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ある晴れた日に

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583部分:誰も寝てはならぬその一


誰も寝てはならぬその一

                    誰も寝てはならぬ
 その日奈々瀬はごく普通の一日のはじまりを迎えた。
「おはよう」
「朝御飯できてるわよ」
 キッチンの側にあるテーブルのところに行くともう母親が朝御飯を食べていた。
「それでいいわよね」
「パンなの」
「別にいいでしょ」
 娘にそれを問う母だった。彼女はまだパジャマ姿である。白い木綿のパジャマである。
「それで」
「ええ、別に」
 それでいいと応える奈々瀬だった。まだ目をこすっている。
「じゃあ。頂きます」
「早く食べて学校に行きなさい」
 娘に告げる母だった。
「わかったわね」
「わかってるわ。じゃあ御飯食べて歯を磨いて」
「顔も洗いなさい」
「わかってるわ」
 自分の席に座りながら答えた奈々瀬だった、
「髪もね」
「ちゃんとセットしないと男の子に嫌われるわよ」
「わかってるわよ」
 まだ寝惚けている顔で返すのだった。
「それじゃあね」
「ええ。はい、牛乳」
「有り難う」
 ミルクカップに並々と注がれた牛乳を娘に出すのだった。
「それじゃあ」
「もう学校行く準備してるわよね」
「昨日のうちにね」
 したというのだった。その食パンを食べながら。
「しておいたから」
「じゃあ食べるだけね、後は」
「身支度とね」
 本当にそれだけであった。
「制服も着てね」
「制服そろそろ衣替えよね」
「そうよ」
 パンを牛乳に浸している。そのうえで食べているのだった。
「もうね」
「その時間違えないようにね」
「わかってるわ」
 それもわかっているという娘だった。
「ちゃんとね。それでお母さん」
「どうしたの?今度は」
「お父さんは?」
 やっと起きてきた顔になってきた。
「もう会社行ったの?」
「行ったわよ」
 こう娘の問いに答える母だった。
「もうね」
「そうなの。今日は早いのね」
「早いっていつも通りじゃない」
 何を言ってるの、といった微笑みで娘に返す母だった。
「朝はいつもこの時間にはもう」
「そうだったかしら」
「そうよ。まだ寝惚けてるの?」
「そうかも」
 その自覚はあったりする。
「ちょっとね」
「時間あるから食べたらシャワー浴びなさい」
 すると母はこんなことを言ってきたのだった。
「いいわね、それで目を覚ましなさい」
「別にそこまで寝惚けてないけれど」
「顔見たら凄いわよ」
 しかし母はこう娘に言うのだった。
「かなりね」
「そんなに?」
「そう、そんなによ」
 実際にかなりのものだというのだった。
「わかったらいいわね」
「わかったわ。じゃあシャワーさっと浴びさせてもらうから」
「女の子は身だしなみをしっかりしないと駄目よ」
 そしてこんなことを言うのだった。
 
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