星河の覇皇
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第七十一部第四章 引き継ぎその九
「若いとな」
「はい、あの様にしてです」
「バーでもだな」
「賑やかに飲まれます」
「私もそうだったな」
今は静かに飲みつつ言った。
「若い頃はな」
「そうだったのですか」
「ビールも浴びる様に飲んだ」
家では娘に止められているこの酒をというのだ。
「リットルのジョッキで何杯もな」
「飲まれていましたか」
「そうだった」
かつてはというのだ。
「士官学校時代や尉官だった時はな」
「想像出来ませんが」
「若い頃はそうだったのだ」
彼のというのだ。
「意外か」
「はい、静かに大量に飲まれている印象があるのね」
「今はそうだ、家でもな」
「静かにですか」
「こうして飲んでいる」
多くの酒をというのだ、ここでまた一杯飲んですぐにお代わりが来た。そのマティーニも受け取って飲みはじめた。
「多くな」
「しかしお若い時はですか」
「彼等の様にだ」
「浴びるが如くに」
「賑やかに飲んでいた」
そうだったというのだ。
「若いとそうだな」
「バーでもですね」
「そうして飲む」
「これがエウロパだと違いますね」
「私はパブも好きだ」
この種類の飲み屋もというのだ。
「そちらもな」
「そして楽しまれていますね」
「だがエウロパではバーでは静かに飲む」
「パブで騒がしくですね」
「そして士官はパブでは飲まない」
そこが違うというのだ。
「バーで飲む」
「そして兵隊さんはバーでは飲まない」
「決してな」
「それも騒がしくはですね」
「兵士は軍服だけで断られる」
軍属のそうした場所に入る場合はというのだ。
「まさにな」
「差別ですね」
「階級社会だ」
まさにそのものというのである。
「こうして誰もがどの店では飲めない」
「バーは全て会員制ですか」
「そんなところだ」
「連合にも会員制の店はありますが」
「しかしだな」
「パブは兵隊さん、バーは士官さんとかは」
「ないな」
全く、とだ。オグモも言った。
「それは」
「はい、私達もですね」
「士官だけだとだな」
「財布が心配になります」
笑ってだ、バーテンダーはオグモに答えた。
「お客さんが減って」
「兵士もお金を落とす」
「そうですよ」
「兵士と士官の給与の額にはやはり違いがあるが」
「公務員ですからね」
「然程違わない」
「そうそう」
実は新任の三等兵と新任の少尉の給与の額はそれ程変わらない、公務員の給与は階級よりも任期が影響するのだ。
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