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星河の覇皇

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第七十二部第二章 アウトカースト政府その十七

「ですからカーストを越えた結婚はです」
「難しく」
「やはり血もです」
「濃くなるね」
「そうなりますが」
「何か違うね」
「マウリアについては」
「幅が広いせいかな」 
 大使は考える声で述べた。
「この国については」
「そうかも知れないですね」
「何かとわからない国だね」
「そうですね」
「理屈を越えたことが多い」
 連合から見たマウリアだ、とかく謎と矛盾そして混沌が混在している国であり人間の無意識であるとさえ言われている。
「そうした国だから」
「カーストで結婚が決まっても」
「それでもね」
「血が濃くなるかというと」
「そうででもないみたいだね」
「エウロパの様に極端に血筋にこだわらないせいでしょうか」
 これは貴族達をさして言っている。
「やはり」
「そうかも知れないですね」
「血筋にこだわると」
「格式を重んじるあまり」
「ハプスブルク家の様に」
 十七世紀から十八世紀のこの家のことである、この時代においてはオーストリア王家として存在している。
「なってしまうからね」
「私もあの家のことを念頭に置いています」
「やっぱりそうだね」
「はい、大使もご存知ですね」
「有名だからね」
 この家のことは連合でも、というのだった。
「何といっても」
「近親婚の弊害のサンプルですから」
「叔父と姪、従兄妹同士の結婚ばかりで」
「それが肖像画にも出ていました」
 大使館員は顔を曇らせて述べた。
「ハプルブルク家の特徴が」
「そうそう、あれはね」
 実際にとだ、大使は応えてその特徴を彼自身が挙げていった。
「面長で鷲鼻、唇が厚くてね」
「特に下顎ですね」
「そうそう出ていたね」
「それも顕著に」
「何とそれが全員だった」
「スペイン系は特に」
 近親婚の弊害がスペインのハプスブルク家に最も多く出ていたと言われている、オーストリアの系列よりもだ。
「そうでして」
「次第に夭折が多くなっていき」
「最後は完全に途絶えました」
「カルロス二世だったね」
「はい」
 大使館員は大使が出したその名前に応えた。
「スペインのハプスブルク家最後の王でしたね」
「あの家の」
「あの人の肖像画は凄い」
「顔は蒼白で金髪の色が弱く」
「目が虚ろだった」
「身体も幼い感じで」
 精神、発育共に極めて異常だったと言われている、やはり下顎が出ていてその口から常に涎を流しまともに喋ることすら困難だったという。
「当然子をなすこともです」
「出来なくて」
「極めて虚弱な体質だったとか」
「あれは近親婚の弊害のね」
「最も極端なものですね」
「決まった家同士の結婚がよくないのか」
 そのハプスブルク家の様にだ。
「エウロパ貴族も然りで」
「マウリアはそうではない」
「カーストの縛りがあろうとも」
「それがいいのでしょうか」
「そういえば昔の村では」
 大使はこうした話もした。 
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