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ある晴れた日に

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658部分:炎は燃えてその二


炎は燃えてその二

「だからね」
「ああ、じゃあな」
「やってやるぜ」
 こうして二人が探知機を置くことの担当になった。次の日の放課後竹山、桐生と共に吉見の父の事務所に向かうことになったのであった。 
 電車の中でだ。まずはヒソヒソと話をする彼等だった。
「それであいつの事務所は」
「どんな形になってるんだ?」
「あっ、悪いけれどそこまでは」
 竹山は二人のその話にバツの悪い顔になった。
「知らないんだ」
「じゃあ御前も見るのはじめてかよ」
「写真でも見てないのかよ」
「悪いけれどね」
 申し訳なさそうに述べる彼だった。
「そこまではね」
「ちぇっ、仕方ねえな」
「まあいいか」
 しかし二人はあまり突っ込まなかった。
「住所がわかっただけでも凄いからな」
「そうだよな」
「それでいいんだ」
「だから住所がわかっただろ?それで充分過ぎるよ」
「大きい手懸かりだからな」
 だからそれでいいというのだった。
「とりあえず。後は俺達の仕事だからな」
「やらせてもらうぜ」
「そうだね。くれぐれも慎重にね」
 桐生は二人に横から話した。今彼等は向かい合って座る四人の席に座っていた。野茂と坂上、桐生と竹山がそれぞれ横になって二組に分かれている。
「ばれたらそれで終わりだからな」
「警察とかか」
「そういうのだって思われたら」
「うん。とにかくとんでもない奴なのは間違いないから」
 それはもうよくわかっている話であった。
「だからね。余計にね」
「ああ、わかってるさ」
「それはな」
 二人も真剣な顔で桐生に返す。
「それじゃあな」
「着いたぜ」
 電車が停まった。そこで二人はまた言った。今停まった駅がその吉見の父の事務所がある最寄の駅というわけである。勝負の場所だった。
 まず二人が先に立ち上がった。そうして竹山と桐生に言ってきた。
「じゃあな」
「行くぜ」
「うん、それじゃあね」
「行こう」
 こう言い合ってだった。彼等は電車を出た。そうして駅のホームを後にするのだった。
 駅を出るとそこは高級住宅街であった。見事な家が立ち並ぶ。
「こんな場所にか」
「事務所があるんだな」
 野茂と坂上はその立派な家々を見回しながら話をしていた。
「どうやら冗談抜きでな」
「あくどい金儲けしてるんだな」
「世の中そんなものだよ」
 その彼等に対して言う竹山だった。
「ほら、正義を言う弁護士がね」
「ああ」
「どうしてるんだ?」
「千代田区のど真ん中に個人事務所を置いてるけれどね」
 この話をするのだった。
「この弁護士なんか謝罪とか賠償とか運動を煽り立ててそれでそこまでなったんだよ」
「千代田区に個人事務所ねえ」
「相当だなそりゃ」
 二人も話を聞いてその弁護士がおおよそどんな存在かわかった。
「何か日本ってそういう弁護士多いんだな」
「これから俺達の行く先のあいつとかね」
「全部が全部そうじゃないけれどね」
 竹山はそれは前置きして断った。
 
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