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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica27次元世界最強の10代女子~Sieglinde Eremiah~

†††Sideヴィヴィオ†††

今日の午前は、ミカヤさんに続いて2人目のインターミドル都市本戦経験者、エルス・タスミン選手との試合を組んでもらってる。フライハイト邸の地下トレーニングジムで、準備運動をしていると「エルス・タスミン様がいらっしゃいました」ってルーツィエさんが更衣室のドアから出てきた。

「エルス・タスミンです、失礼します!」

ルーツィエさんの後に続いてメガネを掛けたトレーニングウェア姿の「エルス選手!」が姿を見せた。ノーヴェの「よし、お前ら整列!」の指示に「はい!」って答えて、ノーヴェの前にわたし、コロナ、リオ、アインハルトさん、そしてミウラさんが整列する。

――ミウラ(コイツ)もストライクアーツが楽しすぎてしょうがねぇってことでさ。毎日でもトレーニングしてぇって話なんだが。ほら、あたしもザフィーラも局の仕事の都合で、道場を毎日開くわけにはいかないんだよ。んで、そこでコイツを、試合の仮想相手役としてチームナカジマのトレーニングに加えてやってくれ――

ヴィータさんからのお願いということもあって、冬休み中のトレーニングにはミウラさんも参加する事になった。

「よしっ! エルス・タスミン選手に挨拶!」

「「「「よろしくお願いします!」」」」

エルス選手はルーツィエさんの案内でノーヴェの隣に立って、わたし達は自己紹介してくれたエルス選手に一礼した後、この場に居るチームナカジマのわたし、コロナ、リオ、アインハルトさんの4人+ミウラさんの順で自己紹介返し。フォルセティとイクスは、今日は朝から非番のアイリから治癒魔法や医学を学んでいて、ルールーとリヴィは、ルーツィアさんの運転する車でお買い物。

「で、今日はエルス選手と、魔法ありの本番と同じ形での練習試合を行ってもらう。1人につき3分1ラウンドを、休憩を挟みながら昼まで行う。エルス選手、それでいいですか?」

「はい。事前に窺っていた通りのスケジュールですので、それで構いませんよ」

「判りました。1番手はヴィヴィオ、お前だ!」

ノーヴェから呼ばれたわたしは「はいっ!」返事をして、エルスさん(敬称は選手じゃなくて、さんで良いとのこと)と向かい合って「お願いします」ってお辞儀しようとしたら、「はい、お願いします」って右手を差し出してくれたからわたしも「はい!」って握手に応じた。

「じゃあヴィヴィオとエルス選手は、防護服の着用を」

「「はい!」」

わたしは側に浮遊してる“クリス”に「さぁ行くよ! セイクリッドハート、セーットアーップ!」って微笑みかけて、大人モードプラス防護服へと変身する。エルスさんも「パニッシャー、セットアップ!」手錠型のデバイスを起動しました。

「あたしが審判として同行する。えー・・・っと、ルーテシアとリヴィアが前々から組んでくれていた空間シミュレーターは・・・っと」

ノーヴェが空間モニターとコンソールを展開してタタタっとタイピング。すると試合場の中央に「リング・・・!」が構築された。この前行ったドームにあった公式リングと同じデザインだ。みんなで「すごーい!」って歓声を上げていると、エルスさんも「自宅にリングて・・・」ってポカーン。

「外にはランニングコース、地下にはジムにプール・・・。さすがベルカ自治領の領主フライハイト家ですね・・・」

「じゃあ2人はリング中央へ。あたしも審判として一緒に上がる」

3人でリングに上がって中央に立つ。そして魔法がリング外へと洩れないようにするための半透明の結界が展開される。

「ライフは12000、クラッシュエミュレートあり。3分1ラウンドでの練習試合を開始する」

エルスさんと右拳をコツンと合わせて、お互いに構えを取る。ノーヴェがわたし達から距離を取って「レディー・・・」右腕を高らかに掲げた。そして「ファイト!」振り下ろされたと同時、わたしは足元に魔法陣を展開して、「ソニックシューター・・・!」の発射スフィアを展開。

(エルス選手はバインド魔法の使い手だ。捕まったら一気に削られる・・・!)

「アレスティングネット!」

エルスさんの周囲に赤く輝くミッド魔法陣が複数展開されて、そこから魔力の手錠を先端にしたチェーンバインドが、わたしに向かって伸びてきた。

「ファイア!」

先端の手錠目掛けて魔力弾を発射したんだけど、「いぃ!?」魔力弾がバインドの突撃力に負けてしまって掻き消されちゃった。速度を落とすことなく迫るバインドを、わたし自慢の目の良さで動きを見切りつつエルスさんの周囲を駆け回る。

「(魔力弾でダメなら・・・砲撃で!)ディバイン・・・」

ほんのちょっとだけど引き離せたバインドに注意しながら、エルス選手の頭上へと跳んで「バスター!」突き出した右拳から砲撃を放つ。エルスさんは「甘いですよ!」って、わたしを追わせてたバインド数本で盾を作りつつ、魔力爆発の影響範囲から逃れるために後退した。

(ここで・・・!)

宙で逆さま状態に居るわたしは足元に魔法陣を展開して、それを足場として蹴る。シャルさん達騎士がよく使う空中高速移動方法の1つだ。

「リボルバースパイク!!」

後退中のエルスさんへと打ち下ろしの右回し蹴りを繰り出すと、「ぐぅ・・・!」エルスさんは左腕を掲げての防御。タイミングは良かったのにきっちり防がれちゃった。でも即座にソニック「シューター!」の単発を至近で発射。

「きゃあ!」

エルスさんのお腹に直撃させることが出来た。エルスさんの背後に跳んで、着地と同時に魔力付加打撃「アクセルスマッシュ!」を繰り出す。単発だけとはいえシューターの直撃を受けていたエルスさんだったけど、前屈してわたしの一撃を躱した。そして床に両手を突いて前転して、左踵をわたしの下あご目掛けて振り上げてきた。

「っく・・・!」

上半身を反り返らせて回避。つま先が顎を掠めていったことにホッと安堵した。もし入れられたら脳震盪のクラッシュエミュレートを受けてたはずだし。

「ぅぐ!?」

上半身を起こす前にお腹に突き刺さる衝撃。反っていた上半身がそれで一気に戻って、エルスさんの左足の突き蹴りが入ってるのを視界に収めた。後ろ向きにたたらを踏んで、体勢を整えたエルスさんと改めて対峙する。少しの沈黙の後・・・

「アレスティングネット!」

エルスさんはまた、展開した複数の魔法陣から手錠付きのチェーンバインドを伸ばしてきた。オットーとの練習を思い出せ。気を付けるべきは全体じゃなくて先端の動き。掌底や裏拳を使って手錠を弾き飛ばしつつ、周囲に魔力スフィアを6発と展開。

「やあああああ!」

エルスさんへと突っ込む。エルスさんは去年のインターミドルでは射撃・砲撃の遠距離攻撃は一切使わず、ひたすらにバインドと体術を駆使して都市本戦8位にまで上り詰めた選手だ。今年の大会に向けて新技を生み出していたとしても、ライバルとなるわたし達との練習試合で出すことはまずないって思う。つまり使うまでもない格下ってことになるけど、それならそれで安心して突っ込める。

「やりますね、ヴィヴィオさん・・・!」

エルスさんも真っ直ぐわたしに向かって来て、手錠型デバイス・“パニッシャー”を握る右拳を振りかぶった。同時に右拳を繰り出す。クロスカウンター気味だけど、お互いの拳は相手の頬に届く前に前腕がぶつかった。内側にあるエルスさんの腕が、わたしの腕を外に向かって弾くように払ってきた。

「(まだ左がある・・・!)はああああああ!」

「やぁぁぁぁぁッ!」

わたしとエルスさんの左拳がぶつかり合う。そして待機させてたソニックシューターを「ファイア!」一斉にエルスさんに向かって発射。わたしが弾いたあと待機させられてたエルスさんのバインドが、シューターの迎撃のために動いた。さっきは成す術なく破壊されちゃったけど、今度はシューターを構成する魔力を増やしたから、早々に壊されないはず。

(よしっ! バインドを弾いた!)

バインドの先端の手錠に当てるのにはちょっとコントロールが必要だけど、一度弾いちゃえば再び向かってくるまでには僅かな時間が掛かる。その間にエルスさんを殴り落とすことが出来れば・・・。

「くっ、バインドが・・・!」

わたしとエルスさんの打撃の攻防の最中、わたしは順次シューターを展開してはバインドを迎撃する。エルスさんの必勝パターンは、バインドで相手を拘束してからが始まりになる。複数のバインドに捕まらなければ押し切れそう・・・。

「でぇぇぇい!」

――ソニックシューター・アサルトシフト――

「はああああ!」

――アレスティングネット――

シューターとバインドが激しくぶつかり合って互いに弾き飛ばされる中で、わたしとエルスさんは真っ直ぐ相手を見詰めて攻撃を繰り出し続けた。

†††Sideヴィヴィオ⇒アインハルト†††

都市本戦8位の成績を収めているエルスさんとの練習試合を複数回とこなし、ノーヴェさんとチームナカジマとミウラさんはエルスさんと一緒に昼食を終え、今は食後のコーヒーブレイク中です。練習試合の私の戦跡は4戦1勝1敗2引き分けとなった。1戦目にバインドの餌食となり、2戦目と3戦目に慣れてきて、4戦目でギリギリでしたが勝てました。

(ですが繋がれぬ拳、アンチェインナックルの不発も何度かありましたし、完璧に使いこなせるようにもっと鍛錬しなければ)

「皆さん、今年が初参加だというので少々侮っていましたが、恐ろしいほどまでに個性的な戦闘スタイルで驚きました。私もまだまだ鍛練が足りないと知ることが判りました」

全体的な勝率で言えばエルスさんの勝ち越しでした。都市本戦出場経験者としての誇りもあるのでしょう、やはり全勝できると考えていらっしゃたのでしょう。ですが私たちとて日々鍛錬を行っています。都市本戦出場経験者と闘い合えるまで・・・。

「ジム通いだけでは得られなかった経験でした。また、こういった練習試合を催すつもりでしたら声を掛けていただいても?」

「ええ、その時はぜひお願いします!」

ノーヴェさんとエルスさんが握手を交わしてニッと笑みを浮かべたその時、食堂の扉が開いた。入ってきたのは「おーっす!」と挨拶をしたシャルさんと、「ノーヴェ。例の客が来たようだぞ。正門前に車が止まるのを見た」と言うルシルさん、そしてルシルさんの右腕に抱きつくようにして歩いてきたアイリさんの3人。

「ふぁ、ふあああああ! は、は、ははは初めまして! 私、エルス・タスミンといいます!! チーム海鳴のご活躍はかねがね、です!」

ガタッと勢いよく立ち上がったエルスさんが言葉に詰まりながらの自己紹介。シャルさん達も改めての自己紹介の後、エルスさんと握手を交わしました。エルスさんは「ほわぁ! 今日はなんて素晴らしい日!」と感動に体を震わせ、シャルさん達が「大袈裟だよ♪」と照れ笑いを浮かべました。

「シャルさん。応接室をお借りしますけど、いいでしょうか?」

「この家に居る間は遠慮は無用だって言ったはずだよ、ノーヴェ。もちろん使ってもいいから。というよりもう準備してあるから使って。あ、わたし達も同席させてもらって良い? 一応この家の人間だし、彼女に会うのも10年ちょっとぶりくらいになるし。挨拶をちょこっとね。ルシル、アイリ。あなた達も同席をお願い」

「了解だ」「ヤー♪」

アウストラシアの聖王家とフライハイト家、シュトゥラのイングヴァルトと魔神セインテスト家の直系、ガレア王家、そしてエレミアの一族。それがあと少しで一堂に会することになる。

(エレミア・・・。ジークリンデ選手は、どう向き合っているのでしょうか・・・)

「あの、お客様がいらしたのでしたら私はもうこれで・・・」

「ありがとうございました、エルスさん。エントランスまでお見送りさせてください」

私たちチームナカジマは、お世話になったエルスさんをお見送りする為に一同エントランスへ。エントランスではオットーさんとディードさんが控えていました。会釈していると、ゴンゴンゴンと玄関扉のノッカーが叩かれた音が。

「「はい!」」

オットーさんとディードさんが両開きの玄関扉を外へと向かって開くと、そこにはテレビで観たジークリンデ選手が居り、側にはヴィクターさんと執事のエドガーさん、それに「ミカヤさん、番長!?」とヴィヴィオさん達が驚かれたように、この場に居ないはずのお2人もご一緒でした。ルーツィアさん達が「いらっしゃいませ。どうぞお上がりください」と招き入れます。

「本日はお招きしていただきありがとうございます」

「おう、ちびっ子ども。オレはちょっとそこでミカ姉と会ってな」

「さらに言えば、ヴィクターの車がフライハイト邸へ向かって走っていくのを見て、もしやと思い来てみれば・・・」

「お嬢の車が入っていくじゃねぇか。しかも車ん中にはジークも一緒だしよ」

一礼したヴィクターさんやエドガーさんをジロリと見た番長さん。ヴィクターさんは「本来、今日招かれたのは私とジークだけだったもの」と小さく溜息を吐きました。

「むぅ、確かに勝手に付いて来たのは申し訳なかった」

それを聞いてミカヤさんがヴィクターさん達に謝罪しました。その間、私はジークリンデ選手を見ていたのですが、インターミドルの試合映像で見た堂々とした佇まいは今では鳴りを潜め、ヴィクターさんに隠れるような姿勢です。ひょっとしたら人見知りなんでしょうか・・・。

「まぁいいじゃない、ヴィクトーリア。ミカヤちゃんと番長とは知らない仲じゃないし」

「あ、あの! チャンピオンがどうしてここに!? それにダールグリュン選手とシェベル選手まで!」

「あら? エルスさん。どうし・・・あ、チームナカジマの子たちとの練習日が今日だったのね。お疲れ様ですわ」

「やあ、エルスちゃん。去年ぶり」

「おいこら、アホでこメガネ。オレをシカトするとはどういう了見だ? 今年のインターミドル前に決着付けとくか、あ?」

エルスさんは口をわなわなと震わせ、何故か番長さん以外の方の登場に驚きを示しました。そんな態度が許せなかったようで番長さんがエルスさんに詰め寄りますと、エルスさんもまた「居たんですか似非不良さん! ええ、上等です! というかアホでもデコでもありません!」と詰め寄り返しました。

「おーい。とりあえず応接室へ行こうか。外寒かったでしょ? ルーツィエ、オットー、ディード。人数分のコーヒーと茶菓子を用意して。応接室への案内はわたしがするから」

「「「かしこまりました」」」

ルーツィエさん達に指示を出した後、シャルさんはエルスさんを見て「あなたはどうする? 一緒に来る?」と尋ねました。

「え?・・・ですが・・・」

「ミカヤちゃんや番長は同席するつもりなんでしょ?」

「許されるならば、ですが」

「ジークとは一応ダチなんで。まぁ断られたら大人しく引くっスけど・・・」

番長さんがそう言ってジークリンデ選手の肩に腕を回しました。シャルさんがジークリンデ選手に「だそうだけど?」と尋ねると、「ウチは一緒でもええですよ。その子はどうかは判らへんけど・・・」ここでようやく、ジークリンデ選手と私の視線が目線が合いました。

「私も問題ありません。聞かれて困るような話ではないですし」

「ん。じゃあ全員、応接室へ行こうか!」

というわけで本館西前にある応接室へ向かうことになったわけですが、その途中・・・

「ジーク。先ほどから一向に私を見ようとしないね。少し傷つくよ」

ミカヤさんが、ヴィクターさんを挟んで縮こまっているジークリンデ選手に向けて溜息交じりにそう言うと、ジークリンデ選手は「・・・ウチ、去年のインターミドルでミカさんを・・・」とても辛そうな面持ちでミカヤさんを見ました。

「はあ。まさかそれをずっと気にして私から距離を取っていたのかい?・・・エレミアの神髄は、君の命が危険と感じた際に、体が反射的に発動させるんだったね。君は疎ましく思っているだろうけど、それもまた君のご先祖様から頂いた大切なギフトだ。エレミアの神髄を含めた君の全力の力と技を超え、今度こそ自分が勝つという目標を掲げて君を追い駆けている。私を含め君に負けた選手みな、そう思っていると思うよ。そもそも選手である以上、怪我は付き物だ。負傷は元より覚悟は出来ている。なぁ、番長、ヴィクター、エルスちゃん?」

「応よ! 負傷が怖くてインターミドルに出れっかよ!」

「その通りですわ。怪我を負うことも、負けることも、それを含めての競技選手ですもの」

「そうですね。ですから勝つために頑張るんです。負けてもまた次で勝ちます、と」

「そういうわけだ、ジーク。今年は必ず君に勝つ」

「ミカさん、みんな・・・。はいっ!」

ジークリンデ選手の表情や纏う空気がガラリと変わり、ヴィクターさん達と軽い談笑を始めました。

「はい、到着! 好きなとこに座って~」

応接室は縦長で、いくつもの分厚いカーテンで仕切るタイプのもの。今は全て開かれていて10人以上の大所帯であるにも拘らず、まだ余裕のある広さを有している。1人用のソファが楕円形に人数分並べられており、シャルさんの促しに従って、チームナカジマとヴィクターさん達大人組に分かれて、向かい合うように座った。

「さて・・・と。まずは今日、アインハルト・ストラトスとジークリンデ・エレミアを引き合わせた理由を、事情を知らない子たちに話そうか。アインハルト」

シャルさんに呼ばれた私たちは「はい」と頷き返し、最初に私の事情を説明することに。古代ベルカの諸王の一角、覇王クラウス・G・S・イングヴァルトの直系であり、その記憶をそっくりそのまま受け継いでいる記憶継承者であること、クラウスの悲願である覇王流を最強たらしめることを目的として、誰とも深く関わらずに生きてきたこと、名のある格闘家にストリートファイトを挑もうとしていたこと、そしてイクスさんやヴィヴィオさん達、ノーヴェさんに誘われて、その考えを改めてインターミドルに挑戦することを決めたことなどなど・・・。

「・・・これが、私の簡単な経歴です。今でも思います、ルール無用の命懸けの闘いを行おうとしていた私は、まさしく世界を知らなさ過ぎた愚か者でした」

話の途中で入室したルーツィエさん達の出してくれたコーヒーを、ここで始めて口にする。チームナカジマのメンバーそれぞれの好み通りに入れられた砂糖とミルクのおかげで飲み易い。

「自分の戦闘スタイルを悩んで構築する時間を省いて、いきなり覇王流だっけか? 古代ベルカの格闘武術を自分のものとして扱えるんだから、便利なもんだと思いながら話を聞いてたが・・・。記憶に引っ張られちまうと、そんな辛い事になっちまうんだな」

「私は少し気にはなっていたんだよ、アインハルトちゃん。チームナカジマとの練習試合をしていると、君だけが鬼気迫るというか・・・」

私の話を聞き、番長さんとミカヤさんが沈痛な面持ちを浮かべました。そんな中、「どうかした、ジーク?」とヴィクターさんが、何やら考え込んでいるようなジークリンデ選手へと声を掛けました。

「あーうん。あの、この子らの練習の時の映像とかあらへんでしょうか? ちょう気になる事があって・・・」

「ん。ノーヴェ」

「あ、はい、シャルさん。じゃあミカヤちゃん達との練習の映像を出します」

ミカヤさんやミウラさんとの練習試合の映像が、応接室の中央に展開された大きなモニターに表示される。そして映像が終わってモニターが消えると、ジークリンデ選手とヴィクターさん、番長さんにミカヤさんの4人の視線が私へと集中していることに気付いた。

「ヴィクター達はどう思う? 直接練習相手になったミカさんは・・・?」

「思ってた以上に深刻すぎんだろ・・・」

「主観的でも感じていた何かを、こうして客観的に観たことで確信できたよ」

「見ていて少し痛々しいわね・・・」

「うん・・・。アインハルトちゃん・・・やったね。ウチやヴィクター達が思うたことを、簡潔に言わせてもらうけど。ちょう気を悪くしたらごめんな」

ジークリンデ選手の目が真っ直ぐ私を捉え、そして「君、全然笑わへんね。というより楽しんでへんな、って思うてる」と、胸に痛みの走る言葉を投げかけてきました。
 
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