権を与えられたので」
 マウリア市民のそれをだ。
「ですから」
「それでだな」
「はい、市民の様々な特権も与えられ」
 そしてその中になのだ。
「選挙権、被選挙権も存在しますので」
「アウトカースト層でもな」
「投票が出来て」
「政治家にもなることが出来て」
「そしてです」
「国家主席にもなれる」
「そうです」
 そうなったというのだ。
「法律上は」
「そうだな、だが」
「はい、普通に考えますと」
「アウトカースト層だからな」
「偏見が強いです」
 被差別者のそれである、歴史上どの国でも被差別階級の者が国家元首に就任した事例は確かに存在する。しかしそこまでに多くの困難が付き纏うものだ。
 だからだ、カバリエも言ったのだ。
「それもかなり複雑です」
「そうだな」
「はい、宗教の戒律でもありますし」
「思想にもな」
「出ていますので」
「穢れ思想か」
 アッチャラーンもこの思想の名前を出した、彼もまたこの思想についての知識を備えているのだ。
「日本の神道にもある」
「アウトカースト層はその穢れを担う職業です」
「だからだな」
「思想的にもです」
 マウリアのそれにおいてもだ。
「差別される」
「そうした立場だな」
「只の差別ではないので」
「余計に厄介だな」
「はい」
 その通りという返事だった。
「他の国の差別、偏見と比較して」
「だからこそ」
「ジャバル主席がかなり優れた人物でも」
「国家主席は難しいな」
「はい、ですが」
「不可能と思っているのは人間であり」
「神仏はそうは定めておられません」 
 そうしたものだというのだ。
「ですから」
「若しかするとだな」
「出来るかも知れません」
「アウトカースト層の国家主席か」
「そしてそれが出来たならな」
「それを果たした資質があるのなら」
「非常に立派なことではありますが」
 差別や偏見を打破した、このことを偉業であるとだ。カバリエも認める。だがこれはあくまで倫理的に見てのことだ。人間の世界は残念ながら倫理が全てではない。それは確かに重要な要素ではあるがそれでもだ。 
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