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レーヴァティン

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第七十九話 江戸の街その九

「あれはやっぱりのう」
「本場は違いでござるか」
「伊勢じゃ」
 こちらだというのだ。
「あちらじゃ」
「そうなるでござるか」
「あの海老は負けるぜよ」
 高知で獲れてもというのだ。
「あと鎌倉もええがのう」
「ああ、鎌倉海老でござるな」
 伊勢海老はこちらではこう言うのだ、そこで獲れて美味いのだ。
「そちらもでござるな」
「本場じゃから」
 それでというのだ。
「負けるぜよ」
「そうでござるか」
「そうぜよ」
 伊勢海老にはこう言うのだった。
「だからその海老はそうしたところで食うぜよ」
「わかったでござる、ただ」
「本場の伊勢海老はのう」
「高いでござる」
「美味いことは美味にしても」
「あれは凄いでござる」
「鹿児島の伊勢海老安かったちゃよ」
 愛実がこう言ってきた、見れば刺身を山葵醤油で美味く食べている。醤油と山葵や生姜があると刺身は最高だ。
「うちが食べた時三千円いかなかったっちゃ」
「伊勢海老がでござるか」
「そうだったっちゃ」
「それは信じられないでござるな」
「お刺身を食べて頭はお味噌汁だったっちゃが」
 それでもというのだ。
「三千円いかない、二千五百円位だったっちゃ」
「凄いでござる」
「鹿屋に行った時っちゃ。ただ小さかったっちゃ」
「大きさはでござるか」
「三重の方とは違うっちゃ」
「あちらの方が大きいでござるか」
「そうだったっちゃ」
 こう智に話すのだった。
「そこは仕方ないっちゃな」
「安いだけにでござるな」
「それだけの値段っちゃ」
 そうなるというのだ。
「大きくて美味しいとっちゃ」
「それなりの味になるでござるな」
「伊勢海老も然りっちゃ。ただ鹿児島の伊勢海老も美味しかったっちゃ」
 味自体はよかったというのだ。
「お刺身よかったっちゃ」
「味自体はでござるか」
「よかったっちゃ。お酒はビールを飲んだっちゃが」
 愛実は今は焼酎を飲んでいるがその時はその酒だったというのだ。
「これとも会ったっちゃ」
「ビールでござったか」
「この島にはないお酒っちゃが」
 それでもというのだ。
「美味しかったちゃよ」
「それはよかったでござるな、ただ」
「ただとは?」
「いや、拙者起きても最近ビールを飲んでいないでござる」
 智はここでこのことに気付いた。
「思えば」
「そうっちゃ」
「嫌いではないでござるが」
「他のお酒を飲んでいるっちゃ」
「最近は缶のカクテルとかを飲んでいるでござる」
 こちらの酒をというのだ。
「そうなっているでござる」
「ああしたお酒っちゃ」
「そうでござる」
「ああしたお酒はアルコール度はビールより低いっちゃな」
「だから飲んでもあまり酔わないでござる」
 多く飲んで酔うものだ、こうした酒はそうした酒なのだ。
「どうにも」
「そうっちゃな」
「しかし最近あの甘さが気に入っていてでござる」
「よく飲んでいるっちゃ」
「そうでござる」
「そういえばうちもそうしたお酒が好きっちゃ」
 缶のカクテル類がというのだ。
「中には強いお酒もあるっちゃよ」
「ありますね、確かに」
 夕子は愛実のその言葉に焼酎を飲みつつ応えた。 
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