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星河の覇皇

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第七十一部第二章 ゾロアスター級超巨大戦艦その二十六

「実に変わった国だ」
「神はアッラーのみ」
「連合にもムスリムは多いですが」
「宗教も神も多くある」
「それが常識となっている国です」
「サハラでは想像を超えていることです」
「全くだ、そしてだ」
 グータルズはさらに言った。
「我々も連合軍にいるが」
「正規軍と共に」
「連合軍に所属していますね」
「一個軍、百個艦隊が」
「一億以上の将兵がいます」
「俺、いや私も感じている」
 グータルズは危うく自身が普段使っている一人称を出しそうになった、だが将官となった今は言葉遣いも配慮しなくてはならない。それでこう言い換えたのだ。
「正規軍から、いや連合全体から見てだ」
「我々は異邦人ですね」
「サハラの人間です」
「連合の人間ではありません」
「そう見られていますね」
「同じムスリムから見てもな」
 連合にいる、だ。連合はムスリムもかなりの数の信者達がいる。インドネシアやマレーシアだけでなく他の国々にも存在している。
「我々は異邦人だ」
「連合の者ではないので」
「ムスリム同士であってもですね」
「我々は異邦人ですね」
「そうした目で見られていますね」
「壁があるな」
 はっきりとそれを感じ取っているのだった。
「どうしてもな」
「軍に入る前から感じていましたが」
「我々にしましても」
「サハラからの難民ですから」
「異邦人であることは確かです」
「連合の者ではないことは間違いありません」
「この国は中では差別は少ない」
 グータルズは言い切った。
「三百以上の国と中央政府はそれぞれ常にいがみ合っているがだ」
「人種、民族、文化、文明、宗教、職業、性別での差別はですね」
「確かに非常に少ないですね」
「そうしたことに関する偏見は希薄です」
「それも非常に」
「連合の中にいればだ」
 それでというのだ。
「連合の市民権が得られる」
「それも平等に」
「そうなりますね」
「連合に生まれ育てば」
「それで」
「そうだ、しかし差別のない社会はない」
 この時代でも同じことだ、人類に偏見という感情が存在する限り差別が消えることはないということであろう。
「だから連合にも差別は存在してだ」
「異邦人は、ですね」
「連合は差別する」
「そうしていますね、実際に」
「我々についても」
「連合市民ではない」
 何といってもこの事実が、というのだ。
「大きい」
「我々は連合市民ではありません」
「難民です」
「サハラからの難民だからこそ」
「差別されますね」
「露骨な差別を受けたことはないが」
 例えばバスに乗るなと言われたりだ、二十世紀後半のアメリカではこの話から公民権運動が起こったことがあった。
「しかしだ」
「はい、それでもです」
「視線は感じます」
「それもはっきりと」
「連合側からの」
「この国の差別はそうしたものだ」
 法律的には然程ではないがというのだ。 
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