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八条学園騒動記

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第五百二話 撮影の後でその三

「男の娘じゃないのね」
「人が外見によらないね」
「こうしたことでもね。じゃあ今度は」
「あまり抵抗ないけれど」
 ジョルジュはジュリアの言わんとしていることを察して答えた。
「けれどね」
「それでもよね」
「うん、してくれって言われない限りは」
「女装しないのね」
「アニメキャラでもね、けれど昔のキリスト教社会だと」
「女装はね」
 まさにとだ、ジュリアはまた答えた。
「それだけでね」
「罪だったよね」
「それで大変なことになってたわよ」
「異端審問だね」
「それで魔女だの言われて」
 そうなってしまってというのだ。
「拷問のフルコースでね」
「あの無茶苦茶なね」
 それだけで死刑にするのかというまでお拷問だった、当時の異端審問のそれは。その拷問を受ければ例え無実でも不具者になるのは確実だった。
「それでだよね」
「最後は火炙りよ」
「生きながらトロトロと焼かれて」
「それで殺されてたわよ」
「冗談じゃないね」
「同性愛みたいな扱いだったそうだから」
「今じゃ同性愛も罪じゃないけれど」
 この時代の連合ではイスラエル以外では同性婚まで認められている。
「それでもだよね」
「そう、あの頃はね」
 まさにというのだ。
「同性愛も罪で」
「その扱いで」
「それでなのよ」
 まさにというのだ。
「火炙りものだったのよ」
「怖い時代だね」
「あの時代おかしかったから」
 キリスト教が腐敗しまた教理も病理が見られた時代だったと言われている。
「だからよ」
「女装だけで火炙りだったんだ」
「シェークスピアの劇はともかくね」
「あの劇最初は女の人出られなかったんだったね」
「逆宝塚だったのよ」
「逆なんだね」
「あの頃の劇はね」
 これも当時のキリスト教の女性蔑視からのことである。
「それで男の子がね」
「女性の役だったんだね」
「ジュリエットもコーデリアもティターニアもね」
「その方が妖しくない?」
「歌舞伎みたいに」
「あれも最初男の子がやってたんだよね」
「女の人のからね」
 出雲の阿国からだ、歌舞伎の起源ははっきりとわかっているのだ。
「そうなったけれどね」
「その男の子の歌舞伎と同じだね」
「若衆歌舞伎ね」
「それとね」
「言われてみればそうね、男の娘になるわね」
「そうした見方も出来るし」
 それでとだ、ジョルジュはジュリアに話した。
「女の子よりもね」
「けれど当時はそうだったのよ」
「そっちの女装はよかったんだね」
「矛盾してる気がするけれどね」
 女装は火炙りで、というのだ。
「そうだったのよ」
「成程ね」
「冷害でね、というか当時の欧州って男の人お鬚生やしてたから」
 シェークスピアの時代ではそうだった。 
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