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星河の覇皇

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第七十二部第二章 アウトカースト政府その十六

「しかしどうしてもね」
「必要な産業ですね」
「君もそう思うね」
「私も利用していますし」 
 独身の男性としてだ、大使館員は大使に答えた。
「時折ですが」
「私もだよ」
「そうしたゲームや漫画も持っています」
「私は写真集や小説だよ」
 お互いの嗜好の話もした。
「そうしたものはどうしても必要で」
「マウリアでも利用していますが」
「それでも結婚となると」
「はい、やはり違います」
「風俗は遊びでありストレス発散だよ」
 こう言い切った。
「しかし結婚となると違う」
「伴侶ですから」
「どうしてもね」
「そこが重要ですね」
「あまりにも価値観が違うと」
「結婚も難しい」
「現実として」
 二人はマウリアにいる連合市民としてこのことを実感していた、それで二人で真剣に話をしているのだ。
「無理だね」
「努力したら可能にしても」
「かなりの努力です」
「それも双方のね」
 相手もまた努力しなくてはならないというのだ。
「非常に難しい問題だよ」
「まさにその通りですね」
「だから現実問題として」
「連合市民はマウリアでは結婚出来ないですね」
「マウリア国民とはね」
「それは非常に困難なことなので」
「どうしてもね、エウロパの外交官を見ても」
 大使はここで顔を顰めさせた、敵国の話だからだ。
「エウロパ人としか結婚していない、とはいっても」
「あそこは純血主義です」 
 大使館員も否定して言う。
「エウロパ人同士でもです」
「階級が影響するね」
「はい、貴族と平民の間での結婚はまずありません」
「あそこはまた別だね」
「そうです、階級社会ですから」
「嫌な純血主義だね」
「そもそも純血主義は科学的に見まして」
 どうかとだ、大使館員は上司に話した。
「間違っています」
「その通りだよ」
「純血主義でいきますと」
「やがて血が濃くなり過ぎてね」
「そうです、駄目になっていきます」
「近親婚になっていってね」
「同じ場所に固まった同じ種はです」
 大使館員は生物学からも話した、この時代の連合で支配的な学説だ。
「血が濃くなり過ぎて」
「そしてね」
「はい、やがては絶えてしまいます」
「同じ木にいるチンパンジーや同じ池の蜻蛉はね」
「その場所だけですと」
「やがていなくなる」
「そうなります」
「一千億いるとしても」
 エウロパの人口だ、尚この時代のエウロパは大きく分けてゲルマン、ラテン、スラブ、そしてケルトの混血となっている。
「平民は平民とだけ、貴族は貴族とだけ」
「そうした婚姻を重ねているので」
「やがてはね」
「血が濃くなります」
「いいことじゃないね」
「はい、どうしても」
「あれはよくないね」
 大使館員も言った。
「やはり」
「はい、ただそれは」
「マウリアでもだね」
 あえてだ、大使は彼等が今いる国の名前を出した。
「結婚相手は決まっているから」
「同じカースト同士でないと」
「まず難しいね」
「カーストの違いは大きいです」 
 どうしてもだ、マウリアにおいてはやはりカーストの存在が大きい。どのカーストで生まれたかで人生が決まる程だ。 
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