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ある晴れた日に

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581部分:鬼め悪魔めその十七


鬼め悪魔めその十七

「幸せにするよ」
「幸せに、なのね」
「ああ、そうだよ」
 強い言葉でまた明日夢に言うのだった。
「絶対にな。誰かを幸せにしろってな」
「誰かに言われたの?」
「親父とお袋にずっと言われてんだよ」
 そうだというのであった。
「二人にな」
「ふうん、御両親にね」
「バイクの修理工場やってんだよ」
 それが彼の両親だというのだ。
「自転車も売ってるしそっちの修理もやってるぜ」
「じゃああんたのバイクも」
「それでだったの」
「そうさ」
 恵美も再び話に加わってきたが彼女にも応えるのだった。
「それでなんだよ。バイクをな」
「成程ね。プレスリーとかの影響じゃなかったの」
「カミナリ族とかの」
「おい、古いな」
 ここでは思わず二人に突っ込みを入れてしまった。
「どっちもな」
「まあ気にしないで」
「これはね」
「気になるけれどな。まあいいさ」
 話の本題から逸れるのでこの話はこれまでにするのだった。そうして彼はさらに話すのだった。
「悪いことはしないで誰かを幸せにしろってな」
「いいこと言うわね、御両親」
「そうね」
「だから俺もな」
 また言う彼だった。
「こいつを幸せにするんだよ」
「言ったわね」
「言ったさ」
 不敵な笑みで恵美に返した。
「聞いたな、確かに」
「訂正は効かないわよ」
「するつもりもないさ。それにな」
 そしてさらに言ってみせてきた。
「引いたら駄目な時は引くなってな」
「さっきもそんな話したわね」
「だから引かないさ」
 またしても強い言葉になっていた。
「何があってもな」
「わかったわ」
 その言葉を受けて頷いた恵美だった。
「それじゃあ。まっすぐに行くのね」
「ああ、じゃあ加住な」
「ええ」
 二人はここで向かい合った。そうして微笑み合うのだった。
「絶対に幸せにしてやるからな」
「高校卒業したら楽しみにしてるわ」
「ってことは」
「そうなのね」
 勘のいい明日夢と恵美は今のでわかった。
「結婚するつもりなの」
「高校卒業したら」
「大学に行こうかな、って思ったりもしてるけれどな」
「実は私も」
 こうは言いながらも照れ臭そうに話す二人だった。今度はそんな顔になって話すのだった。
「それでもな。家の仕事も手伝いながらな」
「私も。今坪君のお店でアルバイトに入ってるし」
「結構大きな工場なんだぜ」
 こうした話もするのだった。
「車だって修理してるしな」
「結構忙しいのよ」
「俺実は四男で」
 ここではじめてわかったことであった。
 
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