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レーヴァティン

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第七十九話 江戸の街その八

「そうなんか」
「確かに海のもんが多いぜよ」
「鰹とかな」
「鰹は外せんぜよ」 
 当季はまさにと述べた。
「あれの叩きは名物ぜよ」
「やっぱそやな」
「それでもぜよ」
「川のもんも食うんか」
「鯉とか沢蟹、鮎とかをのう」
「鯉なあ」
「あれは美味いんじゃが」
 それで有名だ、しかも精がつくということで鯉を食うことにかなり執心している人もいる位である。
「しかしじゃ」
「それでもな」
「そうじゃ、虫じゃ」
 これが心配だというのだ。
「それでぜよ」
「だからやな」
「祖父ちゃんも言ってるぜよ」
「今もかいな」
「下手に生で食うたらいかん」
 川魚はというのだ。
「海でもちょっと古いとじゃ」
「生はあかんか」
「そうじゃ、それでじゃ」
「ここでもやな」
「一回術で冷やしたんじゃ」
 氷の術で氷で囲んで冷凍したというのだ。
「かちこちにしたったぜよ」
「そこまでするとな」
「中の虫は全滅ぜよ」
 一匹残らず死んでしまうというのだ。
「そうしないとぜよ」
「大変やからな」
「虫は怖いぜよ」
「あれはほんまに怖いからな」
「祖父ちゃん曰くホラー漫画かそうした映画ぜよ」
 そうした世界の話だというのだ。
「実際にのう」
「話聞く限り実際にそやな」
「そうぜよ、だからわしも用心したぜよ」
「祖父ちゃんの話を思い出してか」
「そうじゃ、そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「冷やしたぜよ」
「賢明やな」
「祖父ちゃんには食い合わせの話もしてもらったぜよ」
「鰻と梅干とかやな」
「あと西瓜と天婦羅もぜよ」
「その話もしてもらったんやな」
「板垣退助さんが言ったそうぜよ」
 明治の元勲で高知の偉人の一人である、坂本龍馬が主人公のある漫画では後藤象二郎共々徹底して嫌な奴に描かれていたが実際は乱暴者でも下の者にも寛容で坂本龍馬とは顔見知りではないがお互いに認め合っていてしかも親戚同士だった。
「それで祖父ちゃんも実際に試してな」
「あたらんかったんやな」
「そうなったぜよ、それでじゃ」
「あんたにも言うたんか」
「そうぜよ」 
 まさにというのだ。
「それでその日鰻丼と天婦羅出してくれてのう」
「梅干しもやな」
「デザートは西瓜だったがのう」
「あたらんかったんやな」
「平気だったぜよ」
 笑ってこう言うのだった。
「ぴんぴんしていたぜよ」
「成程な」
「まあ祖父ちゃんの一番好きな人は龍馬さんじゃったが」
「それでもか」
「板垣退助さんも好きでな」
「その話実践して教えてくれたんやな」
「そうぜよ、それで祖父ちゃん今は高知市で居酒屋やってるぜよ」
 その店でというのだ。
「叔父さんが継ぐからのう。高地に来たら寄ってくれたらええわ」
「ああ、高知に行ったらな」
「地酒をたっぷり楽しめるぜよ」
「高知の海の幸もでござるな」
 智も聞いてきた。
「左様でござるな」
「鰹以外にも一杯あるぜよ」
「では海老も」
「勿論ぜよ」
「伊勢海老もでござるか」
「いや、伊勢海老もあるが」
 この海老についてはだ、当季は智に微妙な顔で答えた。 
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