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前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話

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ばいと

「やぁ頑張ってるようだねベル」

「……」

「お客にその態度は減点じゃないのかい?」

「なんで居るんですか団長」

「ん? 暇だったから様子を見にね。もう暫くしたら皆も来るよ」

酒場豊饒の女主人。

ベルはそこの制服に身を包み、給侍をしていた。






時は前日に遡る。

「ちょっと待てバカ者」

「んみゅっ!?」

ベルがダンジョンに向かおうとした時、リヴェリアに後ろ襟を掴まれた。

「お前、いったい何日連続で潜っている」

「そろそろ……七日?」

「休め」

「えぇ…でもリリが待ってますし…」

「なら今日から3日ほど休むと言ってこい」

「3日もですか?」

「お前、聞けばリリルカを助ける際に始めた夜のダンジョンアタックを再開したらしいな」

「なぜそれを!?」

「ベートが溢していたぞ。最近抱き枕を取りに行ったらもぬけの殻だったとな」

「………………それが恥ずかしくて夜のダンジョンアタック行ってるんですけど」

「なんだやっぱりそうなのか」

「わかってるならどうにかしてくださいよ……」

「断る。ベートもお前と居ると大人しいからな」

「僕はベートさんの首輪か何かですか…」

そうして、なんやかんやあって豊饒の女主人で働く事になった。











翌日、豊饒の女主人

「今日はお世話になります!」

「おう。ちゃんと働きなよ」

ミアに言われて、ベルが元気よく返事をした。

「さーて、それじゃぁお着替えの時間にゃ」

「へ?」

「にゅふふ…これで合法的に少年のお尻を……」

キャットピープルの店員がベルの尻を撫でた。

「ひぃっ!?」

「お…おお…! なんという逸品! 男なのに女みたいにぷにぷにしていてそれでいて男の魅力のある青いおケツ…!」

「何をしているのですかクロエ」

ゴス! とクロエの頭にリューのゲンコツが落ちた。

「クラネルさん空き部屋に案内するのでそこで着替えてください」

「ふぇ…リューざあぁぁん!」

ベルが泣きながらリューに抱きつく。

それを見て全員の視線がクロエに刺さる。

いたいけな男の娘にセクハラして泣かせた犯人だ。

「にゃにゃ? にゃーはお尻をさわっただけ……」

「バカやってんじゃないよ!」

ドゴォ!

「ぎにゃぁー!? ミアかあちゃんそれはだめにゃー! リューに殴られた所にゃー!」

「シル! リュー! 坊やを部屋に連れていっておやり!」


空き部屋に連れていかれたベルが事情を話す。

「なるほど…リヴィラのアマゾネスですか……ハイレベルともなるとそういう輩も出てきます。女だからと油断しないように」

「ぐすっ……はい」

「それは災難でしたねぇ。ベルさん」

「うぅ……」

「ああ、そういえばクロエは所謂ショタコンでしたね」

「ぴぃっ!?」

とリューの腕に抱きつきプルプルと震える白兎。

「シル!」

「ごめんなさい。ベルさんが可愛いのでつい」

「クラネルさん。ミアお母さんに叱られた事ですし、クロエももう手は出してこないでしょう。ですから安心してください」

「ぁい…」

ベルを着替えさせる為に二人が出ていく。

「リュー」

「……なんですかシル」

「さっき、ベルさんに触られてたけど…」

「不思議と、嫌悪感を抱きませんでした。そういえばリヴェリア様もクラネルさんを膝の上に乗せていましたね」

「へー…」

シルがジト目でリューを見る。

「ぅ…べ、別に私はクラネルさんに好意など持っていませんよ」

「そういう事に、しておきましょうか」

暫くすると、ベルが内側からノックした。

ギィ…と扉が開く。

「あの……こんな感じでいいですか…?」

「「…………………………」」

固まる二人。

「あのー? なにか間違えてましたか?」

「いっいえ、何もおかしくはありませんよ。ですよねリュー」

「え、ええ。何もおかしくないですよベルさん」

唐突にリューがシルを引っ張って行く。

「(シル! ミアお母さんに言ってこの話は無しにしてもらいましょう!)」

「(なに言ってるのよリュー!?)」

「(あんなの襲ってくれと言っているような物です!)」

二人がベルに視線をやる。

豊饒の女主人の制服を来た幼女。

腰まで伸びた少しクセのついた白い髪。

兎のようなつぶらな瞳。

パルゥム程ではないが小さな体。

儚げで可憐な、守ってあげたくなるようなナマモノがそこに立っていた。

「(だ、大丈夫ですよ! ミアお母さんの店でそんな事する人いませんから!)」

「(相手は冒険者ですよ!)」

「(だ、大丈夫…だとおもう)」

「あのー。シルさん? リューさん?」

こてんと首を傾げるベル。

「ま、まぁとりあえずミアお母さんの所にいきましょうベルさん」

「はい」

シルがベルの手を引いてミアの前に連れていく。

「ほう。なかなか可愛いじゃないか」

「ありがとうございます」

「じゃぁ早速仕事だ。野菜の皮剥きをやってくれ」

「はい!」

ベルとシルとリューが厨房に入る。

「クラネルさん。料理の経験はありますか?」

リューの質問にベルはハイと返した。

「オラリオに来る前はずっとやってたので、余程変わった物でなければ作れますよ」

リューが持ってきた木箱の上に乗り、ジャガイモの皮を剥き始める。

「上手ですねベルさん」

「ありがとうございます…」

誉められて少し顔を赤くするベル。

「ベルさんベルさん」

「ん?……んみゅ…」

シルに呼ばれたベルが顔を横に向けると、細く切った人参を口に突っ込まれた。

ぽりぽりぽりぽり……

「(かわいい………飼いたい…)」

からかわれながら野菜を向いたり賄いを食べている間に、開店時間だ。

「坊主!」

「はーい!」

ミアに呼ばれてベルが兎のようにトコトコ歩いていく。

「つぎのお仕事ですか?」

「ああ。もう客が来てる。今やってる仕事が終わったら注文を取りに行きな」

「はい!」



そしてベルは注文を取りに行った。

「なんで居るんですか団長」

「ん? 暇だったから様子を見にね。もう暫くしたら皆も来るよ」

「………ミアさんがやけにあっさり受け入れてくれたと思ったらそういう事ですか」

「さぁ。今回の事は全部リヴェリアがやってたからね。僕はあんまりしらないんだ」

「そうですか…ご注文は?」

「じゃぁこのワインとナッツを貰おうか。皆が来たら改めて注文するよ」

メニュー表を指してフィンが注文する。

「畏まりました」

「ああ、ベル」

「はい?」

フィンが取り出したのはウサミミカチューシャだった。

「リヴェリアから。忘れ物だってさ」

「………………………………………………」

「とりあえず渡しておくね」

「……………………………………」

ベルは嫌々カチューシャを受け取ると、厨房のミアにフィンの注文を伝えた。

「わかったよ。ところでそのウサミミカチューシャは何だい?」

「えーとですね…」

「持ってたら邪魔になっちまうだろう。さっさと着けな」

「…………………はい」

ベルがフィンにワインとナッツを運んで四半刻ほどすると、ロキファミリアのメンバーがぞろぞろと入ってきた。

「ひゃー! マジでベルがココの制服着とる! 眼福やー!」

ロキがベルに抱きつこうとし、リヴェリアに脚を引っ掛けられた。

「ほげぇっ!?」

「バカやってないで座れ」

リヴェリアに立たされ、席につくロキ。

「いらっしゃいませ。ご注文をお伺いしても宜しいでしょうか」

普段より幾分高い声でベルが尋ねる。

「せやったらベルの体で男体盛r「ふん!」

隣に座るベートがロキの顔面をテーブルに叩きつけた。

「ロキは無視していいぞ」

「かしこまりました」

他の面子の注文を聞き、料理を届ける。

そのあと他のテーブルに呼ばれて向かう。

「おやベル様」

「久しぶりだねベル君」

「リリ…とヘスティア様」

向かったテーブルには四人の女性が座っていた。

リリとヘスティアの他にもう一人。

燃えるような赤い髪と眼帯の女。

「ヘファイストス様でしょうか?」

「あら名乗ってはいないはずだけれどよくわかったわね」

「団長から話はきいています。そちらは椿様ですね?」

ヘファイストスの隣に座る褐色に黒髪、眼帯の美女。

「うむ手前が椿だ。ところで坊(ぼん)なぜこっちを見ぬ」

「いえ…その…」

「なんじゃこの店は客の顔も見ぬのか」

「やめなさい椿」

見かねたヘファイストスが椿を止めた。

「っはっはっは! すまんすまん坊が可愛かったゆえ、ついな」

椿の格好は下は赤い袴、上はサラシを巻いてその上から着物のような物を羽織っているだけだ。

褐色の胸の谷間がチラチラと見えている。

ベルは視線をそちらに向けないようにしていた。

「愛い(うい)いのぅ」

「はぁ…ご注文は」

「手前は2ポンドステーキをもらおう」

「そうね…適当な大皿料理と取り皿をお願い。ヘスティア達もそれでいいでしょう?」

「ボクはいいよ」

「わたしもかまいません」

「お飲み物はどうされますか?」

ベルがヘファイストスに尋ねる。

「ウォトカとワインとクヴァースを二つお願いするわ兎さん」

「かしこまりました」

その日豊饒の女主人は大盛況だった。

どこから聞き付けたのか、物好きな神が多く来店したのだ。

「リヴェリアちゃんの隠し子が居ると聞いて!」

「ヴァナルガンドのツバメがいると聞いて!」

「ロキの玩具を見に来た!」

「剣姫のペットはどこ!?」

と、まぁ店に入りもせずにいる神々だったが…

「店の前で騒ぐなアホンダラァァァッッ!」

ミアの一喝で散って行った。










「お疲れ様でしたベルさん」

「いえ、いい経験になりました」

1日の仕事が終わり、ベルが帰る時間となった。

すでに夜中の1時だ。

「これ、ミアお母さんから。今日のお給金だそうです」

「い、いえ! いただけませんよ! いきなり押し掛けて面倒見てもらったんですから!」

「そうですか?」

「は、はい」

「こまりましたねぇ」

そこでシルがポンと手を打った。

「ならいいものがありますよ」

「いいもの?」

シルが傍らにあった本を手に取る。

「ゴブリンにもわかる現代魔法?」

「はい、お客様が忘れていった物なんですけど、読まれますか? 明日は1日暇だと言っていたじゃないですか」

「ま、まぁそうですけど…いいんですか?」

「構いませんよ。読み終わったら返して頂ければそれで結構ですから」

「あ、ありがとうございます」

ベルが受け取った本をバックパックに入れる。

「では、お休みなさい、ベルさん」

「はい! お休みなさい! シルさん!」

ベルが兎のように駆けていき、シルがその後ろ姿を見ながら手を振る。

そしてベルが見えなくなると、シルは遠くそびえる摩天楼を見上げた。










「これで、いいのでしょう?」 
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