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星河の覇皇

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第七十二部第二章 アウトカースト政府その九

「マウリアの社会からね」
「実際にですね」
「二十世紀に一度は受け入れられたけれど」
「マウリア社会にある偏見故に」
「再び除外されたのよ」
「そういうことですね」
「偏見は時として法律に勝るわ」
 無論良識や理論、科学的根拠といったものにもだ。
「法律さえ変えてしまうわ」
「そうもですね」
「なってしまうわ、これはマウリアだけでなく」
「連合もそうですね」
「排日移民法があったわね」
 二十世紀前半にアメリカで成立した法律だ、日系人を代表としてアジア系の移民を排除した当時のアメリカ人の感情の一部が出た法律だ。
「あれもそうね」
「偏見故に生まれた法律ですね」
「唾棄すべき悪法よ」
 カバリエはあえてこう言った。
「私達から見ればね」
「アメリカでもそう教えられていますね」
「当然よ、けれどね」
「当時のアメリカではですね」
「その偏見が幅を利かせていたわ」
「そして成立した法案でしたね」
「そうよ、マウリア以外にも生じるもので」
 そしてというのだ。
「我々も注意すべきものよ」
「偏見については」
「それを抑える、そしてね」
「消す、ですね」
「偏見が愚かな感情から生じるなら」
 それならばというのだ。
「その感情を正していくべきよ」
「それがいいのですね」
「そうよ」 
 まさにというのだ。
「私達もね」
「難しい問題ですね」
「差別、偏見はね」
「我が連合にもあるのですから」
「連合は人種、宗教、民族の偏見は克服したわ」
 互いに雑多と言われるまでに混血混在してだ、それは解消した。だがそれでも差別は存在していてだ。
「けれどそれは連合の中だけのことで」
「外にはですね」
「そうではなかったわ」
「サハラからの難民は」
 スタッフは彼等のことを話した。
「ムスリムですが」
「連合にも多くのムスリムがいるわね」
「私もそうですが」
「差別されないわね」
「はい、全く」
 連合の中のムスリムはだ。
「連合市民として」
「差別されないわね」
「はい、しかし」
「同じムスリムでもね」
「国が違いますと」
「差別されるわね」
「不思議なことに」
 ムスリムである彼から見てもだ、そのことはだ。
「そうなっていますね」
「国が違うと」
「ですから」
 それでというのだ。
「やはりです」
「連合にも差別はあるわね」
「否定出来ないですね」
「しかもムスリムがムスリムを差別する」 
 連合のムスリムがサハラのムスリムをだ。
「ムスリムは同じである筈だけれど」
「人は皆アッラーの前に等しいです」
「その筈ね」
「はい、ですが」 
 それでもというのだ。 
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