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八条学園騒動記

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第五百二十五話 博物館へその十一

「やはり」
「それが、ですね」
「はい、美大に落ちて」
 つまり夢破れてだ。
「そしてです」
「ああなりましたね」
「ドイツ国家社会主義労働者党に入り」
 ミンチンはナチスの正式名称の名前も出した。
「政治家になりました」
「そして政治家としては」
「残念ながら有能で」
 演説の才能だけではなかった、ヒトラーには並のものではない統率力と知力そして政治力があったのだ。何よりもカリスマ性が。
 それでだ、ナチスの中でも頭角を表して。
「ドイツの独裁者になりました」
「そうでしたね」
「恐ろしい人物でした」
「全くです、しかし」
 ここでマリアはヒトラーについてこうも言った。
「ヒトラーは画家志望で芸術センスはありましたね」
「そうですね、絵も上手でしたし」
 残っている絵画は確かに見事なものだ。
「そして音楽もです」
「そちらも好きで」
「ワーグナーが好きで」
 他にはベートーベンも好きだった。
「よく聴いていたそうですね」
「それもカラヤンやフルトヴェングラーが」
「それでフルトヴェングラーを守ったりもしていますね」
 ミンチンはマリアに応えて話した。
「ゲシュタポから」
「ああ、ヒムラーの」
「フルトヴェングラーはドイツにいましたが」
 そしてヒトラーからその音楽の才能を認められて絶賛されていた。
「しかしです」
「それでもでしたか」
「はい、ナチスの思想とはです」
「相いれなかったのですね」
「ユダヤ系の友人も多かったので」
 ブルーノ=ワルター等ユダヤ系の音楽家と親しく付き合ってもいたのだ、それで多くのユダヤ系の者を助けてドイツから逃がしてもいる。
「それで、です」
「ゲシュタポに睨まれていて」
「ヒトラーはそれを知ってです」
 そしてだったのだ。
「フルトヴェングラーを守っていました」
「そうしたこともですね」
「していました、極悪人ですが」
 連合ではあくまでそう言われている。
「しかしです」
「そうした面もあったのですね」
「はい」
 実際にとだ、ミンチンはマリアに答えた。
「そうだったみたいです」
「複雑な人ですね」
「私もそう思います、嫌いですが」
「連合でヒトラーを好きな人はいないですね」
 それも全くだ、悪魔の様に言われ続けている。
「それこそ」
「はい、まことに」
「ですが能力は高くて」
「人を助けることもしています」
「しかも私生活もですね」
「真面目でした」
 ここで話している通りにだ。
「金銭欲もなく」
「蓄財にも興味がなかったのでしたね」
「はい、財産なぞは」
 芸術品の収集は好きであった、この辺りも画家志望だったことが出ていた。
「なく」
「死んでからも」
「とかく生活は質素でした」
「私人としては」
「無害でした、人種的偏見も」
 ヒトラーの問題点もというのだ。 
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