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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica37-B大隊壊奏曲~Hunting~

†††Sideルシリオン†††

まさかのフィヨルツェンの手による拉致で、俺とアイリは最後の大隊の本拠地へと連れて来られた。その時にはすでに俺は魔術師化していたこともあって、一発で気付かれるんじゃないかと焦ったが・・・。

(何の反応も起こさずに拉致した・・・。気付かれなかったのか、もしくは気付いていながら連れて来たか・・・)

前者だったら嬉しい話だが、後者だった場合は俺が罠に嵌められたかも知れないという話になってくる。俺を待ち構えているのはなんだ。ここに来てフィヨルツェンが、“エグリゴリ”が真っ向勝負ではなく搦め手で攻めてくるのか。

(そうでないことを祈るしかない)

その事はまた後で考えよう。今の俺はここ本拠地で、八神家の恩人であるミミルと、その使い魔であるフラメルとルルス、教会シスターのトルーデも、大隊側であることを知った。さらに言えば、ヴィヴィオを拉致しようとしていた理由も判明。

(まさか、聖王のゆりかごを造り直すなど誰が予想できるか・・・!)

「う、うわああ!」

「エルフテが・・・!」

「なんてことだ・・・!」

幻術特化の融合騎というエルフテを、殺さない程度に感電させて機能不全にすると、白衣姿の技術者たちが慌てだす。連中からは魔力を感じないことから魔導師ではないはずだ。なら次は、局や騎士団をあざ笑うかのような転移スキルを持つシスター・トルーデをターゲットにする。ヴィヴィオの魔力光と技と魔法で、ヴィヴィオの変装とは気付かせないようにすれば、下手に俺を攻撃することは出来ないはずだ。

「っく! ヴィヴィオさん、今すぐ戦闘体勢を解除しなさい!」

「悪い人に言われても聞けません!」

「ロード・トルーデ!」

トルーデの後ろ髪――ドリル巻き毛の中に包まっていた融合騎が飛び出す。トルーデとお揃いのドリル巻き毛を二房揺らし、シールドを展開した。トルーデは戦闘力の低い治癒魔法専門のシスターのはずだが、このフィアツェーンという融合騎はサポートとして戦闘特化かもしれない。

「レストリクトロック!」

魔術としてのバインドを発動して、トルーデとフィアツェーンを拘束する。これで完全に身動きを封じた。魔術によるバインドは、バインドブレイクのような魔法では破壊できない。転移スキルを発動したとしても、必ず人が自ら歪みの中に入るという工程を踏まなければいけないようだし、あの場から動けないようにするだけで十分だろう。

「ソニック!」

――ソニックシューター・アサルト――

応援を呼ぶためか機材に触れようとした技術者がいたから、魔力弾で機材を粉砕してやる。その際の爆発で技術者が吹っ飛び、意識を失ったのが全員がぐったりとした。

「さて次は・・・(俺のエインヘリヤルを解除して、シャル達に、俺が無事に本拠地に潜入したことを教えないと)」

シャル達は今、大隊の主力と交戦中だという。そういう状況に陥った際、俺が潜入できるまでは時間を稼いでくれ、と伝えていた。そしてそれまでの間は、一緒に居る俺が偽者だと気付かれないように、とも。上手くいっているかどうかは、ここからだと判らないが・・・。

(信じているぞ、みんな)

“エインヘリヤル”の解除を行えば、シャル達も自分たちの思い通りの動きを取れるはずだ。解除を行いつつ、残る戦力をチラッと見る。ウサギの耳を揺らしたフラメルとルルスは、フラメルとルルスは共にAAA+ランクだったはず。魔術師化しているとは言え戦いたくはないな。

『アイリ、サポートよろしく!』

『ヤヴォール!』

「あーそうだ! シスター・トルーデ、それにフィアツェーン? ちょっとごめんなさい!」

――メタスターゼン・トーア――

一種の転移魔法を発動。“闇の書”事件と称される一件の際、魔導犯罪者からリンカーコアを引き抜くために創り出した術式だ。トルーデの胸に左手を突っ込み、リンカーコアを手中に収める。

「っあ・・・!?」

「ロード・トルーデ!?」

――女神の救済(コード・イドゥン)――

リンカーコアを体外に出さずにそのままの状態で魔力を吸収してやる。その時に痛みがあるからかトルーデが「うああああ!」悲鳴を上げるが、それに構わずギリギリまで魔力を吸収・・・完了だ。意識を失ったトルーデはぐったりとし、フィアツェーンは「ロード・トルーデ!」と叫ぶように何度も名前を呼ぶ。

――深淵へ誘いたる微睡の水霧(ラフェルニオン)――

そんな彼女の顔の周りに、対象を強制的に眠らせる霧を発生させて眠らせ、トルーデの巻き毛に収め直してやる。

(さすがに融合騎から魔力は奪えないよな・・・)

『マイスター! 使い魔姉妹が!』

アイリからの警告。ここまで傍観してくれていたフラメルとルルスが、白衣を脱ぎ捨てて突っ込んで来た。魔術師化を解いての迎撃をするべきだろうが、また魔術師化するのも魔力炉(システム)に負担が掛かる。避けるべきだ。

「なら!」

防御特化で攻撃は魔力付加無しで行うしかない。防御魔力を全身に纏う「パンツァーガイスト」を発動。これで魔力・物理両方の攻撃や捕縛系は完全に無効化できる。

「ヴィヴィオ、大人しく投降してください」

「オリジナルのゆりかごと違って、死ぬまで玉座に座らせることはしないって」

「途中で玉座を離れることが出来ますし、自宅にも帰れます」

「そうそう。アルバイト感覚で問題ないって?」

フラメルとルルスが繰り出す高速の拳打を躱しつつ、こちらも拳打や掌底で反撃を行う。幸いなのはこの2人が魔法を使わず、純粋な肉体と格闘能力で攻撃してくるということだ。ヴィヴィオに合わせてくれているのだろうか。

「せいっ!」

ルルスのストレートパンチを躱すと同時に腕を手に取り、フラメル目掛けて背負い投げ。2人は俺を前後で挟む挟撃陣形だった。後ろに投げれば、打撃体勢に入っていたフラメルに直撃させることが出来る。案の定ルルスの尻がフラメルの顔面に直撃して「きゃあ!」「のわ!?」悲鳴を上げながら2人揃って吹っ飛んだ。

「レストリクトロック!」

「しまった!」「やられた!」

床に倒れたままのフラメルとルルスをバインドで地面に縫い付ける。魔術師でない限り自力では破壊できない。残るはミミルのみ。彼女はその豊満な胸を揺らしながら俺の元へと歩み寄ってくる。

「止まってください! 止まらないと撃ちますよ!?」

――ソニックシューター――

周囲に魔力スフィアを6基と展開してもミミルは歩みを止めず、しかし俺ではなく自身の使い魔であるフラメルとルルスへと軌道変更した。何をするのか判らない以上、「あなたも拘束します!」と、レストリクトロックでミミルを拘束した。

「縛られるのは苦手なのよ~」

あの間延びした口調でそう言いながら、バインドで絡まっている右足を前に出した。そんなことすら出来ない状態のはずなのに、さらにブチブチとバインドを引き千切りながら左足も出した。

『マイスター! ひょっとして・・・!』

『ああ、信じられないがそれしか考えられない・・・!』

魔術の効果に抗えるのは神秘を含む魔力、つまり同じ魔術だけだ。信じられなかった。しかし目の前で起きている現実から逃避するわけにはいかない。ミミルは自分に絡み付いているバインドを両手で引き千切り、さらにフラメルとルルスを拘束しているバインドも軽々と引き千切った。

『ステガノグラフィア。施設内のシステム掌握率は?』

『現在96%だよ!~( ̄△ ̄~)(~ ̄△ ̄)~』

『よし。なら俺がこの部屋を出た瞬間にドアを閉じ、ロックを掛けろ』

『了解です!∠(^-^)』

『ついでに監視カメラとAMFも解除しておくよ!((o(>▽<)o))』

『それじゃわたしは、通信や念話の遮断をやる~!o(^^o)(o^^)o』

俺はジリジリと出口へ向かい始める。ミミルが魔術師である以上、ここで闘えばフィヨルツェンとの連戦になりかねない。トルーデから奪った魔力で足りれば問題はないだろうが、そうでなかった場合のリスクが大きすぎる。

「ヴィヴィオちゃんの姿でありながらフラメルとルルスの猛攻を凌いだのは大したものだわ~、ルシリオン君」

「・・・あなたはどこの魔術師か?」

イリュリアの技術を継承した魔術師の一族には心当たりがない。フライハイト家等のような大戦時から続く家柄なのだろうか。俺の問いにミミルはいつもの微笑ではなく、真顔へと変えて「フラメル、ルルス~」を見た。

「はい、マスター」「うん、マスター」

――高貴なる堕天翼(エラトマ・エギエネス)――

「な・・・!?」『うそ・・・!?』

ミミルとフラメルとルルスの背から展開されたのは、後光のように放射状に広がる孔雀の尾羽。ミミルは紅碧、フラメルは紅緋、ルルスは紅藤の魔力光。感じ取れる神秘だが、ミミルはかなりまずいレベル。連戦どころか戦闘すら避けなければ・・・。。フラメルとルルスからも神秘を感じ取れるが、ゼフォンクラスだろうから苦労はしないだろう。

「いや、それより・・・驚いたよ、あなたも・・・お前たちもエグリゴリだったとはな・・・!」

『もしかしてイリュリア戦争の頃には造られていたの?』

「これはアイリちゃんの声ね~。ええ、そうよ~。ミュールやゼフォンの妹にあたるけど~」

『妹・・・アレで・・・』

アイリの視線がミミルの胸に向かったのがなんとなくだが判った。

「私が起動したのは戦争が終わった後よ~。バルデュリス陛下の命の下、戦場には出ることなかったの~。私は戦闘兵器じゃなく、イリュリアやベルカの技術を未来へ残すことを存在意義として過ごすように命令されたのよ~」

終結直後に“エグリゴリ”の技術室へと向かったが、ミミルを見た覚えはない。当時の技術者も技術室が破壊されていたことにショックを受けて呆けていたしな。あの部屋とは別のところで造られていたのか・・・。

「ベルカ崩壊後からはリアンシェルト様と共に行動していて~、管理局設立の1人として技術部を立ち上げたのよ~。フラメルとルルスは、その頃に生み出したの~。私やゼフォン達が第2世代とすれば~、この子たちは第3世代ね~」

ミミルがフラメルとルルスの頭を撫でると、2人は気持ち良さそうに目を細めた。このまま彼女の思い出話に付き合っていていいのだろうか。応援が来るまでの時間を稼がれても困る。だから「あなたは敵か?」そう問い質した。

「敵か~、味方か~」

左右に頭を傾けるミミルから返答を貰う前に、けたたましい警報と共に『緊急事態発生、緊急事態発生!』アナウンスが流れる。

『贄が解放された! 技術室および融合騎エルフテに何かしらの異常が起きた模様! 警邏隊は技術室へ急行し、他戦闘員は贄を確保せよ! 繰り返す――』

「贄とは、本拠地(ここ)に捕まっているアリサ達オリジナルのことか?」

「ええ、そうよ~。今現在ここにはニアSランク、シングルSランク、オーバーSランクのSクラス騎士が何人も居るから~、早く合流した方が良いわよ~?」

グッと拳を握り締め、踵を返して出口へ向かおうとすると、「先ほどの答えだけど~」ミミルが言葉を掛けてきた。俺は足を止め、振り返ることなくその答えとやらを待つ。

「私の真名はパイモン・エグリゴリ~。エグリゴリの味方であって大隊の味方ではないわ~。そして、あなたを殺害せよ、との命令も受けてないし、これからも発令されないから~。ここでお別れよ~」

ドサッと音がして振り返って見ると、ミミル達が床に倒れ伏していた。何をしているのかと思ったが、ミミルが「ほら、早く行きなさいな~」シッシッと手を払ったのを見て、俺にやられたフリをしているのだと判った。

『マイスター、早く!』

「あ、ああ・・・!」

アリサ達が捕らわれていると言う区画は、ステガノグラフィアから送られた映像を見る限りこのスライドドアを潜り、紅葉の葉のようなフロアに7つあるドアの内、右から2番目のドアから入った先にあるらしい。

「ステガノグラフィア! 隔壁やドアのロックを閉じて敵戦力を隔離しろ!」

『『『『『了解!∠(^-^)』』』』』

今潜ったばかりのスライドドアがピピッとロックされた。これで外から応援は入ってこられないだろう。目的地までの廊下を駆ける中、「ヴィヴィオ陛下!?」警邏隊かは判らないが、神父やシスターと鉢合わせ。

「どうしてここに!? 誰だ、お連れしたのは! お連れしたのなら、こちらに連絡くらい寄越せ!」

「いや、そんなことより保護だ、保護!」

「出来るだけ傷付けないようにな!」

「は、はい! ヴィヴィオさん、大人しくしてくださいね?」

にじり寄って来る4人に「ごめんなさい!」大きく頭を下げた俺は、「ジェットステップ!」ダンッと床を蹴って、4人の間を通り抜けつつ・・・

「はっ!」

高速で鳩尾に拳を打ち込む。魔力強化もしていない単純な一撃だが、無防備だった4人にはそれで十分だった。激しく咽ている彼等の合間をテクテク歩て通り過ぎたところで「レストリクトロック」で拘束。やはりヴィヴィオの姿は楽だな。今のように傷付けないように注意してくれる。

『アイリ!』

『ヤヴォール! イドゥン、スタンバイ!』

トルーデと同じように、順番に4人の胸元に左手を突っ込み、リンカーコアを確認。そして「コード・イデゥン」を発動して魔力を吸収。それを体内で合成して、創世結界・“神々の宝庫ブレイザブリク”に収納しておく。

「ふふ」

『どうしたの、マイスター?』

「いや。魔力が取り放題とは嬉しい話じゃないかって」

『あー、そうだね。この際この施設内に居る連中みんなから魔力を貰っちゃおうよ!』

「それも良いかもしれないな。ああ、そうしよう!」

そこからいくつものドアや部屋を通り抜けると、奥の方から派手な爆発音や振動がこちらにまで届いて来た。アイリの『交戦中だね』に頷き返し、音の出所へと走る。廊下の壁がガラス張りになったところで、ガラス壁の向こうへと目をやると、デバイスを起動し防護服姿に変身している「スバル、ティアナ!」が、狐の女仮面持ちと対峙していた。

「それに・・・ティーダ一尉!」

スバルとティアナの2人に肩を借りているのはティーダ・ランスター。様子からして自力で歩行できないようだ。視認できるのは今のところあの3人のみ。アリサやミヤビの姿はない。別行動中かもしれない。

「いくぞ、アイリ!」

『ヤー!』

――アクセルスマッシュ――

魔力付加した右拳をガラス壁に打ち付けて粉砕し、「スバル、ティアナ!」達の元へと飛び降りる。

「えっ!? ヴィヴィオ!? 何でここに!?」

「ていうか呼び捨て・・・」

ヴィヴィオの姿に変身している俺の登場に驚いたのはスバルとティアナだけでなく、「ヴィヴィオ様!?」女仮面持ちもだ。ヴィヴィオを拉致するのは判ってはいたが、この場に居るのが信じられないといった風だ。

「ここは俺が受け持つから、スバル達は先に逃げろ!」

「俺?」

「その口調、まさか・・・ルシルさん!?」

「なに!? ルシリオン・セインテスト・・・!?」

仮面持ちにも俺のことが知られてしまうが、カメラも通信系もこちらが掌握しているから他のメンバーには知られまい。俺自身の声で「ああ。助けに来たぞ!」スバル達にそう伝え、仮面持ちにはこれまで舐めさせられた辛酸を思い返し、皮肉たっぷりに「どうもお招きありがとう!」満面の笑顔でそう言い放ってやった。

「おのれ・・・!」

『アイリも一緒だよ!』

「「アイリ!」」

怒りに肩を震わす仮面持ちを無視しながら俺は「アメナディエル、スバル達に脱出ルートの案内を」と、5基1組のステガノグラフィアの内、長女に当たるアメナディエルを名指ししてそう指示を出す。

『はい! 請け負いました!(≧∇≦)b』

スバル達の側に小さなモニターが展開され、アメナディエルが彼女たちに『ルート案内をしますね!』お辞儀した。それと同時にこの部屋にいくつかあるドアの内の1つが開き、矢印マークを持つアメナディエルが『さあ、こちらです!』スバル達に伝える。

「ルシルさん! アリサさんやアリシアさん達が・・・!」

「マリアンネ教皇たちともバラバラになっちゃって・・・!」

「逃がさない! ズィプツェーン!」

――フリーレンドルヒ・ツヴァイ――

『アイリと同じ魔法!?』

アイリの射撃魔法と同じ形状に、ズィプツェーンという名前。ズィーベン(アイリ)の後継機で間違いないだろうな。ミミル(真名はパイモンらしいが、こちらが馴染みすぎている)製の融合騎はどれだけいるのか。聞いておけば良かったな・・・。

「判った! アリサ達にもステガノグラフィアを送る! 君たちは先に行け!」

――天地に架かれ(コード)汝の明星(ルシフェル)――

スバル達を隔てるように火炎砲8発を横一列に床から発射させて壁とし、仮面持ちから放たれた氷の短剣13発を防がせる。スバル達が潜ったドアが閉じて、ピピッとロックが掛けられたのを確認してから砲撃壁を解除。

「一体誰がヴィヴィオちゃんをあなたと間違えて連れて来たのか・・・!」

「そもそも、誰だろうが失敗していたよ。今朝からお前たちの行動はお粗末だったからな」

「なに・・・?」

「これまでにも監視の目はあった。が、今朝は特に増えていた。何故か。ヴィヴィオ達と俺たちオランジェ・ロドデンドロンが今日と明日、別行動を取るからだ。以前みたく俺やシャル達が姿を消して密かに護衛に付かないか不安だったんだろう? だから監視を増やした」

仮面持ちは無言を貫く。その反応は肯定だと取ろう。

「俺とシャルはそれをチャンスだと思った。あぁ、お前たちは今日ヴィヴィオを拉致するんだな、と判ったからな。だから俺は次元港で、監視の目を騙してやった。お前は知らないだろうが、シャル達と帰った俺は偽者だよ」

「偽者・・・!?」

「俺ははやてと話しながらそれぞれトイレに入った。で、そこで俺は自分の分身エインヘリヤルをトイレから出した。お前たちはそれを俺と認め、後からトイレから出てきた変身魔法で変装していた俺をスルーした。ヴィヴィオ達からは一便遅れて本局に着き、そこからは別の局員やヴィヴィオへと変身して・・・このとおりだ。ザマァ見ろ。偽者に振り回されてきた俺たちが、偽者でお前たち大隊を振り回してやった!」

わざとらしく大笑いしてやったら、仮面持ちが「小賢しい真似を!」怒鳴り声を上げた。そっくりそのまま返したやりたい。お前たちもその小賢しい真似で、アリサ達は汚名を着せられた。その償いはさせる必ず。

「来いよ。お前たちが教会騎士団だろうがなんだろうが関係ない」

変身魔法を解除して本来の俺の姿へと戻る。身長だって見栄を張った180オーバーじゃなく、成長の止まったままの155。だから仮面持ちが「・・・え?」と抜けた声を漏らした。

「これが今の俺の本当の姿だよ。なんだ? 自分より小さくなったから闘いにくいとか言わないだろうな」

『マイスター? ちょっと煽りすぎじゃ・・・?』

「こっちはこっちで鬱憤が溜まっているんだ。まずはこの女に吐き出す」

「ほざけ! 最後の大隊、氷結の騎士ウルと・・・」

『その融合騎ズィプツェーン!』

――パンツァー・クリスタル――

「『参ります!』」

両手と両足に氷の籠手と脚甲を装備したウルと名乗った仮面持ちは、床を滑るように向かって来た。重そうな右腕を振りかぶり、「砕っ!」ストレートで繰り出してきた。俺はグッと身構え、真っ向から「鉄拳制裁!」左拳を繰り出した。互いの拳がぶつかり、ウルの氷の籠手が大きな音を立てて砕け散った。

「なに・・・!?」『そんな!?』

ウルは痛そうに右手を振りつつも間髪入れずに左上段蹴りを繰り出してきた。それに対して払い除けるように右手を振るって、手の甲で脚甲を砕く。

「チェーンバインド」

――フリーレンドルヒ・ツヴァイ――

俺自身の魔力光サファイアブルーに輝く8本の鎖がウルに絡みついたところで、あの氷の短剣が18本と俺の周囲に展開された。ウルは脅しなど言わず「撃て!」と発射を指示した。短剣は俺の全身に刺さろうかと向かって来たが、パンツァーガイストの効果で突き刺さることなく全弾が砕け散った。

「魔導師と魔術師の違いくらいは聞いてないか? 端からお前じゃ俺には勝てなかったんだよ」

――メタスターゼン・トーア――

「うぐっ!?」

ウルの胸元へと左手を突っ込んでリンカーコアを手中に収める。

「どんな理由かは知らないが、友人や同僚に手を出したことを後悔させてやる」

――女神の救済(コード・イドゥン)――

「う゛っ? ず・・・うあああああああああああああ!?」

『ふあああああああああ!?』

ユニゾンしている影響か、ウルだけでなくズィプツェーンからも悲鳴が上がった。魔力を根こそぎ奪ってやると、2人のユニゾンは強制解除され、共にドサッと床に倒れ伏した。まだ意識を保てていられるのかウルがうわ言のように「な、なんで・・・こんな・・・」そう漏らした。

「・・・。ソレウイエル、マカリエル、メナディエルは、オリジナル達の脱出サポートを」

『ウィ!∠(^-^)』

『ヤー!∠(^-^)』

『シン!∠(^-^)』

アリサやスバル達のように、捕らわれていた局員がバラバラになって逃げているかもしれない。脱出ルートを探しているはずだからサポートが必要だろう。で、最後に「ライシエル」の名前を呼ぶ。

「施設内に居る全敵戦力を、順次こちらへ誘導してくれ」

『イエス!∠(^-^)』

フィヨルツェンとの決闘の前に下準備をしておこう。

「ふふ・・・ははは! さあ、コア狩りだ!」

敵性戦力のリンカーコアを狩りに狩ってやる。 
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