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ある晴れた日に

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582部分:鬼め悪魔めその十八


鬼め悪魔めその十八

「下にも弟が二人いてな」
「男ばかりね」
「そうね」
「上の兄貴二人も結婚してな」
 さらに話す彼だった。
「家で働いてるんだよ。義姉さん達と一緒にな」
「大家族なんだ」
「爺ちゃん婆ちゃんも健在だし親父の兄弟もいてな」
 数がどんどん増えていっている。
「賑やかにやってんだよ」
「ふうん、そういう工場なんだ」
「一族でやってるのね」
「よかったら来いよ」
 微笑んで二人に言うのだった。
「サービスしとくぜ。何でも修理してやるよ」
「今は別にこっちは」
「私の方もね」 
 ところがこうつれなく返す二人だった。
「家の車も自転車も大丈夫だし」
「うちもね」
「何だよ、そうなのかよ」
 それを聞いていささかがっかりした顔になる彼だった。
「なら仕方ないな。また機会があったらな」
「機会作るんじゃないわよ」
 ここでこんなことを冗談で言う明日夢だった。顔が微笑んでいる。
「言っておくけれど」
「機会を作るってか」
「車に細工するとかこっそり傷つけるとか」
 そういうことを言うのだった。
「そんなことしないでよ」
「そりゃ犯罪じゃねえか」 
 速攻で突っ込みを返した彼だった。
「誰がそんなことするかよ」
「だったらいいけれどね」
「何か今のやり取りって」
 そのやり取りを横から聞いている加住が微笑みながら言ってきた。
「面白いわね」
「面白いっていうのかよ」
「ええ。何か」
 その笑顔のまま坪本に言うのだった。
「長い付き合いの友達みたいでね」
「そう言うけれどな」
「違うのよね」
「付き合いは高校からなんだよ」
 それからだというのだった。
「本当にな。それからでな」
「そうだったの」
「意外だったか?」
「意外っていうか当たり前だけれどね」
 それは当然のことだった。
「それにしてもよ」
「まあまだ一年の二学期だけれどな」
 坪本にしろその辺りは自覚があることだった。
「付き合いは深くなってるよな」
「ええ、それはね」
「確かにね」
 その通りだと答える明日夢と恵美だった。
「色々あったしね」
「そうね、本当にね」
 つい未晴のことも思い出してしまったのだった。
「けれどそれでも」
「深い付き合いになってるのは事実ね」
「浮気しないでね」
 ここで笑って彼に言う加住だった。
「絶対にね」
「俺がするって思ってるのかよ」
「念押しよ」
 それだというのであった。
「だからよ。わかったわね」
「言われないでもするかよ」
 これが彼の返事だった。
「何があってもな」
「だったらいいけれど」
「さて、それじゃあな」
 このことに関する話が一段階してからまた言う坪本だった。
「もう一杯な」
「わかったわ」
 恵美が彼の言葉に応える。
「すぐにね」
「頼むな。それじゃあな」
 こうしてまたコーヒーを飲む彼等だった。今は嵐の前の静けさであった。


鬼め悪魔め   完


                2009・11・21
 
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