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レーヴァティン

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第九十話 ならず者達その十

「もつれる」
「そこから立っていられなくなってね」
「呼吸も出来なくなってだ」
「それで死ぬんだったね」
「それが河豚の毒だ」
 学術名はテトロドキシンという。
「非常に強い毒だ」
「猛毒って言ってもいいね」
「河豚一匹の毒で二十人以上殺せる」
 そこまで強い毒だというのだ。
「そして煮ても焼いても毒は分解されない」
「それが蛇の毒と違うっちゃな」
 愛実もその話を聞いて述べた。
「蛇の毒は熱したらなくなるっちゃ」
「蛇の毒は蛋白質ですから」
 その為だとだ、良太が愛実に答えた。
「ですから」
「毒が分解されるっちゃね」
「そうなります、ですが」
「河豚の毒は違うっちゃな」
「また別の毒です」
 蛇の毒とはというのだ、尚蠍の毒も蛋白質でありやはり熱するとその毒の効果はなくなってしまう。
「ですから煮ても焼いてもです」
「毒の効果はなくならなくてっちゃな」
「非常に危険です」
「だから調理も難しい」
 英雄もこう述べた。
「川魚の虫はじっくり冷凍それか焼くと死ぬが」
「河豚の毒はっちゃな」
「なくならない、だから調理も慎重にしないとだ」
「あたって死ぬっちゃな」
「そうだ、だから若し俺達があたっているとだ」
 その時はというのだ。
「今夜のうちに死ぬ」
「文字通り鉄砲っちゃな」
「全員あたっていればもう今日で終わりになるかも知れない」
「死の博打っちゃな」
「そうだな、だが美味かったな」
「滅茶苦茶美味しかったっちゃよ」
 愛実は河豚の味については満面の笑みで語った。
「流石河豚だっちゃ」
「全くだな、俺は明日死ぬと言われるとな」
「河豚を食ってっちゃ」
「死にたい」
 こう考えているというのだ。70
「そうしてな」
「そうっちゃか」
「河豚はそこまで美味いからな」
 こう思っているからだというのだ。
「そうして死にたい」
「それで悔いなくっちゃ」
「死にたい、そこまで河豚は好きでだ」
「美味しいと思ってるっちゃな」
「刺身も鍋も好きでだ」
「唐揚げもっちゃな」
「そして白子もひれ酒もな」
 共に食べたそうしたものもというのだ。
「何もかもが好きだ、ただ肝はな」
「食べたくないっちゃ」
「美味いとは聞いているが」
 それでもというのだ。
「食いたいとは思わない」
「そうっちゃ」
「自分でも不思議だと思うが」
「それは不思議でないでござるよ」
 こう言ってきたのは智だった。
「死ぬその時ならともかく」
「普段はか」
「死んでまではと思うものでござる」
「美味いものでも食わないか」
「河豚は食いたし命は惜ししなら」
「普通はか」
「河豚を控えるでござる」
 先程彼等が食べた魚をというのだ。
「河豚は食べたでござるが」
「肝はか」
「そうなるでござるから」
 河豚の中で最も毒が強いと言われるこの部分はというのだ。
「食べようとしないものでござる」
「だから俺もか」
「肝には興味がないのでござろう」
「そういうことか」
「拙者が思うには」
「時折いるでありますが」
 峰夫が言うことはというと。 
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