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レーヴァティン

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第八十三話 ローマに戻りその二

「どうもな」
「ここからですね」
「一刻も早くな」
 それこそというのだ。
「ローマに行きたいな」
「そうですね」
「ああ、術で行きたい位だよ」
 転移の術を使ってというのだ。
「本当にな」
「焦るな」
 その久志にこう言ったのは正だった。
「焦ってもだ」
「何にもならないか」
「今すぐにローマに戻る必要があるか」
「そう言われるとな」 
 久志も正に答えた。
「別にな」
「ないな」
「ああ、急ぐに越したことはなくてもな」
「この船の速さでいいな」
「そうなんだよな、今家もローマに移しているしな」
「御前の奥さんもいるな」
「そのことでもすぐに戻りたいけれどな」
 妻に出会いたい、このこともというのだ。
「けれどな」
「焦ることはないな」
「ああ、じゃあな」
「今は焦らないことだ」
「船で行くに任せるか」
「船は常に進んでいる」
 朝も夜もだ、だから歩くよりも速く進めるのだ。
「それならだ」
「焦らずにか」
「今はこの船の中にいることだ、何なら一人で転移の術で行くか」
 ローマまで、というのだ。
「そうするか」
「それもな」
「そうだな、ではな」
「今はな」
「船にいる、そしてだ」
 そのうえでとも言うのだった。
「もう一つすることがある」
「飯か」
「酒もだ、まだ焦るならだ」
「そういうもので忘れることか」
「そしてモンスターが出ればな」
 その時はというと。
「戦ってだ」
「倒すだけだな」
「そうだ、その覚悟もいいな」
「湖も出るからな」
 モンスター達がだ、実は彼等も先程巨大な恐竜と戦っている。十匹位のエラスモサウルス達だった。
「それじゃあな」
「そうしたことを考えながらだ」
「それでか」
「今は行くことだ」
「そうだな、海をな」
 こう話してだ、そしてだった。
 一行は船で湖を進みローマに向かった、久志は実際に船の中で美味い食いものに酒も楽しんだ。その食いものはというと。
 釣れた鮃のカルパッチョに鱒のフライ、鯛のアクアパッツァそれにブイヤベースだった。そうしたものを食い白ワインを飲んでだった。
 彼は笑顔でだ、こんなことを言った。
「焦る気持ちもな」
「美味しいものでだね」
「ああ、随分紛れるな」
 淳二にも言うのだった。
「本当にな」
「そうだね、というか焦ることはね」
「何でもだよな」
「禁物だよ、焦って何かしても」
「周りが見えなくてな」
「失敗の元だよ」 
 そうなるからだというのだ。
「だからね」
「焦らないことだな」
「急いでもね」
 それでもというのだ。 
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