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前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話

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しっと

アイズとリヴェリアが帰って来て数日後の朝。

「えいっ」

「ひゃわぁっ!?」

「はい」

「ぎゃぴぃっ!?」

「っ…!」

「ぴゃぁっ!?」

「ッッ!」

「かふっ………」

「あ………………」

吹っ飛んだベルにアイズが駆け寄る。

「ベルっ…ベルっ……」

揺さぶるが、眼を覚ます気配はない。

「今日は気合い入ってんなアイズ」

アイズが振り返る。

「ベート…さん……」

「おう。朝っぱらからベルの悲鳴が聞こえてたからな」

ベートがベルを横抱きにする。

「今日はもうやめとけ」

歩き出したベートの後にアイズが続く。

二人が館の中に入ると、団員達が起きる時間だった。

団員達は朝からボロボロのベルと申し訳なさそうなアイズを見て大体の事を悟った。

ベートは食堂近くのソファーにアイズを座らせ、その膝の上にベルの頭を置いた。

「やぁ、お早うアイズ」

「お早う。フィン」

フィンがアイズとベルの間で視線を行ったり来たりさせた。

「んー……妬くのはアイズの勝手だけど、ベルに当たるのはダメだよ」

それだけ言うとフィンは手を振って歩いて行った。

「私が……妬いてる…?」

「ははははは! なんだお前気付いてなかったのかよ!」

ベートが壁を叩きながら爆笑する。

「お前は嫉妬しているんだ。ベルを独り占めしている、あのパルゥムのサポーターにな」

「わた……しが?」

「ああ。せっかく戻ってきたのにベルとあんまり居られなくて寂しいんだろう?
それに、ベルを傷つけておいて一緒にいるサポーターが許せない。そんな所か」

ベートがベルの頬にグリグリと指を押し付ける。

「ハッ…弱ぇくせに一丁前に女を妬かせやがって」

「ベートさんは」

「おん?」

「ベートさんは、妬いて、ないんですか?」

「俺は何日かベルを抱き枕にしてたからなぁ…」

「だき………まくら…………?」

「お。そろそろメシの時間だ」

「あ…まって……………いっちゃった」












談話室

「あ、あっ…あのっ…アイズ…さん…?」

ムスッとしたアイズの膝の上で人形のように抱かれ、ベルは顔を赤くしていた。

アイズが更に強くだきつく。

「ほあぁぁぁああぁぁぁああぁぁっ!?」

ベルが入団したての頃はベルを羨む声も多かったが、今ではファミリアのマスコット扱いだ。

毎回ボコボコにされてるしこのくらいのいい思いはさせてあげやしょーや、とはあるお調子者団員の談だ。

今も談話室でそれとなく見ている団員達の視線は優しいものだ。

「あ、あの…その…僕これからダンジョンに……」

「私も行く」

「へぁ!?」

「ベルが心配。だからついていく」

アイズはベルを抱き抱えると、自分の部屋に連れていった。

「ベルは上層にしか行かないから、剣とポーションだけでいいはず」

ベルがアイズの部屋を見た感想は、殺風景だなぁ…、というものだった。

アイズが開けたクローゼットに申し訳程度の服が吊るされている。

小さな布に関してはベルは眼を背けた。

「これでよし」

アイズは剣帯とポーチだけをつけていた。

「ベル。準備して。下で待ってる」

「はっはい!」

ベルが自分の部屋に走り、ワンピースの上から鎧を着ける。

アイズの三倍ほどの時間で用意が終わる。

最後に腰の後ろのホルスターにバルグレンを、サイドの剣帯にアリファールを納める。

ベルが降りると、アイズとリヴェリアが待っていた。

「ベル。朝から災難だったな」

「いえ」

「これからアイズとダンジョンに行くのだろう? 私も行こう」

「リヴェリアさんもですか?」

「うむ…。まぁ、アイズが無茶しないよう監視という面もある」

「?」

「それに、お前がどれくらいの実力か見るいい機会だと思ってな」

「はぁなるほど…」

三人が黄昏の館から出て、バベルへ歩く。

美女、美少女、美幼女の組み合わせは目立つらしく、注目が集まっていた。

そしてバベル近くの噴水。

ベルとリリの待ち合わせ場所についた。

「あ! ベルさ……………ま……?」

リリの顔がひきつる。

「やぁ、リリルカ・アーデ。私のベルが世話になってるな」

とリヴェリアがベルの頭をもふもふしながら言った。

「今日はベルの成長を見たくてついてきた。邪魔はしないので安心してくれ」

「はい。わかりましたッ!」

リリが固くなりながら答える。

「こっちは知っているだろうが、剣姫だ。
………おいアイズ。相手が誰だろうと敵でないなら挨拶しろ。それが礼儀だと教えただろう」

「……この子敵」

「ベルの味方なんだから味方だ。このバカ者」

するとアイズがベルを抱き寄せた。

「アイズ・ヴァレンシュタイン。よろしく」

アイズに抱き寄せられ、顔を真っ赤にするベル。

「リリルカ・アーデです。どうぞお見知りおきを」

その時アイズとリリの間で火花が散った。

リヴェリアはソレを面白そうに見ていた。






ダンジョン10階層

リヴェリアとアイズは本当に何もしなかった。

いや、する必要が無かった。

ベルがモンスターを灰にし、リリが魔石とドロップアイテムを回収する。

「うむ。なかなか成長したようだな」

リヴェリアは先日の食人花戦での戦闘と、今の戦闘を合わせて評価していた。

必ず一対少数を心がけ、囲まれないよう留意してベルが動く。

そして一撃で確実に魔石に傷を入れ、モンスターを灰にする。

「ベル。器用だね」

「そうだな。だが中層以降ではあのやり方はだめだ。集中力が持たん」

「ベルなら、直ぐに中層も越えそうだね」

「笑い飛ばせんのがなぁ」

話している合間に、ベルが全てのモンスターを片付けた。

「よかったぞベル」

「ありがとうございます! リヴェリアさん!」

リヴェリアがぽふぽふとベルを撫でる。

「んぅ…」

リリは普段は見せないベルの一面に驚いていた。

「リリルカ」

「はい!」

「君の手際もとても良かったぞ」

「こ、光栄です」

ふにゃっと笑うベル。

(たしかにあんなに甘えた姿を見たら親子と勘違いしてしまいますね)

ベルは尻尾があったらちぎれるほど振っているような様子だ。

(むぅ…。何か面白くありませんね…)

「ベル様。早く行かないと夜になってしまいますよ?」

「ふぇ? あ、うん…」

しゅん…、とした様子のベル。

(なんですかこの罪悪感は!? 私がわるいんですか!?)

「……ベル、兎みたい」

アイズの一言が、一同の意見だった。













同日 黄昏の館

「あ、モビー…さん」

「ぬぉあぁっ!? アイズさん!?」

モビーは唐突にアイズに声をかけられ驚いた。

「ベルと、ベートさんの事なんだけど…」

「え? あ、あぁ…なんだそっちか…」

「?」

疚しい事でいっぱいのモビーは問われた事が自分に関係ない事と知り、安堵した。

「それで? 何を聞きたいのお姫様?」

「うん。ベートさんがベルを抱き枕にしてたって言ってたけど、抱き枕って、なに?」

「あー…その話ですか…うん…そのぉ…」

「?」

「えーと、あれですよ、ベルってモフモフしてて抱いて寝ると気持ちいいらしいですよ、はい」

「ベルと一緒に寝るの?」

そこでモビーはニヤリと笑った。

「ああ、でもベルは恥ずかしがると思うので、当て身で気絶させてからやるといいですよ」

「ん。わかった」

スタスタと歩いていくアイズ。

気になったモビーはその後をつける。

モビーが角からそっと顔を出す。

ちょうどベルとアイズがすれ違う所だった。

すれ違う一瞬。

アイズの神速の手刀がベルの首を打った。

倒れるベル。

ソレを支えるアイズ。

アイズはベルを横抱きにすると、そのまま何事も無かったかのように歩きだした。

「うーわ本当にやりやがった…。でもまぁ、ベルも美味しい思いできて本望か」







翌日。幹部連中はベルの悲鳴と共に目覚めた。

結果として、モビーは幹部に追い回される事になったが、先日のラウルと同じく同情する者は居なかった。

「やぁベル! いい朝だったろう? バッチし起ってかい? 男だもんな!」

「逃がしませんよモビーさん」

ベルがエザンディスを一振りする。

するとモビーの足元に影がうまれ…。

「んのぁっ!?」

モビーが落ちた先。

その目の前には……。

「や、やぁリヴェリアさん、レフィーヤちゃん。そんな怖い顔しな……へぶぉあぁっ!?」

レフィーヤの杖がモビーを薙ぐ。

「カクゴナサイ…」






「ぎぃぃぁああぁぁああぁぁぁぁっっっ!?」
 
 

 
後書き
モビーのモデル? へヴィーオブジェクトの主人公二人ですよ。 
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