| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

レーヴァティン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九十一話 商人達の会合その三

「この場でな」
「そうして頂けますか」
「喜んでだ」
 これが英雄の返事だった。
「受けよう」
「そうして頂けますか」
「是非な」
「それでは」
「次の寄り合いからだな」
「出て下さい、場所はです」
 その寄り合いの場所のことも言ってきた。
「上本町の紀州屋さんの隣の」
「楞厳寺だな」
「そちらです」
 その寺でというのだ。
「毎週月曜と木曜に開かれます」
「では次の月曜にか」
「その時からいらして下さい」
「ではな」
 こうしてだった、英雄は商人達の寄り合いに入ることが出来た。だがこれはあくまで最初の段階であり。
 ここでだ、英雄は良太と謙二、香織に言った。
「寄り合いにはだ」
「我々もですか」
「出てですね」
「知恵を出せというとね」
「そうだ、出来ればな」
 当季にも言うのだった。
「御前にも来てもらいたい」
「商いだからじゃのう」
「そうだ、知恵にな」
「商いのことで、ぜよ」
「話をしてだ」
 そうしてというのだ、今は幸正は商売に出ていてここにはいない。
「そのうえでな」
「寄り合いでもじゃな」
「第一に立つ」
 その座にというのだ。
「そしてだ」
「そこでも名声を得るんじゃな」
「町人からのそれは上がってきている」
 それならというのだ。
「次はだ」
「大店からも支持を得てじゃな」
「連中からも推挙を貰う」
「大坂の主への」
「そうする為にだ」
 寄り合いではというのだ。
「だからな」
「わし等にじゃな」
「いてもらう」
 自分と共にというのだ。
「それでいいか」
「はい、では」
「共に行きましょう」
「ここはね」
「ではな」
 英雄も頷いてだ、そうして大坂を取り仕切り商人達の寄り合いに出た。すると即座にだった。香織は言った。
「どうもたい」
「善人もいればだな」
「悪人もいてとよ」
 彼等の目を見ての言葉だ。
「そしてたい」
「出来る奴がいればな」
「駄目なのもいるたい」
「大店を継いでもな」
 幸正も英雄に言う。
「先代程の資質があるか」
「それでだな」
「出来る奴もいるが」
「出来ない奴もいるか」
「そうした奴はすぐに店を傾ける」
 無能つまり商売が下手でだ。
「そしてだ」
「先代がここに出るまでにしてもか」
「自分の代でだ」
「退くか」
「そうなることも多い街だ」
「商いは栄枯盛衰だな」
「あらゆるものがそうでだ」
 万物は流転する、滅せぬものはない。そういうことだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧