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八条学園騒動記

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第五百二十五話 博物館へその十

「いたく」
「では若し今連合にいたら」
「偏見はともかくとして」
 人種的なそれは置いておいてとだ、ミンチンは話した。
「画家志望であったので」
「普通に何処かの美術大学に合格して」
 絵自体はよかったという、ただ当時のウィーンの美術大学の派の画風ではなかったので合格しなかっただけらしい。
「それで、です」
「画家になっていましたね」
「美術館の学芸員なり学校の先生なりしつつかも知れませんが」
 それでもというのだ。
「画家になって」
「この学園にもですか」
「足を踏み入れていて」 
 そしてというのだ。
「美術館に入って絵を観ていたかも知れないですね」
「そうかも知れないですか」
「ヒトラーが今連合にいれば」
 そうだったならというのだ。
「画家になっていたかも知れないですね」
「彼の希望のまま」
「そして私達が今日行く博物館にも」
 そこにもというのだ。
「通っているかも知れないですね」
「そうですね、若しかしたら」
「それに今連合にいれば」
 ミンチンはヒトラーのことを考えてこうも言った。
「人種的偏見もです」
「ヒトラーの問題点もですね」
「何しろ最初から最後まで周りに様々な人種がいる国なので」
 連合全体がそうだ、ヒトラーが忌み嫌っていたユダヤ人の国イスラエルも人種的構成はコーカロイドだけではなくモンゴロイドやニグロイドもいて混血している。ユダヤ教を信仰しているからユダヤ人でありイスラエル市民ということなのだ。
「ですから」
「それもなくなっていますか」
「私が思うに」
「では何の問題もなく」
「一人の画家として」
「生きていますか」
「おそらく」
 そうではないかというのだ。
「あのヒトラーも」
「そうなりますか」
「人は環境で形成されるので」
 その人間がというのだ。
「ですから」
「ヒトラーもですか」
「邪悪な環境の下にいなければ」
 これは当時の帝国主義そして白人至上主義の欧州のことである、連合では当時の欧州は邪悪な環境だったとされているのだ。
「邪悪にならなかったでしょう」
「では連合市民として」
「はい」
 それも健全な、というのだ。
「生きているでしょう」
「普通の画家として」
「画家としては普通だったでしょうが」
 歴史に名を残す人物にはならなかったというのだ。
「ですが」
「ああしてですね」
「美大に落ちて」
「そうしてでしたね」
「軍に入り」
 これは徴兵されてだがドイツ軍だった、彼はオーストリア出身であるのだがドイツ軍に入ったのだ。
「それからです」
「軍を出てでしたね」
「政治の世界に入りました」
「そうでしたね」
「若し美大に合格していれば」
「戦争で軍隊に入っても」
「画家になっていたでしょう」
 元々好きなそちらの世界にいただろうというのだ。 
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