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レーヴァティン

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第九十一話 商人達の会合その二

「わかった」
「それは何よりやな」
「これで余計に商売がしやすくなった」
 幸正は微笑んで言った。
「有り難い」
「ものの流れもわかったぜよ」
 当季も言ってきた。
「よかったぜよ」
「ほなこれまで以上にやな」
「しっかり儲けられるぜよ」
「頼むぞ、でかい仕事は」
 幸正は笑って言う陶器に目を向けて言った。
「そちらのことは」
「承知しているぜよ」
「それではな」
「さて、河豚の毒にも誰もあたらんかったしのう」
 当季は笑って先日食べたそれの話もした。
「だから頑張ってぜよ」
「稼ぐぞ」
「そして稼いだ金でじゃ」
「兵も雇ってな」
「武具も兵糧も揃えるぜよ」
 そうしたものもというのだ。
「凄い武器も一杯買ってのう」
「その通りだ、ただ兵を集めるだけでは終わらない」
 英雄もこう言った。
「いい武具に兵糧もあってだ」
「戦えるのう」
「そしてもっと言えばな」
 英雄はさらに言った。
「常に鍛錬を積ませてだ」
「強い兵にじゃな」
「していく」
 そうするというのだ。
「だからな」
「それでじゃな」
「強い兵も備える」
 装備と訓練を両立させている軍をというのだ。
「そうする」
「よし、じゃあこれからもぜよ」
「銭を儲けてもらう」
「わかったぜよ」
 当季は英雄にも頷いた、それも明るい笑顔で。そうして彼等は今はそれぞれの仕事をしていった。その中で。
 彼等の名声はかなり上がり大坂でいい意味で知らぬ者はいなくなった。すると英雄の望みそして読み通りにだった。
 自分を大坂の主にという声も出て来た、そしてさらにだった。
 ある日中年の品のいい着物の月代の目立つ男が来てだ、そうして英雄の前に来てこんなことを言ってきた。
「寄り合いから来ました」
「大坂の商人達のか」
「はい、この街を取り仕切らせてもらっている」
「あんたはそこの一人か」
「三十六人いるうちの。如月屋文右衛門といいます」
「如月屋。金物屋だな」
 如月屋と聞いてだ、英雄はすぐに言った。
「そうだったな」
「はい、商いをさせてもらっています」
 商人もこう名乗った。
「この街で」
「繁盛しているそうだな」
「お陰様で。それでなのですが」
「俺達をか」
 英雄は相手の言わんと勘で察したことから述べた。
「そうか」
「はい、そして」
 如月屋と名乗った男はさらに言ってきた。
「その代表として貴方にです」
「寄り合いに出てもらいたいか」
「幅広く商いをされていて」
 十三人全体でというのだ。
「そして街のならず者達も退治していますね」
「そのこともか」
「寺社の方とも折り合いがいいので」
 そうしたことが合わさってというのだ。
「近頃街で評判になっている方々なので」
「誘いに来てくれたか」
「そうした次第です」
「俺に返答を求めたいか」
「すぐでなくともいいですが」
「今ここで答える」
 これが英雄の返事だった。 
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