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星河の覇皇

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第六十九部第四章 国境外縁部その二十一

「火事場に飛び込んで損害が出てもな」
「構わない」
「そうも考えられていますか」
「我々は」
「そうなのですね」
「長官殿にそうしたお考えはなくともだ」 
 八条に難民への偏見はない、公平な人柄なのでそれで人を差別して扱う様なことは彼にはないのである。
「それでもだ」
「連合という国にですね」
「そうした考えがありますね」
「どうにも」
「連合自体に」
「この国は市民の国だ」
 このことをだ、グータルズはここでも指摘した。
「そうであるからな」
「連合市民の国ですね」
「あくまで彼等の国であり」
「我々は難民です」
「異邦人ですね」
「まさにな、だからだ」
 それ故にというのだ。
「そうした扱いをしてもだ」
「構わないのですね」
「火事場に飛び込ませても」
「犠牲が出ても」
「そういうことですね」
「意識しているかはわからない」
 その連合市民達がだ。
「しかしだ」
「実際にその考えはありますね」
「連合に」
「だからこそ我々もですね」
「こうして最初に出撃していますね」
「そのうえで戦う」
「そうした役回りですね」
「そうだろう」
 例えだ、連合市民達が意識しておらずともというのだ。その無意識下にあるそうした感情からそうした行動を取っているというのだ。
「そうした考えだ」
「市民ならいいが」
「市民でないのならですね」
「対応を変える」
「損害が出てもいいとですね」
「もっとも福利厚生は充実している」
 義勇軍にしてもそれは相当なものだ、サハラ各国とは比較にならない。
「負傷した時もな」
「はい、すぐに治療してもらえますし」
「遺族への配慮も素晴らしいです」
「そうしたことは考えてくれていますね」
「それも実によく」
「そうだ、だがな」
 それでもというのだ。
「どうしてもそうした感情がある」
「連合という国自体に」
「どうしても」
「ありますか」
「どの国にも偏見がある」
 この真実をだ、グータルズは言った。
「どうしてもな」
「エウロパにもサハラにも」
「どの国にもですね」
「そしてどの様な人間にも」
「ありますね」
「そうだ、偏見はある」 
 グータルズは当初、難民として働いていた頃は知らなかった。しかしこの真実を義勇軍に入って知ったのである。
「連合にもな、むしろ義勇軍に入ると」
「はい、どうしてもですね」
「そのことを意識してしまいますね」
「正規軍と義勇軍として」
「分かれていて」
「義勇軍はですね」
「難民の軍隊です」
 その連合市民でない者達の軍隊だというのだ。 
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