星河の覇皇
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第七十一部第二章 ゾロアスター級超巨大戦艦その三十五
それでだ、リバーグは言うのだった。
「エウロパにだけはだ」
「何があっても」
「軍事機密は渡せない」
「そうした情報は」
「マウリアは自分達のものにしてだ」
得た軍事技術をだ。
「さらにエウロパに渡してだ」
「勢力均衡に使う」
「連合とエウロパの」
「そしてバランサーとして利益を得る」
「そういうことまで考えていますね」
「あの国は我々の今以上の拡大も望んではいない」
連合、彼等のだ。勿論この中には連合軍も入っている。
「だからだ」
「そうしてきますね」
「では警戒していきましょう」
「オムダーマン、ティムールの観戦武官も来ていますが」
「彼等よりも」
「そうしていこう、しかしこの艦に乗艦している武官はな」
「はい、マガール=ルクシャ大佐は」
彼はというのだ。
「あまりそうは見えませんが」
「そうしたことをしそうには」
「特に見えませんが」
「それでもですね」
「警戒は必要ですね」
「人は外見からは判断出来ない」
生真面目なリバーグらしい言葉だった。
「そうした人物に見えなくともな」
「はい、では」
「警戒していきましょう」
「このまま」
「そうしていきましょう」
こうしたことを話してだ、そしてだった。
この艦に乗っているそのルクシャへの警戒も行われることになった。このルクシャという人物は軍人であるが見事なまでに太り。
頬は餅の様で福々としている、その彼がだ。
今は彼に用意された士官の居住室の一室で従兵のルシャナ=ハーク一等兵に言った。ハークは彼の傍に立って食事を摂っている彼に応えていた。
「この食事だが」
「カリーですね」
「このカリーは私が注文したもので」
「はい、それをです」
「食堂のシェフがわざわざ作ってくれたのか」
「何でも丁度カリーを作る日で」
それでとだ、ハークはルクシャに話した。痩せた長身の若者で実に礼儀正しい物腰だ。マウリアでは士官室係ではなくそれぞれの士官に従兵がつくのだ。
「あちらではカレーといいますが」
「それでか」
「はい、牛肉のカレーだけでなく」
「こうしたチキンカレーもか」
「作っていまして」
「私にはだね」
「はい、大佐がヒンズー教徒なので」
宗教がそちらだからというのだ。
「チキンカレーを持って来てくれました」
「気を使ってくれているな」
「左様ですね」
「君もだな」
「はい、後で」
「食堂でか」
「頂いてきます」
「それではな」
「はい、その間大佐は」
「部屋に出たいが」
ここでだ、ルクシャは。
部屋の扉の方を見てだ、苦笑いを浮かべて言った。
「そうもいかないな」
「昨日から概述の時以外は」
「警護でな」
「衛兵が立っています」
ルクシャの部屋の扉の前にというのだ。
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