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ソードアート・オンライン ー合わさる剣は2つの世界を一つにしてー「ある科学者とある剣士の物語」

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第九話「ユイの姉と兄」

俺たちは21層のキリトさんたちの別荘に向かった。
「うーん、手土産の一つももってくればよかったかな」
「あら、私ちゃんと用意してきたわよ」
「え、ほんと」
「じゃーん、31層の高級店レモンシャワーのビスケット饅頭」
「うお、一箱18万コルもする超高級焼き菓子。こ、このブルジョアめ」
「うふふ、お金はバーンと使うのがコツなのよ」
「よし、ごめんくださーい」
 向こうから出てきたのは小さな女の子だった。
「あれ、ねえ君ここはアスナさんとキリトくんの家だよね」
「ああ、パパとママの友人ですか」
「パパとママ。おいレイ」
「ええ、まさかソードアート・オンラインに子作りシステムがあるなんて」
「なんということだ、き、君の名前は」
「ユイです」
「ユイちゃん、よろしく私はレイ。こっちはジン」
「レイさんにジンさん、よろしくお願いします」
「おーい、ユイ帰ったぞ」
 ちょっと気色の悪い魚を手にしたキリトが帰ってきた。
「あれ、君たちは」
「やあ、キリトくん。元気にしてた?」
「ジンとレイさん」
「アスナさん、しっかりキリトさんの奥さんしているのね」
「へっええまあ」
「子供は末は剣士ですか」
「こ、子供。ユイちゃんのこと?」
「ささ、まずは家に入りましょう。二人の馴れ初め聞かせてもらいます」
 家に入ると二人は魚料理をごちそうしてくれた。
「まさかこの世界に醤油があるなんてねえアスナさん、これ売り出したら大儲けできますよ」
「うふふ。キリトくんと同じこと言ってる」
「ああ、でもだめだな、なレイ」
「ええ」
 ここで二人同時に、
「俺達の分がなくなったら困る!」
「あははは、キリトくんが三人なったわ」
「レイあれだして」
「うん」
 二人の顔が光り輝く!
「お土産です、31層レモンシャワー。一級品ですよ」
「キ、キリトくん」
「あ、ああこれが対人戦最強のギルドマスターの本気恐るべし」
「どうぞたべてください」
「いいんですか」
「焼き菓子なんて食べなかったら。ただのパンくずですよ」
 こうして五人は18万こるを食べつくす。
「なんということ、この美味しさ、ラグー・ラビットに匹敵するわ」
「ユイちゃん、美味しかった」
 ユイちゃんが黙って頬を緩ませている。
「でも不思議ですね、こんな女の子が森の中を」
「記憶が無いんです」
「うーん、私達で良かったら力になります。はじまりの街にいくというのはどうでしょう」
「俺もそれを考えていた」
「あそこには子どもたちがいるんです」
「え、それは」
「はい、サーシャさんという方なんですがはじまりの街の子どもたちに勉強と食事を提供しています。ぼくは彼女の知り合いなんです。なんどか資金を援助していて」
「それはいいな、案内頼めるか?」
「ええ、もちろん!」
「ユイちゃん、僕たちが絶対に助けてみせる」
「ありがとう、お兄さん、お姉さん」
「そうと決まれば出発」
「あ、アスナさん、醤油を少し分けてくださいませんか」
「ええ、喜んで」
 皆、笑った。
「笑った。お兄さんもお姉さんも」
「ユイちゃん、人の笑顔が珍しいかい」
「うん、それだけじゃない、お姉さんとお兄さんからはパパとママと同じ匂いがする」
「そうだなあ、キリトさん、アスナさん、俺とレイをあなたの親友してください」
「親友か、俺は構わないけど」
「長い間ソロでやってきたキリトさん、アスナさん、僕は感激してるんです、お二人はこの世界でちゃんと生きている。僕たちだってそうすることが色んな人の心の支えになると信じていました。仮想世界だろうと一番大事なのは人間性です。21層の人は攻略組ではないですがちゃんと生きているここに来る時ニシダという僕の知り合いに会いました。かれもソードアート・オンラインの制作スタッフでした。彼は、ここで釣りをして暮らしていました。彼は過酷なこのゲームでもちゃんといつもの笑顔で接してくれた。僕は思いました。この人のために僕は戦っているんだと」
「アスナさんキリトさん私達、いつも攻略会議で一緒になった時この二人がいれば大丈夫と思っていました。だってお二人ともほんとに優しい」
「レイさん、ジンさん、私達で良ければ親友にしてください」
「アスナさんありがとう」
「ああ、ジンにレイ。君たちなら大歓迎だ」
「私達はお二人を絶対に守ります親友として」
「俺達も君たち、守ろう親友として」
 四人は固く握手した。
 唯ちゃんが泣いていた。
「ユイちゃんどうしたの」
「嬉しいのママなんだか嬉しいの」
「ユイちゃん」「ユイ」
「ふふ、ユイちゃんはいい子だね。そんなユイちゃんにはもっと泣いてもらいましょう。これからずっと嬉しさでいっぱいにしてあげるからね。人はね、ユイちゃん。いっぱい泣いた方がすっきりするんですよ。そしてその分強くなれるんだよ?」
「そうなの?ほんと?」
「ええ、実のところ。わたし、小さい頃は泣き虫でしたから。実はジンに出会う前はよく泣いてたんですよ?」
「そうなんだ」
「そうです、でもジンが今度は笑い泣きさせてくれるようになって、涙って悪いことばかりじゃないなって気づいたんです」
「じゃあ、ユイ。いっぱい泣く!」
「でもですよ。泣いた後はちゃんと笑わなきゃいけないんです」
「どうして?」
「涙が落ちるとそこから妖精が生まれるんです。妖精はこの世界を元気にしてくれます。そのあとに笑うと妖精は、こんどは涙の持ち主に魔法をかけてくれるんです」
「妖精?どんな魔法」
「この世でどんな願い事も叶えてくれる魔法ですよ、その魔法で私はジンに会ったんですから」
「はは、レイは結構空想屋なんだ。結構ファンタジーの本が好きだからな」
「もう、ジン。話を茶化さない!」
「あはは!面白いよ、お姉ちゃんとお兄ちゃん!
「お姉ちゃん。ってレイの事か?」
 ジンはレイを指さす。
「お兄ちゃん?ってジンの事?」
 レイはジンを指さす。
「はい!ユイのお姉ちゃんとお兄ちゃんです」
 二人はふっと、いつもの優しい顔になった。
「いいよ、ユイちゃん。このお兄ちゃんとお姉ちゃんに任せなさい!」
「うん、ありがとう。お姉ちゃん。お兄ちゃん!」
 そんなレイとジンを微笑ましく見守る二人。
「ありがとう、君たちはどうして今日あったばかりなのにどうしてこんなに」
「親切するのに理由がいりますか、目の前に泣きそうな子がいる、辛そうな顔してる子がいる。困った顔をしてる子がいる。私たちでよかったら助けになる!人間として当たり前のことですよ」
 始まりの街へ行くと。
「キリトさん、アスナさん、剣だけはジェネレイトしてください。最近軍のやつがおかしいんです」
 ソロプレイヤーはほとんどはいくつもの難易度マックスの敵と血道を上げていくつもの死線をさまよわなければ、最前線には到達できない。ゲーム開始後、第一層突破以後多くのプレイヤーがそのことに気づき始めた。初めはパーティだとパーティ全員の意見を尊重しなくてはいけないので一番遅れているものに合わせるのがどこのパーティでもセオリーだった。
そしてそれについていけないプレイヤーはソロでしか行動できなくなるわけだが、迷宮区に入るともはやそれはただの強がり、最初のボス攻略もできない状態からパーティでの戦いが基本になっていた。それを事実上確定したのがスイッチと呼ばれる手法だ。一人が攻撃を受け、一人ががら空きのエネミーに攻撃を入れる、それを交互にやることによってこちらのダメージを最小限にして相手を確実に大量に倒せるようになった。そしていちどソロプレイヤーになるともはやそのプレイヤーを仲間に入れるのはよほど実力がないとあり得ない。気心の知れた仲間の連携の方が確かなのだ。そうやってこの一番最初の段階で行き遅れた、プレイヤーは当然レベルが上がらない次の段階に進めず始まりの町で堂々巡りの毎日を過ごすことになる。コミュニケーションの取れない引きこもりプレイヤーや人間恐怖症のものなどはそこで自殺を考えるか、始まりの町の無料の宿に半永久的にとどまって引きこもる。ともかく第一層から二十二層くらいまではずっとそんな差別があった。けど最前線の攻略組にようやく余裕が出てくるとそれは違ってきた。それは最初は個人レベルだったが、始まりの町から中層階級の剣士に、余裕のあるプレイヤーが支援を始めたのだ、対エネミーの対処法、ステータス割り振り、最前線プレイヤーの常識とされる攻略法。情報というものが一番手軽で効果的な支援でそれがぽつりぽつりと始まった。そして攻略組の空気が変わった。攻略組もプレイヤーの絶対数を増やした方が安全であるという判断から中層階級への本格的な支援を始めたのだ。
 しかし依然として始まりの町周辺は何も変わらなかった。というのは意識レベルもそしてプレイヤーのレベルも低すぎるからだ。もはや支援の対象外だった。ここでは力とそれを使う意志のないものは強制的に排除される。それがSAOの現実だった。そんな時現れた人物がいる。
「た、たすけてー!」
「!子供の声、あいつら!」
「いこう、みんな」
 三人の子供が軍の奴らに追い込まれている。子供の保護者のような人が今にも剣を抜こうが迷っている。相手は軍だ。歯向かえばただでは済まない。ジンはその人を知っている。子供の託児所のようなものをやっているサーシャさんだ。
「サーシャさん、どういうことです」
「ああ、ジンさん、それにレイさん、軍の徴収です」
 軍の一人が言い放った。
「何言ってる国民には納税の義務があるんだ。当たり前の事だろうが!それを徴収だとまるで我々が不当に税を徴収してるようじゃないか」
「ふうん、納税の義務ねえ、それじゃあんたらは国民になにをしてやってるんだよ」
「そりゃ、安全に暮らせるように軍が管理してやってるんだ」
「管理社会か、国民は犬や猫じゃないんだ。自由意志がある。人権もな。まあ、口で言って分からなければ剣で分からせるしかないな」
「どいて、私がやる」
「アスナさん」
 レイピアを抜いたアスナさんの剣先は見えない。ノックバックが発生する。
「街での戦闘は負傷しない、だが恐怖を植え付ける」
 大の大人が逃げていく様は胸がすっとした。
「ありがとうございます」
 サーシャさんは礼儀正しく一礼した。
 しかし、どこからともなく重装歩兵が集まってきた。
「おまえたち、攻略組だな、へへでも四人だけじゃなあ、俺たちはキバオウの親衛隊だ、レベルも攻略組とそん色ないぜ」
 四人が剣を構える。
「いや、おまえたちは勘違いしている。その四人は、おまえたちでは倒せんよ」
 四人以外の声だった。
 そこには、東洋風の服に身を包んだ四人よりも何か大きく見える気迫を持った40代くらいの髪や髭が伸び放題の無頼漢がいた。
「お、おまえ、臥王!」
「?」
 四人が抜くこともできずにその者は、重装歩兵たちを血祭りにあげた。歩兵たちは防御もできずに全て一太刀で斬られている。なんだろう、ゆっくりだった。でも全員攻撃を躱せない。こんな剣技。見たことない……。ジンは戦慄していた。間違いなくプレイヤースキルだけでいったらSAO最強……! 
 

 
後書き
続々、更新予定!さあ、新たな可能性を!今!
ご購読ありがとうございます!
さあさあ、話はクライマックスに差し掛かってきました!!!
ジンとレイの二人の剣閃が描く物語に乞うご期待! 
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