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ある晴れた日に

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659部分:炎は燃えてその三


炎は燃えてその三

「けれどね。そういう人が目立つのは確かだよ」
「そういうことか」
「目立つんだな」
「酷い人間は目立つよ」
 そしてこうも言うのであった。
「どうしてもね」
「あれだよね」
 桐生も彼の言葉に応えた。そのまま高級住宅街を歩きながら。
「白い中に黒いものがあると、だよね」
「うん、そうだよ」
 まさにその通りだと桐生の問いに答えた竹山だった。
「結局のところはそういうことなんだ」
「そうなんだ。やっぱりね」
「じゃああいつはか」
「その白い中の黒か」
 野茂と坂上はそう捉えたのだった。
「つまりはそうだよな」
「それも真っ黒みたいだな」
「そうなるね」
 そして竹山も二人に対してその通りだと述べたのだった。
「結果としてね。殆どの弁護士の人は真面目なんだよ」
「そうだろうね。それはね」
「真面目で善良なんだよ」
 桐生に応えて言葉を加えたのだった。
「けれどああした人間も確かにいるんだ」
「そういうことかよ」
「結局は」
「残念なことだけれど」
 今度は野茂と坂上に応える形で述べた言葉だった。
「そうなるんだ」
「一部を見て全部を判断するなか」
「それもあるんだな」
「うん、そうだよ」
 また二人に答えた彼だった。
「それはわかっておいてね」
「ああ、肝に命じておくぜ」
「それじゃあな」
 こうして二人はその探知機を持ってさりげなく事務所の駐車場の前に来た。そうしてそこにこれまたさりげなく探知機を置いた。それから前に去っていく。
 桐生と竹山はそれを見てである。そのうえで言い合った。
「まずはこれでいいんだよね」
「うん」
 竹山は桐生の問いに頷いた。二人は角から野茂と坂上の行動を見ていた。
「充分だよ」
「じゃあ後は」
「帰ろう」
 こう言う竹山だった。
「二人には携帯で連絡してね」
「事務所の前は通らないんだね」
「通ったらばれるよ」
 だから駄目だというのである。
「だからね。あくまでさりげなくね」
「帰るんだね」
「失敗したらそれまでだよ」
 そしてこんなことも言うのだった。
「その時はね」
「それでいいんだね」
 桐生は彼があまりにも思い切りよく言ったのでついつい問い返した。
「そうやって」
「いいよ。そうしたらまた別の方法を考えるから」
「それでなんだ」
「とにかく今は帰ろう」
 とりあえず今はこう彼に言うのであった。
「いいね、それで」
「わかったよ。それじゃあ」
 桐生は彼のその言葉に頷いてから野茂と坂上に対して連絡をした。こうしてこの日の作戦は終わった。その次の日のことであった。
 学校に着いた竹山はすぐに集まっている皆にまた紙を見せたのである。そこにはまたしても住所が書かれているのであった。
「ここだよ」
「何だ?マンションかよ」
 野本がその住所を見てまず言った。
「一軒家かと思ったら違うんだな」
「それでも高級マンションだね」
 竹山は少し拍子抜けした声を出した従兄弟に対して述べた。
「ここはね」
「高級なのかよ」
「所謂セレブとかがいる場所だよ」
 まさにそうした場所だというのである。
 
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