| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

レーヴァティン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百十一話 都からその七

「ここはだ」
「油断せんとやな」
「戦う、伏兵はおらずとも」
 それでもと言うのだった。
「それでもな」
「死兵が来るならな」
「そうだ」
 それならと言うのだった。
「油断出来ん、人間やはり覚悟だ」
「それ次第やな」
「死ぬ気で何かを行うと」
 それが戦でもというのだ。
「恐ろしい力を発揮するものだ」
「そんな奴が多いとな」
「戦いも激しくなる、ならだ」
 今からはじまろうとする戦はというのだ。
「こちらも油断せずだ」
「全力でやな」
「向かってだ」
 そのうえでというのだ。
「倒す」
「そうするな」
「これからな、敵の動きは常に見てな」
 こう言ってだった、英雄は軍勢をさらに進めさせた。そして琵琶湖がそろそろ近くなってきた比叡山を左手に見るところでだった。
 近江の軍勢と対した、敵の数は耕平が言った通りに四万程で。
 魚鱗の陣で騎馬隊を前に今にも突進せんとしていた、しかも鉄砲も弓矢も槍も皆前に出して構えていてだった。
 決死の顔の者が実に多かった、英雄はその彼等を見て言った。
「まさに死兵だ、あの連中に下手に仕掛けてもな」
「そうしてもですね」
「怪我をするのはこちらだ」
 こう紅葉に答えた。
「そうなる、だからだ」
「それでは」
「敵は魚鱗の陣だ」
 今度はこのことを言うのだった。
「それならな」
「間違いなくだ」
「突撃してきますね」
「騎馬隊も前に置いているしな」
 既に抜刀し槍を構えている。
「そうなっているしな」
「では」
「すぐに来る」 
 敵はというのだ。
「積極的にこちらに攻めてな」
「一点突破で、ですね」
「仕掛けてだ」
 そしてというのだ。
「勝つつもりだ」
「乾坤一擲の勝負を仕掛けるつもりですね」
「自分達の劣勢を覆してな」
 そのことを狙ってというのだ。
「そのつもりだ」
「では」
「相手がそう来るならな」
「こちらもですね」
「考えがある、敵が来たならな」
 突撃してきたらというのだ。
「すぐにだ」
「攻撃を仕掛けますね」
「鉄砲だ、術を使う者はだ」
「術を使い」
「それで敵軍を攻める」
「見れば敵の術を使える者は」
 その彼等はというと。
「少ないですね」
「そうだな、しかしな」
「こちらはですね」
「敵より多い、そのこともだ」
「活かして」
「そしてだ」
 そのうえでと言うのだった。
「戦う」
「そうしますね」
「敵が騎馬隊を使うならな」
 それで突進を仕掛けてくるならというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧