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星河の覇皇

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第七十二部第二章 アウトカースト政府その六

「しかしです」
「マウリアは違うわね」
「言語は同じですが」
 公用語のヒンズー語にだ、ただしマウリアも多民族国家であり使用されている言語も実に多岐に渡っている。
「しかしです」
「貨幣等はね」
「違います、まだ貨幣はすぐに統一出来ますが」
「他のことではね」
「そうもいかないので」
 そうした部分が多いからだ。
「複雑な事情はです」
「存在していて」
「二十年ですね」
「それだけの歳月が必要になるかと」
 マウリアの表と裏のそれはというのだ。
「どうしても」
「そして二つの政府を統合しても」
 カバリエはここでこうも言った。
「まだ問題があるわ」
「統合について」
「それは戒律でありね」
「カーストですか」
「ヒンズー教のカーストは我々から見れば悪だけれど」
 階級だからである、連合は大衆国家であり国是として階級を否定している。だからエウロパの貴族制度も批判しているのだ。
「けれどね」
「それでもですね」
「社会秩序でもあるから」
「職業分化ですね」
「それもあるから」
 だからだというのだ。
「一概に悪とは言えないわ」
「必要なものですね」
「社会秩序の為にはね」
「どうしてもですね」
「必要なものでもあるから」
「カースト制の問題は」
「二十年ではなくならないわ」
 そもそも何千年も存在しているのだ、二十世紀には否定されたが宇宙の時代になって数百年経てまた強くなったのだ。
「おいそれとはね、そして戒律以上に」
「さらにですか」
「心よ」
 人間のそれだというのだ。
「それについてはね」
「戒律以上にですか」
「厄介よ、人はどうしてもね」
 その深い人間関からだ、カバリエは述べた。
「偏見があるわ」
「それですか」
「これは制度やそうしたものよりもね」
「強いものですね」
「宗教、民族、文明の違い」
「そうしたものから」
「人は偏見を生んできたわ」
 人種差別も然りだ、肌や髪の毛の違いといった実に些細なことから深刻な差別問題が長年に渡って存在していた。この時代でも連合はエウロパを白人だけの純血社会だと否定し馬鹿にしていることもその亜流であろう。
「マウリアも然りよ」
「カースト以前に」
「偏見があるわ」
 これの存在がというのだ。
「この場合は穢れ思想ね」
「穢れですか」
「知っているわね」
「日本の神道にもありますね」
「そう、あれよ」
 まさにとだ、カバリエは答えた。
「同じものよ」
「汚物や死体を扱うとですね」
「それが穢れになるのよ」
 排泄物の処理業や屠殺業等がこれに入るというのだ。
「特に日本では死の穢れがあるわね」
「死のですね」
「伊邪那岐命は妻の伊邪那美命に会いに冥界に行ったわ」
 古事記、日本書紀等の神話にある。世界各地の神話に存在している冥界巡りの逸話である。それのことだ。 
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