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ソードアート・オンライン ー合わさる剣は2つの世界を一つにしてー「ある科学者とある剣士の物語」

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第十話「臥王」

そこには、東洋風の服に身を包んだ四人よりも何か大きく見える気迫を持った40代くらいの髪や髭が伸び放題の無頼漢がいた。
「お、おまえ、臥王!」
「?」
 四人が抜くこともできずにその者は、重装歩兵たちを血祭りにあげた。歩兵たちは防御もできずに全て一太刀で斬られている。なんだろう、ゆっくりだった。でも全員攻撃を躱せない。こんな剣技。見たことない……。ジンは戦慄していた。間違いなくプレイヤースキルだけでいったらSAO最強……!
「ふふ、町の戦闘ではどんな斬撃でも殺すことはできない。しかし首や腕を切り落とされた感覚は残る。痛みではなく恐怖として、な?それが殺気というものだ。なあ!ん?」
「ひ、ひいい!」
 重装歩兵が腰を抜かして、這う這うの体で逃げていく。
「……何者ですか?あなたは」
 剣を収めると殺気が嘘のように引いていく。口元には静かに笑みが残っている。笑みからは、本物の覇気を感じる。そのたたづまいはまるで戦国の鎧武者と実際に遭遇したように全てがは隙はなくぴんと張った緊張感を相手に与える。当の本人は、余裕そのものだ。リラックスしている。
 四人の中で二人だけがこの者にどう斬りかかれるかを模索することができた。
「殺気を収めよ。敵意はない。おまえたちではわしには勝てん」
 二人がびくっと身を引き締める。その手が勝手に剣を握っていたのだ。いうまでもなくジンとキリトだった。二人は剣を話した。
「いい反応だ。攻撃に反応してとっさに剣を取った。が、斬りかかればやられていたな」
「何者だよ、あんた」
「わしは、臥王、一応攻略組だ。今でも最前線では負けなしでな。始まりの町の惨状に見かねて、ここで鍛冶屋と道場をやっとる。
 後ろから、目つき、顔つきの違う十名のものが見えた。いままで臥王の気迫におされて気づかないくらい気配を消していたのだ。
「このものは全員、この始まりの町のものたちだった。わしの高弟だ、やっと最前線に行ける力をつけたが、それぞれこの町でより多くの迷える者を救うためにあえて最前線へ行かないで尽力してくれている」
 十名全てが攻略組のどの奴よりもできるそんな気がした。
「なぜ、あなたの噂が攻略組で聞かない?あんたほどのすさまじい手練れなら名が知れ渡っていてもおかしくないはずだ!」
「わしは、表に出るのが嫌いでな。下手に有名になると闇討ちをするものが現れる。わしは始まりの町でその子供たちのような者を育てている。わしは闇討ちなど恐れんが、子供たちがもし危険にあえば、守れるかわからん。だからずっと裏でやってきた」
「キリトくん、この人を攻略組に呼ぼう、そうすれば今の攻略組の空気がかわるわ」
「アスナといったか、わしが出てくと大変なことになるぞ?」
「なぜです?」
「わしはこのゲームを始めた人物の算段がついとる」
「なっ!?」
「そしてそやつは、システムで自分を守っとるし、勘のいい奴だ。わしはあやつを闇討ちする目算を立てていたが、ただの一度の失敗であやつは取り返しのつかない化け物になってしまう。そうすれば、ゲームクリアは10年は伸びる。そのうちに、プレイヤーの体力が底をついて、肉体的な死を招く。実はわしはリアルでは名の知れた傭兵でな。国防省が察知してわしを送り込んだのだ、だが奴もそれに気づいている。わしではどうにもできん。だからこうして一番悟られない形で動いている」
 四人は、是が非でもそいつが誰なのか聞きたかった。
「すまん、それは聞くな。実はな、カーディナルのシステムには情報感知の技術もあるのじゃ。このソードアートオンラインは、あらゆる情報技術の発展と進歩のために作られた。それだから数億という企業のスポンサーを持っている。それらがそれだけ、仮想空間に期待しているものは大きい。この技術はそれらの技術を15年進めるだろう。ま、それだけいえばわかるだろう?内部に潜入したものが、拘束され動けないでいるのは、特定のワードやスキル、目に見えない内部パラメータを逐一監視されいるからなのだ」
「つまりある特定の人物を特定はしたが手が出せないと?」
「まあ、そういうことだ、それ以上は言えん。システムに感知されるんでな」
 四人は、唾をのみ込んだ。このデスゲーム、以前からおかしいとは思っていた。本当に誰もこれを止めることはできなかったのか、キリトはこのゲームについてかなり前から調べていた。もちろんスポンサーになっている企業のリストにも目を通したことはある。ジンにいたっては開発に参加している。しかしそれ以上の情報は知る権限がなかった。仕事上、守秘義務が発生していたし、システムの根幹はものすごいプロテクトがかけられており、一国の情報機関でも侵入できないほどだ。
 アスナは思っていた。ソードアートオンラインは、ベータテストの時から雑誌では有名だった。自分の親戚には、その関係の人がたくさんいて、そういう人の話を聞くうちにベータテスターの権利を譲ってもらったのだ。
 レイは、震撼していた。それはレイの現実世界とつながっている。今自分は限りなく真実に近いところにいる。それだけの力が自分にあるということを再認識した。あらためて、この仮想空間を見渡してみると、レイの実感は、本物となった。
 突然ユイがキリトの背中から空に手を伸ばした表情が異状だ。まるで苦しんでいる皆の声が聞こえるように。突如怪奇音が聞こえた、あまりのノイズに四人は耳をふさいだ。ユイが気絶した。サーシャさんは、それが聞こえないようで無反応。臥王は、その音は聞こえているようだがどうじない。ほかの十名の同様だ。
 サーシャさんの家に担ぎ込んだ。
 これは何かに似ているそう思った。ノイズというか自分の精神に直接干渉するような。そうだ俺のユニークスキル。いやしかしな。
 ユイは目覚めるとサーシャさんの家にいた。夕食の準備ができてみんなで食べた。
「ジン兄ちゃん、久しぶり」
「ねえ、ジン兄俺に剣を教えて」
「臥王さんは俺たちを子ども扱いするんだ。基本の型しか教えてくれないんだぜ」
「ごめんな、おれ。この臥王さん初対面なんだがなんでおまえらこんなすごい人教えてくれないんだ?」
「ああ、臥王さんは秘密を守れない奴には何も教えてやらないし嘘はすぐばれるから、それに俺らは始まりの町から出たことがないから。ごまんな、内緒にして」
「ジンさんはこの子たちのこと知ってるんですか?」
「ああ、俺たちのギルドは、唯一、始まりの町への本格的な支援をしてるから。そんな俺でも臥王さんのことは初耳なんです。いったいどうやって身を隠してたんですか、ものすごい腕前ならどうやったって噂は広がるのに」
「はは、今わしを見て、感じる印象を答えてくれんか?」
「……全くのちょっとガタイのいいおっさん?」
「わしはいっただろう、上の指令できとると、活動から身元のかく乱まで、おおよそのことはできんと務まらない役目だ」
 なんか言葉を選んでるよな、というのは四人もわかる。殺気さえ全く感じないまるで無防備。
「わたし、お絵かきしたい絵の具かってくれない?」
「ジンさんはとても人気があるんですよ、剣が強いし子供のプレゼントを探してきてくれるし」
「おーい、ユイちゃんこっちこい」
「はい、なんですか」
「この子はユイちゃん、みんななかよくするんだぞ」
「ユイちゃん、おままごとしよう」
「えー鬼ごっこ」
「わたしカルタがいい」
「はい、じゃあ全部しましょう、順番に」
「あっはっは、ユイちゃんはイイコだからすぐに友達できるよ」
「この子は不思議な子じゃのう、なんだか年の割に落ち着いておる。どこで出会ったのじゃ?」
「あ、この子、記憶喪失なんです」
「……」
 ユイは臥王をじっと見る。
「ん?なんかの?」
「おじさん、怖い……!」
「ははは、勘が鋭い。というよりわしの心を察知したようだの、筋がいい。よい剣士になる。どうじゃわしの道場で稽古せんか?」
 ユイの表情には恐怖があった。まるで化け物を見ているみたいに。
「ユイちゃん、大丈夫だよ。この人は確かに怖いかもしれないけど、悪い人じゃないから」
「ママ、この人は悪い人じゃないよ?でも良い人でもないよ……」
「ユイちゃん……」
「臥王さん、あなた人を殺したことは」
 臥王は、わずかに目に鋭さがよみがえる。口元は笑っている。一瞬、キリトとジンだけが殺気を感じた。
「人を殺した、か。いや私はそれ以上のことをした。わしは、この時代では間違いなく大犯罪者さ。ははは」
 サーシャさんを含め、五人は、息をのんだ。ユイにおいては、キリトとアスナの影に隠れた。
 そんなときだった。
 こんこんと扉をノックする音が聞こえた。
そこにはユリエールという女性が立っていた。装備から察するに軍の者だろう。
「ユリエールと申します。お願いがあってきました。シンカーを夫を助けてはくれないでしょうか」
 ユリエールの叫びにただならぬものを感じた俺達は彼女の話を聞くことにした。それは壮絶な話だった。人間は何故、こうも権力を欲しがるのか?
「それでシンカーさんはダンジョンの奥に」
「はい、どうしようもなかった時、四人の凄腕剣士が街に現れたと聞いて」
「キリトさん、いいですよね?」
「キリト君」
「臥王さん、聞いていましたよね。自由に動けないとは思いますが、この状況でも結局あんたは何もしないんですか?」
「すまん、わしにはなんにもできん」
「?キリトさん、この方はただの初心者プレイヤーですよ。武道の経験があるとかで、危篤にも道場をやっているんです」
「え、ユリエールさん、この方を知ってるんですか?」
「知ってるも何も始まりの町では有名です。レベル30前後でこの辺で一番強いエネミーを倒した御仁です。ですが、それでも中層プレイヤーの足元にも及ばないレベルです。ですが彼の存在はキバオウ一派に一つのブレーキをかけています。彼と彼の道場の門下生は町以外のところで自警団的な活躍をして、軍の動きを絶えず牽制してるのです。シンカーは臥王さんをもっと信頼すべきでした。まあ、もう今となってはキリトさんたちにすがるしかありません、シンカーのいるダンジョンは攻略組クラスのレベルに設定されているからです。臥王さんのレベルは30前後、シンカーやキバオウよりもずっと低い」
「臥王さん」
「おっとアスナさん。分かっているね?」
「あ」
 つまり、臥王はパラメータに何らかの細工をしている。ハインディングや潜伏スキル、それらのスキルも並みのプレイヤーよりずっと高いだろうが、それらは改ざんされたデータなのだ。つまり、ここにいる。臥王はそこらへんの20層クラスの中層プレイヤーと何のそん色ない存在なのだ。
「よし行きましょう地下迷宮へ」
「では、臥王さん」
「おお、気を付けて。おまえさんら、最後まであきらめちゃいかん」
「え?」
「いや、まあ、気をつけよ。ではな」
「あ、はい」
 四人は、臥王の反応に何かを感じたがあえて何も聞かなかった。
  
 

 
後書き
ご購読ありがとうございます。
さあさあ、物語も後半のラストスパート。どんどん行きましょう!
それでは!次回、乞うご期待! 
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