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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica35-Bエレミアの手記~She's Memory2~

†††Sideアインハルト†††

リッドの書き残したエレミアの手記を見つけた私たちは、リッドの子孫であるジークさんが読む形で内容を確認している。

「あ、これってオーディンのことちゃうかな。シュトゥラ国内を旅しているところに、銀の髪を靡かせる騎士が妙な集団に襲われているのを見た。遠目からでも判るほどの異常感。これまで感じ取れたことのないほどの魔力量。僕はこれまで人生の中で、人に対して恐怖を覚えたことはなかった。けど彼らは本能的な恐怖を僕に与えた。いや、あれは本当に人間だったんだろうか。この場に留まって気付かれてはいけない。早く立ち去らないと・・・か」

昨日、番長さんが言っていたとおりでした。リッドはオーディンさんの戦闘をじかに見ていたようです。フォルセティさんの方を見ると、彼と目が合いました。

「それだけ強かったってことなんだと思う。ま、僕じゃまだまだ届かない高みだろうけど、お父さんはたぶん、もう届いてると思うよ。そういえばカイラさんも、オーディンを避けてたっぽいけど・・・ヴィルフリッドさんと同じ理由? さっきの闘いの中でも恐れがどうとかって」

「そう。戦闘は見たことないけど、城に遊びに行ったときにチラッと遠くから見た。戦船が・・・ううん、天災が人の形をした怪物だと思った」

クロゼルグの魔女、カイラの記憶を受け継いだ子孫のファビアさんがそう語りました。リッドもカイラも、オーディンさんの強さや雰囲気に恐れていたのだと。クラウスやオリヴィエ殿下は、そんな恐れは抱いていなかったのですが・・・。

「ご先祖様はそういった理由で、オーディンとは距離を取り続けたみたいやね。・・・こっから先はハルにゃんの記憶で見たとおりの流れや」

ペラペラとページを捲るジークさんに、「エレミア、ちょっと早い」とファビアさんが不満を漏らしました。

「あ、ファビアさん。エレミアの手記の閲覧用データを借りる予定ですから、後でゆっくり読みましょう」

「・・・そういうことなら、いい」

ジークさんが手記を読み進めていく中、「あ、こんな話もある」と、とある訓練後のお話をします。クラウスが湯殿へと誘うのですが、熱い湯は好まないとの理由でいつも断っていたリッド。その当時の記憶も思い出しているため、私は目を閉じて回想します。

「クラウスが、ご先祖様のことを男の人やと勘違いしてたって話やね・・・」

「・・・はい?」

何を言われたのかちょっと判らない私に、「ほら、ここや」ジークさんがある一行を指でなぞりました。

「えっと、クラウス王子は、未だに僕のことを男性だと思っているようだ。性別など関係無しに武闘家として接してくれているのかと思っていたけど、ヴィヴィ様が言うには気付いていないとのこと。彼が女の子の顔を全力で殴れるわけないから、らしい。納得だ。・・・ほらな?」

「ほ、本当ですね・・・」

何百年越しの衝撃的な事実に、私は「驚きました」しか言葉に出来なかった。そんな私に「クラウスは鈍かった」とファビアさんが漏らしました。返す言葉もありません。そして手記はイリュリア戦争に差し掛かりました。とはいってもリッドも遊撃隊として参戦してくれたことは知っているので、その辺はスルーで。

「・・・オーディンさんとグラオベン・オルデンの皆さんが戦死したとの知らせを、シュテルンベルク卿より伝わってからおよそ1年。彼らの死がとうとう大陸全土に伝わり、イリュリア戦争以来の戦争が各地で勃発するようになった。僕は彼が恐ろしかった。しかしそんな彼が居てくれたからこそ、シュトゥラは平和だった」

「この辺りからですね。わたし達が知りたい事・・・」

「はい」「うん」

ヴィヴィオさんの言葉に頷くわたしとファビアさん。ジークさんも「よし」と唾を飲んで次のページを捲ります。アウストラシアの聖王家が“ゆりかご”起動の発令から半年は何事もなく過ぎて行きました。

「んと、ヴィヴィ様は自分がゆりかごの王になることを予見するかのようなことを言うようになった。僕はそんなことはありえないと返すことしか出来なかった。僕はヴィヴィ様の優しさと太陽のような温かな笑顔が好きで、彼女の泣き顔や憂い顔がすごく苦手だった。だから僕は、僕の出来ることでヴィヴィ様を支えたい。優しい王女様と情熱的な王子様、それと魔女猫と4人で、いつまでも一緒に過ごしていきたい」

「シュトゥラ南部にある魔女の森が、ゆりかご起動反対の派閥に組する者たちに焼かれてしまった。この一件がきっと、ヴィヴィ様にゆりかご搭乗の決意をさせてしまった。魔女の森襲撃後、ヴィヴィ様は式典への参加と言う名目で一時アウストラシアへ帰還。僕も一緒に戻った。だけどヴィヴィ様にはもう1つの目的があった。ゆりかごとの適合率の検査をすること・・・」

「なかなか王家から適合者が出ない中での高数値の適合率を出したヴィヴィ様を、ゆりかごの聖王と認定する計画の速さは凄まじく、半日と掛からず認定された。シュトゥラで数多くの武勲を立てたことなどを理由に、ヴィヴィ様付きの護衛騎士リサが元老院への反対を申し出て、僕もヴィヴィ様にやめるように何度も願い出た。でもそのたびに優しく説き伏せられて、騎士リサも更迭されてしまった」

「僕がヴィヴィ様にゆりかごに王にならないように言っていることが知られてしまい、シュトゥラへ1日だけ戻れることになったヴィヴィ様への同行が許されなかった。クラウス王子とヴィヴィ様の間に何が起きるかは判らない。けど、あの不器用でまっすぐな王子のことだから、きっとヴィヴィ様を力ずくでも止めようとするだろう」

ジークさん、ヴィヴィオさん、ファビアさん、そして私と順に回し読み、リッドの悲痛な思いを目の当たりにしていく。クラウスがオリヴィエ殿下を止めようと闘いを挑んだことを咎める考えもあったようですが、それをオリヴィエ殿下が懇願して不問にされていたこと、そして・・・。

「ヴィヴィ様は真実を知らない国民たちの歓声の中、ゆりかごへと入っていった。僕がヴィヴィ様の本心を知ったのは、彼女がもう手の届かないところへ行ってしまった後。書き掛けのまま捨てられていた手紙を見つけた。いつもそうだった。辛いこと、苦しいこと、泣きたいこと、そういった僕たちを不安にさせるような心をいつも仕舞い込んでいた」

次のページをジークさんが捲ると、カサッと折り畳まれた2枚の紙がフワリと浮きました。私が手に取り、開いてみる。ソレは「オリヴィエ殿下の手紙・・・!」であることが、最初の一文で判った。

「クラウス、リッド、カイラへ」

書き出しはクラウス達へ送るための手紙と判る名前からでした。始めはクラウス達への感謝が綴られていて、その後は決意の言葉が占められていました。

「私はこのベルカと言う世界が好きです。今は辛く、苦しく、悲しい時代ですが、みんなと一緒に過ごせたこのベルカが大切です。オーディンさんやグラオベン・オルデンの皆様に頂いた平和を無駄にしない為にも、私は私にしか出来ない事をしたい。終わらない戦乱と灰色の雲と、人々の飢えと苦しみが少しでも終わるよう、私はゆりかごの聖王になります」

1枚目は綺麗な状態でしたが、2枚目は一度はくしゃくしゃに丸められたらしく皺だらけでした。

「宝物と言っても過言ではないほどの素敵な日々を、これからも過ごして行きたかった。カイラ。あなたには結局、ちゃんとしたお別れを言えなかった。ごめんなさい。リッドともうちょっと仲良くしてあげてね。それとイタズラもほどほどにね」

「オリヴィエ・・・」

「リッド。武術も学問もいいけど、もう少し女の子らしくしてくださいね。クラウスとカイラとこれからも仲良くしてください」

「・・・」

「クラウス。あなたとは喧嘩別れのような形でお別れをしてしまいました。ごめんなさい。あなたにしか託せなかったのです。戦乱期を終えたベルカに平和をもたらす王の役目を。丸投げをする私は本当にひどいですよね。本当にごめんなさい。クラウス。あなたと出会えて本当に幸せでした。どうか、良き王となってください」

「オリヴィエ殿下・・・」

知らず私は涙していました。ファビアさんも声を押し殺して泣いています。手紙を畳んで手記に挟み直した後、オリヴィエ殿下が“ゆりかご”と共に飛び立った後のリッドが、どうしていたのかを知りました。

「ご先祖様はオリヴィエのゆりかご搭乗から10年以上も軟禁されてたようやね・・・。んで、クラウスはその間に王位を継いで、覇王としての武勇を歴史に刻んで・・・」

「平定間近にかつての敵対国、イリュリアの騎士団長だったグレゴール・ベッケンバウワーによって討たれた・・・」

リッドの書き残した手記はそこで終わりを迎えていました。リッドがその後、アウストラシアから出てどういう風に生きていたのかは判りません。ただ、どうか幸ある人生を歩んでいてほしいと願うばかりです。

「これがリッドがシュトゥラへ戻らなかった理由だったのですね・・・」

「オリヴィエもミアも、そしてクラウスも、カイラ(わたし)を見捨てたわけじゃなかったんだ・・・」

こうしてエレミアの手記を探す冒険は終わりました。それぞれに思うことは多々ありますが、「壊れた書庫や脱がされた服はどうすれば・・・?」という問題が。それに加え、「ウチらの体を元に戻してほしいんやけど」とジークさんが、ファビアさんの肩に手を置いてにっこり。

「あ・・・うん」

体を小さくされているヴィヴィオさんとジークさん、それにヴィクターさんと番長さんが光に包まれ、そして治まるとその体の大きさが元に戻っていました。次の問題は書庫の修復なのですが・・・。

「一件落着みたいやね」

「みんな無事でよかった」

「お母さん!」「フェイトママ!」

このホールの入り口より女性の声が。振り向けばヴィヴィオさんのお母様のお1人であるフェイトさん、フォルセティさんのお母様であるはやてさんが、防護服姿でいらっしゃいました。さらに「あ、私たちの服ですかソレ・・・!」ミカヤさんが、フェイトさんが抱きかかえている私たちの服を指差しました

「うん、そうだよ。でもビックリしたよ、書庫に入ったら服が辺りに浮いていたから」

「フォルセティ。女の子の着替えや、席を外してな」

「あ、うん!」

フォルセティさんがホールの外にある廊下まで移動し、服を剥ぎ取られていた私たちは防護服を解除。フェイトさんから手渡された服へと着替える。そのような中、「さてと。ファビア・クロゼルグ」と、はやてさんがエレミアの手記を読み直している彼女に近寄りました。

「私は海上警備部所属の八神はやてや。んでな、一応、あなたのした事は違法なんよ。窃視に盗聴に、今回の1件も含めてな」

「っ・・・!」

ビクッと肩を跳ねさせたファビアさん。はやてさんは肩を竦めた後、私たちをぐるりと見渡しました。

「残念やけど補導は確定でな。ちょこっと話を聞かせてもらうことになる。で、被害届を出されたら逮捕になるわけやけど・・・」

ファビアさんが「うぅ・・・」萎縮してしまったところで私は「あの! 被害届、出しません!」と挙手した。そんな私に続いてヴィヴィオさん達、ジークさん達も被害届を出さないと言ってくれました。

「そうゆうことみたいや。良かったな、ファビア。そやけど迷惑をかけたみんなには、ごめんなさい、ってちゃんとしておこか?」

「ご、ごめんなさい」

小さく頭を下げた上での謝罪の言葉に、私たちは「はい!」と優しく頷き返した。その後、はやてさんはバックアップデータから書庫内を完璧に修復し、エレミアの手記は元の書棚へと戻し終え、私たちは後腐れなく書庫の出口へ向かいました。

「でもフェイトママが来てくれてるなんて思いもしなかったよ」

「あー、うん。本当なら未整理区画に入る前にお見送りしようって思ってたんだけど、アリシアがちょっと遅れちゃって。今はなのはと一緒に外で待ってるよ」

「なのはママも一緒なんだ!」

「うん。まだ本局に残らないといけないけど、次元港まではお見送り出来るからね」

「うんっ!」

ヴィヴィオさんがフェイトさんと母娘らしい会話をしている中、イクスさんが「はやてさん。ファビアさんはすぐに解放されますか?」と尋ねました。

「うん。もう反省もしてるみたいやし、厳重注意だけで済む予定や」

「そうですか。なら、連絡先を交換しましょう、ファビアさん!」

「連絡先・・・?」

「それはいい考えですわ、イクス」

「じゃあウチも!」

「ジーク。あなたは携帯端末を持ってないでしょ?」

「うあ! そうやった!」

「んじゃあよ、この機会に持てばいいんじゃね?」

「そうだね。いつもフラリと居なくなるからヴィクターも困っていたようだし、私たちとしてもプライベートでもっと仲良くなりたいからね」

「むぅ、そうしよかな~・・・」

キョロキョロと皆さんを見回すファビアさんに、私も「ぜひ」と微笑みかけた。フェイトさんとのお話を終えたヴィヴィオさんも交えて連絡先を交換。インターミドル期間中は、互いにライバルということで無闇に連絡を取り合わないこと、しかしそれ以外は普通にメールや連絡はしましょう、などの約束を交わしました。

「お、戻ってきた!」

「おーい!」

「おかえり、みんな」

「無事で何よりだぞ」

書庫の入り口にまで戻ってくると、ノーヴェさんやアインスさんの他に、ヴィヴィオさんのお母様であるなのはさんと、フェイトさんのお姉さんであるアリシアさんがいらっしゃいました。

「なのはママー!」

「ヴィーヴィオ~♪」

ヴィヴィオさんは満面の笑みを浮かべて、勢いよくなのはさんに抱きつきました。ヴィヴィオさんは、冬期休暇に入ってからというものこうして直接なのはさんとお会い出来ませんでしたから。皆さんでその様子を温かく見守りました。その間に、私たちは書庫内で起きた事件をノーヴェさん達に伝えました。

「へぇ~。魔女術ってなかなか面白いね~」

「アリシアさん、笑い事じゃないっスよ。結果論で万事解決したとは言え、一歩間違えば楽々拉致っスからね」

「ああ、ファビア・クロゼルグが大隊側ではなくてよかったよ」

「・・・ハッ! えっと・・・コホン。では、これにてエレミアの手記探索を終わります! お疲れ様でした!」

なのはさんとの触れ合いを私たちに見られていたことを思い出したのか、少し顔を赤くしたヴィヴィオさん。彼女の発した締めの挨拶に「はーい!」と応えた後は、来た道を戻って転送器に乗り、未整理区画から一般開放区画へと帰還。

「んじゃ、私はファビアを連れてくから、アインスは引き続きヴィヴィオ達の護衛な。なのはちゃん、フェイトちゃん、アリシアちゃんはいま昼休み中やろ? ノーヴェとルールーとリヴィ、それにインターミドルのトップランカーも居るからそう心配はないやろうし、時間になったら戻ってええからな」

「はい、お任せを」

「「「うんっ!」」」

はやてさんがファビアさんの背中に手を添え、「行こうか、ファビア」この場から去ろうとしたので真っ先にヴィヴィオさんが「ファビアさん。また連絡します。そうしたら今度はゆっくりとお話しましょう!」と大きく手を振り、ジークさんも「待っとるからな~!」と手を振りました。

「私ももっとお話をしたいです。ファビアさん」

「・・・うん」

こうしてファビアさんは、はやてさんと共に先に無限書庫を後にしました。そして私たちはと言うと・・・

「今日は本局(こっち)の寄宿舎で泊まるんだからよ。ちょっと本局内を見て回らねぇか?」

「魅力的な提案ですが・・・。本局とは言えあまりで出歩くのは・・・」

ヴィクターさんがヴィヴィオさんをチラリと見たところで、ぐぅ~~、と大きなお腹の音がしました。私たちの目が音の主、ジークさんへと一斉に向く。

「あぅぅ・・・、そんな見んでぇ~・・・」

耳まで赤くしたジークさんは俯き、お腹を両手で押さえました。さらにリオさんとミウラさんとリヴィさんも、くぅ~、とお腹を鳴らしました。

「ウチのより音が可愛ええとか・・・」

「どちらにしても恥ずかしいですよ・・・!」

どういうわけかお腹の音の差にガックリと肩を落とすジークさんとミウラさん。番長さんが「そういや昼飯はまだだったな」と苦笑して、エルスさんも「そうですね。時間的に見てもそろそろかと」と時刻を確認します。

「12時50分か。そろそろ食事というのも良いかもしれないね」

「ですね。お食事しに行きたいんだけどいいかな?」

ノーヴェさんやアインスさん達にそう尋ねたヴィヴィオさんに、アリシアさんが「いいんじゃない?」展開した空間モニターにマップを表示しました。

「何か料理の種類にリクエストとかある? あーでも、ここから4~5分のところに飲食街があるから、店を見て回ってから決める?」

アリシアさんからの提案に私たちは賛成し、どの店で昼食にするかはその店を見てからということに。そのために無限書庫を出る・・・前に、「じゃあその前にエレミアの手記のデータ、借りてくるよ」とフォルセティさんが受付カウンターへと歩き出しました。

「あ、私も一緒に行くよ!」

「ううん、ヴィヴィオはなのはさん達と一緒に居ていいよ♪ 借りるくらいそんなに手間要らないし」

「待って、フォルセティ君。私も行く!」

「うん、じゃあ一緒に行こうか、コロナ!」

コロナさんもフォルセティさんに続いて受付カウンターへと向かいました。ヴィヴィオさんが少しばかり落ち込んでいるように見えます。なのはさんがそんなヴィヴィオさんの頭を優しく撫で、「待つ間、自由時間にしようか」と私たちを見ました。

「で、では少し見て回ってきます!」

エルスさんが真っ先に一般開放区画に並ぶ書棚へ。続いて「では私も」とヴィクターさん、それに番長さんも「んじゃオレも、局員採用試験の本でも探すかな」離れて行きました。ルーテシアさんやリヴィアさん、ミカヤさんも思い思いに近くの書棚へと向かうのを見送っていると、ヴィヴィオさんのデバイスであるうさぎのマスコット・“セイクリッドハート”――“クリス”さんがわたわたと手を振りました。

「どうしたのクリス? メール?」

ヴィヴィオさんがメールを確認しようとしたところ、「誰から?」とアリシアさんが尋ねました。

「え? あ、うん、シャルさんから。エレミアの手記は見つかった~?って♪ クリス、音声入力。手記は無事に見つけることが出来ました。あと、ファビアさんとも和解できました。・・・以上」

わたわたと手足を振るってメールの送信を終えたことを示す“クリス”さんの様子にヴィヴィオさんは頷いた後、「ちょっとお手洗いに行ってきます」ヴィヴィオさんが、お手洗いの案内板を指差しました。

「ついでに私も~♪」

アリシアさんもヴィヴィオさんに続いて、「なら私も」とご一緒することにしました。お手洗いということで“ティオ”と“クリス”さんをなのはさん達へ預けますと、「私も付き合おう」アインスさんが続きました。アインスさんはヴィヴィオさんの護衛ですから。

「なのは、フェイト。フォルセティ達の方を頼む」

「あ、うん!」

「アインスも、ヴィヴィオのことお願いね!」

「ああ、任された」

私とアインスさんはヴィヴィオさんとアリシアさんに追い付き、一般開放区画の奥にあるお手洗いへと向かう。お手洗いへと続く細い通路に入ろうかというところで、「あ」と、アリシアさんとアインスさんが足を止めて敬礼しました。

「あら? アリシア執務官補、アインス補佐」

「「イスズ准将!」」

同じようにお手洗いへ続く通路の入り口で鉢合わせたのは1人の女性。ヴィヴィオさんが「情報部の部長のミュー・イスズ准将です」と耳打ちで教えてくれました。イスズ准将も無限書庫の常連らしく、ヴィヴィオさん達は一般開放区画でよくお話するようです。

「今日はお友達と一緒なのね」

「はい。なのはママとフェイトママやはやてさん、それにインターミドルの上位選手たちと一緒です」

「そうなの~」

「ヴィヴィオ、アインハルト。私は外で待っているから」

アインスさんはお手洗いの入り口で待機するようです。私とヴィヴィオさんとアリシアさん、それにイスズ准将は、用を済ませるためにそれぞれ個室へと入りました。そして下着を下ろして座ろうとしたその瞬間・・・

「・・・っ!?」

嫌な予感というものが私を襲った。そう、去年の文化祭の時の拉致未遂に感じたあれ・・・。

(まさか・・・!)

アインスさんやアリシアさんがいらっしゃるとはいえ、私は直感に従ってドアを蹴破るかのごとく勢いよく開ける。個室から出たと同時、私が入っていた個室を塞ぐように半透明の壁が展開されました。それだけでなく全ての個室の扉と、お手洗いと通路を隔てる入り口にもバリアが張られた。アインスさんが入り口のバリアを壊そうと殴っていました。

「ヴィヴィオさん!? アリシアさん!」

大隊の女性メンバーとしての共通セーラー服を着た女性が、ぐったりしているヴィヴィオさんを抱え上げて、指からプロミスリングを外しているところに遭遇。

「あら? 閉じ込めるのに失敗してしまいましたか。偶然・・・ではないのでしょうね。聖王の危機に、覇王としての直感か本能か、どちらにしろ反応したのですね」

私が閉じ込められる前に個室から出てきたことに驚く女性。私の頭は一瞬で沸騰して、愛機である「ティオ!」と呼び掛けますが、預けていたことを思い出す。

「(ですがティオが居なくても・・・!)武装け――」

「ダメ、アインハルト! 私たちじゃ相手にならない! 下手に歯向かったら殺される・・・! あいつ、エグリゴリの1人なの・・・!」

「えっ! この女性が・・・!」

“エグリゴリ”に銃口を向けているアリシアさんが教えてくれました。オーディンさんやグラオベン・オルデンの皆さんを殺した、あの“エグリゴリ”の1人・・・。それでも「ヴィヴィオさんが!」捕まってしまっている以上、このままではいけない。改めて「武装形態!」と成長した姿に加え防護服へと変身する。

「ヴィヴィオさんを・・・離せ!」

床を蹴って“エグリゴリ”へと向かおうとしましたが、“エグリゴリ”が空いている左手をフッと振るうと、「うぐっ・・・!」強烈な突風が吹き、私とアリシアさんは壁に叩き付けられてしまった。

――トランスファーゲート――

その隙に“エグリゴリ”は、抱きかかえていたヴィヴィオさんと共に空間の歪みの中へと消えて行ってしまった。私はただその光景を見ていることしか出来ず。クラウスがオリヴィエ殿下を止めることが出来なかった、あの記憶が強烈にフラッシュバックする。

「私は・・・私はまた・・・! 助けられなかった!」

「アインハルト・・・」

己の無力さに崩れ落ちたところで、「いいや。これでいいんだ」と、バリアが消失したことで入って来られたアインスさんがそう言いました。そして・・・

「ふんっ!」

「ぅぐ!?」

何故か「アインスさん!?」は、アリシアさんの腹部を思い切り殴り、アリシアさんを気絶させました。ヴィヴィオさんが拉致されたことに加え、アインスさんがアリシアさんを襲ったことで、私の頭の中はもう混乱の極みだった。 
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