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レーヴァティン

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第九十話 ならず者達その十一

「河豚の肝を食べたいと我儘を言う人が」
「確かにいるな」
「そして無理に食してであります」
「死んでいるな」
「そうなるであります」
「愚かな話だな」
「そしてその愚かと思うことが」
 まさにそのことがというのだ。
「河豚の肝を食べない理由であります」
「そうした意味もあるか」
「やはり人は無理を犯してまで美味なるものでもそうそう食べないでござる」
「極論すれば河豚は食わなくても死なない」
 英雄はこの真理を指摘した。
「むしろ食えば死ぬ恐れがある」
「そうでありあすな」
「だから俺も肝までは食おうと思わないか」
「そうかと」
「死ぬ時は河豚を食って死にたいと思っていても」
「肝まではでありましょう」
「そういうことか。魚の肝ならな」
「ここで彼が言うその肝はというと。
「エイや鱈、アンコウがある」
「あん肝じゃな」
 当季はアンコウの肝と聞いて笑って言った。
「あれはわしも大好物ぜよ」
「あれは美味いな」
「あんこうは元々美味い魚じゃが」
 外見に寄らずだ、実はあんこうは非常に美味い魚なのだ。
「特に肝はじゃ」
「美味いな」
「それでその肝をじゃな」
「食ってだ」
 そのうえでというのだ。
「それで充分だ」
「魚の肝ならじゃな」
「むしろ河豚の肝がな」
「あん肝より美味いかどうか」
「それはわからないが」
 しかしというのだ。
「俺はあん肝で満足出来る」
「魚の肝ならじゃな」
「そうだ、生きものの肝も好きだがな」
「レバーもぜよ」
「好きだ、牛のものも鶏のものもな」
「豚はどうじゃ」
「それも好きだ」
 こう言うのだった。
「身体にもいいしな」
「それ重要やな、それで明日の朝全員生きてたらな」
 耕平は風呂に入る用意をしつつ言った。
「またやな」
「そうだ、大坂を掌握する為にな」
「働いてくな」
「そうする」
 まさにというのだ。
「これからもな」
「そうやな」
「流れは予想以上にいい」
 大坂を手に入れるそれはというのだ。
「安心していい、しかしな」
「油断大敵やからな」
「このまま武力を持ってだ」
 自分達以外、兵をというのだ。
「そしてだ」
「銭もやな」
「さらに儲けてな」
 そのうえでというのだ。
「大坂を掌握し旗揚げを行う」
「その時どうして旗揚げするんだい?」
 具体的なことをだ、桜子が問うた。 
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