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星河の覇皇

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第七十部第二章 同士討ちその三十一

「旧約聖書にあったな」
「旧約聖書ですか」
「敵に割礼を教えた」
 ユダヤ教にある風習だ、イスラム教にも存在している。だがキリスト教にあるかというと何故かこの宗教には定着しなかった。
「そして割礼の痛みで苦しんでいるところにな」
「思い出しました、攻めてでしたね」
「勝った」
 まさにその時にというのだ。
「そうなったからな」
「それと同じですか」
「この話を思いだした」
 今しがたというのだ。
「考えてみればこうした戦い方は古い」
「聖書の時代からある様なことですね」
「損害を出したくないのならだ」
「敵を弱らせる」
「それが一番ですね」
「同士討ちや粛清、衝突をさせてな」
 そのうえでというのだ。
「こうした仕込みもしてな」
「徹底的に弱らせて」
「倒す、そうすればな」
「損害は最低限ですね」
「それで済む、いいことだ」
 まさにというのだ。
「確かに奇麗なやり方ではないが」
「正々堂々と戦っては損害が大きくなりますね」
「損害を出さない為にはだ」
「謀略も必要ですね」
「民主主義国家ではただ作戦を成功するだけでは駄目だ」
 この政治的な意味での鉄則もだ、アラガルは指摘した。
「勝つからにはな」
「損害も最低限ですね」
「そうして成功させねばならない」
「損害が少しでも多いとそれがすぐにですね」
「我々警察への批判になる」
「市民からの」
 趙虎も目を鋭くさせて言う。
「そうなりますね」
「民主政治は厳しい」
「主権者が多いが為に」
「勿論我々も主権者だがな」
 連合市民であるからだ、当然ながら政治家も官僚も市民である。市民権を持っているからこのことはそうなるのだ。
「しかし主権者であってもだ」
「その職務で不備があればですね」
「糾弾が来る、失策と思われればな」
「そこを批判されますね」
「そうなるのが民主政治だ」
 市民のチェックが届きそれが批判となるのだ。
「いいシステムだがそれだけに作戦もそうなる」
「損害は少なくですね」
「あくまで最低限だ」
 その範疇においてというのである。
「そうなる」
「我々も他の組織は批判しますし」
「お互い様だ、軍だけの話なら軍を批判するな」
「我々のことではないので」
「そういうことだ、では損害がない様にな」
「していくべきですね」
「策略も必要になる」
 損害を最低限のものに抑える為にだ。
「これまで批判されるとな」
「反論しますね」
「正々堂々と戦うことは確かに奇麗だ」
 アラガルもこのことは認める。
「だがな」
「それでもですね」
「奇麗ごとだけでやっていけるか」
「世の中は、ですね」
「ところがそうはいかない」
「それが現実ですね」
「奇麗ごとを通すとだ」
「この場合は、ですね」
「損害が増える」
 そうなるというのだ。 
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