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レーヴァティン

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第八十二話 最後の一人その一

               第八十二話  最後の一人
 英雄の言う通りだった、最後の一人の情報は簡単に手に入った。英雄は仲間達に宿で仲間達の話を聞いてだ。
 そのうえでだ、自分もこう言った。
「俺も同じだ、水戸城の近くのな」
「はい、武家屋敷の中にある道場にです」
 紅葉が名護屋交じりの敬語で応えた、彼女のその口調で。
「ふとやって来た」
「外の世界から来たという女がな」
「いるということですが」
「俺もそう聞いた、そいつがだ」
「最後の一人ですね」
「間違いない」
 このことはというのだ。
「だから明日行ってだ」
「仲間にしますね」
「そうする、これで全員揃うが」
「しかしほんまにな」
 耕平もこう言ってきた。
「簡単に情報が入ったな」
「全員にな」
 英雄は耕平にも応えて言った。
「そうなったな」
「ああ、それがしもびっくりしたわ」
「やはり異邦人はな」
「目立つんやな」
「そのことだけでな」
「服装とか髪の毛や肌、目の色は同じでもか」
「雰囲気が違う」
 それ自体がというのだ。
「だからだ」
「わかるんやな」
「そしてだ」
「その違いでやな」
「注目され噂にもなりな」
「それがし達もわかるか」
「そういうことだ、いいか悪いかは別にしてな」
 目立ってしまうというのだ。
「それだけでな」
「成程な、ほな納得したし」
「それでだな」
「明日会いに行くか、それで今日の晩飯は」
「納豆だな」
 幸正が宿屋が出してくれた米櫃と藁づとを出して言ってきた。
「あと味噌汁もある」
「それやな、本場の納豆やな」
「それを食うか」
「ああ、それがしも納豆好きや」
「如何にも食いそうにない喋り方だがな」
「そやから納豆はもう関西でも普通や」 
 普通に食べられるものになっているというのだ。
「それはもう話してるやろ、お醤油にからしと葱を入れてな」
「かき混ぜてか」
「そして白い御飯にかけてたらふく食うか」
「わかった、ではな」
「たらふく食おうな」
「味噌汁もあるしな」
「朝飯みたいな献立やがそれはええわ」
 今更言ってもはじまらない、出されたものは食べる。耕平はこう考えて幸正に言葉をこの言葉を返したのだ。
「ほなな」
「食うか」
「そうして風呂入って寝よか」
「そうだな、ゆっくりとな」
 幸正は早速藁づとから納豆を出した、納豆独特の匂いと糸を引いたその姿が出て来た。一同はその納豆を御飯にかけてだった。
 味噌汁と共にたらふく食った、それからそれぞれ風呂に入ったが耕平はここで思い出した顔になって言った。
「酒飲もうか」
「風呂の後はか」
「何か忘れてると思ってたらな」
「酒か」
「それを忘れとったわ」
 まさにそれをというのだ。
「そやからな」
「ここはだな」
「酒や、確か宿でチーズも売ってたな」
 この島の水戸ではラーメン、納豆と並んで名物になっている。それで宿の方でも売られているのだ。 
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