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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epica22鬼神~MIYABI~

 
前書き
ミヤビ・キジョウ?戦イメージBGM
龍が如く4 伝説を継ぐもの「Four Face」
https://youtu.be/fKRiNkW4I-s 

 
†††Sideイリス†††

「さ、掛かっておいで。あ、先に言っておくけどこの結界からはどんな手段を用いても脱出できないから、逃げようなんて思わないこと」

たとえわたしが負けても結界は解除されない。何せこの結界の発動者はルシルだ、わたしから連絡しない限りはミヤビは逃げられない。ミヤビと思しき般若の仮面持ちは周囲を窺った後、観念したのか構えを取った。

「何も言ってくれないんだ。それとも喋れないようにされてるの? でも喋れるのなら降参するようにね。あなた強いし、手加減は出来ないよ・・・!」

VS・―・―・―・―・―・―・―・
其は真偽の判らぬ力の体現者ミヤビ
・―・―・―・―・―・―・―・VS

――閃駆――

地面を蹴って一気に仮面持ちへと突っ込みつつ、“キルシュブリューテ”の刀身に障壁・結界破壊効果を有する魔力を付加させる「光牙裂境刃!」を発動。仮面持ちは両拳を胸の前で打ち付けた。

――鉄化鬼腕――

「はぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

“キルシュブリューテ”を右薙ぎに振るう。閃駆で刀身の攻撃範囲に仮面持ちを入れたから、ここで後退したとして余裕で刃は届く。回避するにはしゃがみ込むかジャンプするかの二択。仮面持ちは曲げた左腕を掲げて盾として、わたしの斬撃を受けるとガキィーン!と甲高い音を出た。

「(防御魔法でも防護服でもない、素肌自体が硬化してる・・・!)やっぱりミヤビじゃん!」

鬼の身体資質を使う際は、鬼の角を使う必要がある。ミヤビが今付けてる般若の仮面の角は、わたしの知ってる般若の角より二回り以上大きいから、ミヤビの角が隠れてるみたいね。

「せいやっ!」

「・・・っ!」

――鋼強鉄化――

弾かれた勢いを殺すことなくその場で旋回して、今度は左薙ぎをミヤビの右上腕へと打ち付けたけど、今度は防御することなく棒立ちのまま受けて見せてきた。わたしの斬撃なんて防御する必要すらない、って言われてるような気がして、ちょこっとイラッってしてしまう。

(ホントにミヤビ? なんか嫌みったらしい真似してるんだけど・・・)

繰り出される反撃の右ストレートを、首を深く横に傾げることで躱して、弾かれた“キルシュブリューテ”に電撃を付加して右手で逆手持ち。そしてミヤビの脇腹目掛け、麻痺効果を重点的に強化した「雷牙月閃刃!」を左斬り上げで振るった。刃はミヤビの脇から肩までを一閃して、あの子を吹っ飛ばした。

「物理攻撃が通用しない以上、魔力攻撃で攻めさせてもらうよ!」

――光牙十紋刃――

魔力付加してた“キルシュブリューテ”を×十字に振るって、×十字の魔力斬撃を放つ。ミヤビには麻痺が入っていないみたい。軽やかにスライディングすることで、×の下にある三角の空間に滑り込んで回避した。わざわざ次の行動に移る手間が掛かる方法を選んだのか、ちょっと気になる。

「ま、今はどうでも良いよね!」

――真紅の両翼――

両足を魔力で強化しての超ジャンプ、背中から真紅に輝く魔力の翼を展開。上空から立ち上がり途中のミヤビへと剣状魔力砲撃の「光牙烈閃刃!」を放った。ミヤビは強烈な脚力を以って地を蹴り、すぐにわたしの砲撃の効果範囲から離脱した。

「カートリッジロード!」

刀身の峰側の付け根にあるコッキングカバーが上にスライド。装弾数5発の回転式シリンダーがガコンと回った後にカバーが閉じる。カートリッジに込められた魔力が、わたしの魔力出力を爆発的に強化してくれる。

「はあああああああッ!」

――光牙烈閃連刃――

「・・・っ!」

連続で放った砲撃は地面にクレーターを作りながら着弾し続け、ミヤビは魔力爆発や飛来する破片の中を駆けて回避し続ける。ミヤビに中遠距離攻撃が無いのが幸いよね。騎士なのに、あなたが憧れてくれてる隊長なのに、こんな汚い戦い方をしてごめんね。

――風鬼降臨――

(でも気を付けることはある。ルミナの高速移動魔法・ ゲシュヴィント・フォーアシュトゥースを教わって習得した、鉄兵風馳はかなり厄介なのよね)

――鉄兵風馳――

「っ・・・!」

なんて考えてたら、ミヤビが早速使ってきた。その姿を一瞬見失ってしまって、すぐに15mほど上空に居るわたしの元へと突っ込んできた。すぐに「烈閃刃!」を放つけど、魔法陣を足場として使って空中で方向転換するっていう、陸戦ベルカ騎士がよく使う手段をミヤビも用いて、わたしの砲撃を回避した。

――法陣結界――

わたしが以前教えた、複数の魔法陣を空中に展開することで、飛行魔法が使えなくても空中での高機動戦が行える手段・法陣結界を発動した。わたしの最大展開数32枚よりかは少ない12枚だけど、今のミヤビの速度を捉えきれないわたしには十分な数だ。

(ルミナ直伝だからな~。直線での加速力は、ルシルの空戦形態以上だから・・・)

――鉄兵風馳――

でも法陣結界には欠点もあるって教えたよね、ミヤビ。わたしに突っ込んできたミヤビが繰り出すのは「風牙裂千 空帝 剛嵐拳!」っていう、ドリル状に渦巻かせてる風を纏った拳打。名前から判るとおり、ルシルの複製近接魔法を基にしたものだ。そして対砲撃技でもある。あのドリル状の風が砲撃の魔力を拡散させちゃうのだ。ホント厄介な魔法を教えたよねルシル。

「っの・・・!」

両翼を羽ばたかせて横に移動することでミヤビの一撃を躱しきる。頭上へと通り過ぎてくミヤビがさらなる魔法陣の足場を展開するより早く、両翼を羽ばたかせて急上昇。

「おおおおおおおッ!」

――風牙裂千 空帝 剛嵐脚――

「はああああああッ!」

――雷牙翔裂刃――

上昇と落下の狭間の一瞬の静止の中、ミヤビは右脚に暴風を巻き付けての蹴りを繰り出し、わたしは電撃を付加した"キルシュブリューテ”を振り下ろして、熊手のような魔力刃を放つ。脚力はすごいけど空中に居たことで加速力も攻撃力もないから、ミヤビは「ぎゃぅ・・・!」わたしの攻撃に簡単に飲み込まれて、力なく落下を始める。

(助けるか? でももし、手を出して反撃を食らったら・・・)

さすがのわたしもミヤビの一撃を直撃で食らいたくない。でもせめて足場くらいは、なんて考えてるところで、ミヤビは宙で体勢を立て直して足元に魔法陣を展開して着地した。ミヤビがこっちを見上げた直後、般若の仮面がガシャンと割れて、目出し帽と翠に輝く角2本を確認した。

「ミヤビ・・・!」

「・・・すみません、シャル隊長。私、やっぱり管理局が許せないです。犯罪者が居るから犠牲者が生まれ、遺族が生まれる。それをどうにかするために人手不足という理由で優秀な子を戦場に送る。そんな管理局が許せません」

「なるほど。情に訴えた洗脳ってわけ・・・?」

角を見る限りミヤビが偽者とは思えない。ルシルの予防で魔法・魔術・機械技術による洗脳は防ぐことになってる。恐れてた事がやっぱり起きたってわけだ。ミヤビの純真を利用しやがったのね。

「わたし達と一緒に特騎隊を再開するっていう気持ちも、もう無いわけだ・・・・」

「シャル隊長たちと共に戦いたい思いは今も変わりません。だから・・・最後の大隊に入りましょう、皆さんで。そうしたらずっと一緒です♪」

目出し帽を引き裂くように脱ぎ捨てて素顔を晒したミヤビの表情は、苦悶を浮かべるものだった。演技には見えないし、どうやら本気で最後の大隊に下り、なおかつわたし達をスカウトしてる。わたしは大きく溜息を吐いて、「ねぇ、ミヤビ」ってあの子の目を見つめる。

「わたしは、管理局員である前に騎士なの。犯罪者には屈せない」

「どうしてもですか?」

「どうしても、よ」

マジで悲しそうな目をするミヤビに心が痛むけど、ここは心を鬼にして全力で迎え撃つのみ。ミヤビも「でしたら倒した上で連れて行きます」ってやる気満々だしね。

「そのセリフ、そのまま返すよ!」

――連刃・天舞八閃――

空いてる左手の指の間に4本の魔力刀を生成。ミヤビが展開したままの魔法陣12枚のうち4枚に投擲して、突き刺さったところで「滅!」のキーワードを発して一斉に爆破させる。魔法陣も粉々に砕けて、ミヤビの足場を減らすことに成功。

「くぅ・・・!」

「ほら、次々と魔法陣を展開しないと、落っこちるよ!」

もう一度左手の指に挟むように4本の魔力刀を生成して、また別の魔法陣へと投擲。そして「滅!」と爆破して魔法陣を砕く中、右手に持つ"キルシュブリューテ”の刀身に魔力を付加。ミヤビ自身へと「光牙烈閃刃!」を放つ。

「私だって・・・!」

――鉄兵風馳――

「負けるわけにはいかないんです!」

横っ飛びすることで砲撃を躱したミヤビは、進行方向に魔法陣を展開。ソレを蹴ってわたしへと突っ込んで来た。だから近接戦に応じるほどわたしは優しくないってば。両翼を羽ばたかせてその場から離れつつ・・・

「風牙烈風刃!」

風圧の壁をミヤビへと放つ。体の側面への一撃だったこともあってミヤビは「ぅあ!」と吹っ飛ばされて、さっきまでわたし達の居たトレーニング施設の屋根に突っ込んだ。

――連刃・天舞八閃――

もう一度左手に魔力刀を1本だけ生成。八閃の名前を関してる魔法だけど、最大生成が8本っていうだけで1本だけの生成も出来るのだ。

――炎鬼降臨――

「うおおおおおおおッ!」

――赤化旋風――

施設ごと飲み込むほどの強力な火炎旋風が巻き起こって、その熱波がわたしにも届いたことで「あっつ!」思わず距離を取る。火炎旋風が収まり、空に火の粉が舞う中で赤色の角と翠色の角を1本ずつ生やしたミヤビが姿を見せた。肌の色も熱を帯びてる所為で濃いピンク色をしてる。

「うへぇ。最も火力のある炎鬼と最も速い風鬼のダブルじゃん・・・」

器用なことに、ミヤビはどっちか片方の角を別の変換資質を有するものに出来る。今まさにやってる事がそうだ。片方を炎熱、片方を風、みたいにね。わたしが仮想的として戦う時、苦手とする組み合わせの1つだ。一番嫌いなのは電気変換資質の雷鬼と風鬼。まぁこれが速いのなんの。速いし痺れるしさ、戦いにくいんだよね。

「ば~くね~~~つ!!」

――天災烈火――

直系20mほどのベルカ魔法陣を頭上に展開したミヤビは、放射面から噴火かと思えるほどの火炎砲を発射した。炎鬼と雷鬼は遠距離と広域の攻撃を扱える形態で、特に炎鬼は恐ろしい火力で広域攻撃してくるから怖い。

「降り注げ!」

空に昇って行った火炎砲が爆発を起こした。雨のように大人サイズの火炎弾が降り注いで、雪のように火の粉が舞い落ちてくる。空戦殺しの対空魔法だ。わたしは羽ばたきに強弱を付けて火炎弾と火の粉を躱しつつ、ミヤビの動きを注視する。

「業火・・・!」

グッと背後に引いた両腕から炎が噴き上がらせたミヤビは、「拳衝!」と両腕を突き出して、拳の形をした砲撃を発射。砲撃が迫る中、わたしは回避じゃなくて、前方へ向けて魔力波を津波の如く放つ「光牙聖覇刃!」を使って迎撃。ミヤビの砲撃や降り続く火炎弾や火の粉を蹴散らす。火炎弾や火の粉が無かったら回避を選ぶけど、こうも空が狭いと下手に動いたら酷い目に遭うのは確実だ。

「おわっ・・・!?」

ガクッと体勢を崩してしまう。その理由は「ミヤビ・・・!」がわたしの足元に移動していて、両足首を掴んでいたから。

「やっと捕まえました。ふんっ!」

「きゃあああああああッ!」

ジャイアントスイングみたく振り回された後にポイっと放り投げられて、わたしは近くにそびえ建つビルに叩き付けられて、外壁をぶち抜いて中にまで吹っ飛ばされた。でも外壁に叩き付けられる前に両翼で全身を覆ったおかげで「あいたた」ってお尻を撫でる程度のダメージで済んだ。

「・・・って、ここ男子トイレじゃん!」

結界が展開中ということもあって男の人が居なかったから良かったものの、もし利用者が居たらわたし、絶対に大声で叫んで隙だらけになってた。

――業火拳衝――

「っと・・・!」

わたしが開けた外壁の穴の向こうから火炎砲が放たれてきた。室内での爆発なんて堪ったもんじゃない。仕方ない。陸戦だと邪魔になる両翼を解除して・・・

「剣神モード、スターテン」

わたしの固有スキル、絶対切断アプゾルーテ・フェヒターを発動。さらに「絶刃・斬舞一閃・新式!」を発動。本来はシャルロッテ様がわたしの体の支配権を持ってないと発動できない絶刃だけど、わたし単独でも発動できるように頑張ったのだ。

「(それに、シャルロッテ様とはここ数年、お話が出来てない。居ることは居るみたいだけど・・・。眠ってるのかな・・・?)っのぉぉぉぉーーーーーッ!!」

とにかく、絶刃の一振りで火炎砲を真っ向から掻き消して、砲撃の後ろに付いて来てたミヤビと再び対峙。突っ込んで来るミヤビは両前腕に炎を付加していて、「紅蓮拳殴!」と炎熱付加された拳による打撃攻撃を繰り出してきた。

「くぅ・・・っ!」

“キルシュブリューテ”を振るって連続で打たれる火炎拳を弾いては、魔力付加した直接斬撃、「光牙月閃刃!」による反撃を行う。ルミナの弟子っていうわけで、決定打を与えようとしても的確に反応して防いでくるし、何より鬼の身体資質による肉体の硬質化っていうのが厄介。防護服無しで魔法にすら耐えられる頑強さを誇るから。

「紅蓮蹴波!」

「おっと!」

ミヤビは炎熱拳だけでなく炎熱付加された蹴りも加えてきた。“キルシュブリューテ”で両腕を弾いた直後ということもあって、あご狙いで振り上げられた蹴りを上半身を反らすことで回避・・・してすぐに「ぎゃう!?」お腹に突き蹴りを食らって吹っ飛んだ。トイレの内壁に叩き付けられるわ、お腹を蹴られるわで「げほっ、えほっ!」激しく咽る。

「煉牙灼星 爆帝 双焔掌!!」

炎というより最早光のようにも見える強烈な炎を付加した、ルシル直伝の両掌底攻撃を発動して迫り来るミヤビに、「ちょっと調子乗りすぎかな?」って笑みを向ける。

――光牙針縫刃――

刀身に魔力付加した“キルシュブリューテ”を床に突き刺し、複数の魔力刃を床より突き出させる。攻撃魔法じゃなくて拘束魔法に分類されているもので、ザフィーラの鋼の軛と同じ効果を持ってる。

「ぅあ・・・!?」

拘束刃はミヤビの両腕、両足、右脇腹、左肩と貫いた。虫の標本みたく宙で拘束されたミヤビは「ぅぅぅ・・・!」って足掻くけど、完全に拘束されてしまってることで抜け出せない。直接攻撃はこれで無力化したけど、放出系の魔法はまだ残されてる。ここで追撃をやめると酷い目に遭いそう。

「(だから・・・)ごめんね?」

――雷牙月閃刃――

「謝る必要はないです、シャル隊長」

観念したのかミヤビは目を伏せ、足掻くのをやめた。振り上げていた“キルシュブリューテ”を振り下ろし始めたと同時、「だって、まだ終わってませんから」という、ミヤビが漏らした言葉を聞き取った。翠と赤の角が無色透明のものへと変わってることから、ひょっとしたら・・・。

「ミヤビぃぃぃーーーーーッ!」

「鬼身城塞!」

あー、やっぱり。放電する“キルシュブリューテ”の刃面がミヤビの体に直撃はしたけど、キィン!と甲高い音を立てて弾き返されたし、雷牙の麻痺効果も通用してないっぽい。さすが最強の防御形態。ルシルの上級砲撃やルミナの全力パンチを無傷で防ぐトンデモ防御。

「ていっ!」

わたしの拘束刃を粉々に砕いて自由になったミヤビが着地するより早く、斬りつけた箇所から凍結を行って、最終的に全身を凍結封印する捕縛斬撃、「氷牙凍封刃!」を振るった。凍結封印の発動条件は相手を斬るってことで、今のミヤビのように「無駄ですよ?」白刃取りをされたら不発に終わってしまう。

「狭い場所での戦闘はシャル隊長、苦手でしたよね? 外に戻りましょう・・・か!」

“キルシュブリューテ”の刀身を掴み取ったミヤビがわたしをまたぶん回して、ポイッと放り投げた。しかも屋内に突っ込んだ際に開けた穴からじゃなくて、また壁に叩き付けて新しい穴を開けさせるっていう鬼畜っぷり。しかも両翼で庇うことも出来なかったから、「あぐぅ・・・!」全身で衝撃をもろに受けることに。

(外・・・! 両翼を展開しないと地面に叩き付けられる・・・)

――真紅の両翼――

宙に放り投げ出されたわたしは再び両翼を展開。と同時に、「はああああああッ!」突っ込んできたミヤビに、「風牙烈風刃!」と風圧の壁を叩き付ける一撃を放った。高速移動魔法を使ってない、突進力の弱いミヤビになら烈風刃でも十分効果がある。案の定ミヤビも「ひゃあ!」烈風刃に押し戻される形で、さっきまで居たビルの別の階へ突っ込んだ。

「絶刃・斬舞一閃・新式!」

その隙に左手の指の間に魔力刀を4本生成して、ミヤビの突っ込んだビルとは別に宙に投擲する。そして「滅!」と爆破して、付近の魔力濃度を高める。

「おおおおおおおおッ!」

土煙の中からミヤビの雄叫びが聞こえる。完全防御形態・鬼身城塞は確かに破格の防御力を有するけど、持続時間は3分。発動中は他の属性の角を展開できず、さらに中遠距離・広域攻撃などの広範囲魔法も使えないという欠点がある。制限いっぱいまで逃げ回りつつ、魔力濃度を高め、集束砲撃で一撃必倒だ。

――無常迅速――

さらにもう2回、魔力刀を爆破させていると、魔鬼モードでの高速移動歩法でビルから飛び上がってきたミヤビは、空中に戦場を作るように魔法陣を円形状に複数枚と展開してそこに降り立った。

「わたしが空を飛べる以上、こんな空中に戦舞台を作る意味は無いと思うんだけど? それともわたしが、あなたに倣って陸戦に切り替えるなんて甘い考えでもした?」

カートリッジを3発ロードした上で“キルシュブリューテ”の刀身へと魔力を集束させ始める。

「いいえ、まさか。・・・シャル隊長、もう一度お願いします。最後の大隊に入ってください。ルシル副隊長たちへの説得も一緒にしていただきたいです」

ミヤビも両手両足に魔力を付加。わたしが断ったら一転攻勢に入るんだろうね。両翼を小さく羽ばたかせてミヤビの立つ戦舞台より距離を取り始めると、ミヤビも今にも駆け出しそうな姿勢を取った。

「さっきも言ったけど、そのスカウトは受けない。というか、あなたがこっちに戻ってきなさい。最後の大隊は殺害という方法を選んだ。その時点で正義は無い。ま、悪で悪を討つって公言してるから今さらなんだけどね。あなたも人を殺す覚悟は出来てるって考えていいわけ?」

「・・・それは・・・」

「ちょっと待って。そんな覚悟も無いのに最後の大隊に入ったわけ?」

「ち、違います! 私だって犯罪者なら殺せ・・・ます」

「そんな弱々しい声の張りで、よくそんな戯言を言えたものね。悪い事は言わないから、そんならしくない真似はやめなさい」

「いいえ、やめません! 管理局の・・・ううん、違う。次元世界の子供たちの未来のために!」

戦舞台を蹴ってわたしの居る高度にまで跳んできたミヤビは、「光牙輝星 天帝 双煌掌!」と両掌底を繰り出してきたけど、「ごめん。届かないよ、それ」わたしは急速上昇することで、ミヤビの攻撃が届かない高度へと離脱。

(ミヤビが足場を展開しての追撃へ入る前に・・・!)

ミヤビが鬼身城塞を発動してからそろそろ3分。その防御形態を解除してる中での集束砲なら、ミヤビを確実に撃墜できる。ミヤビが足元に魔法陣を展開すると同時・・・

「極光牙・・・」

魔力を集束しきった“キルシュブリューテ”を振り下ろし・・・

「煌覇閃謳刃!」

特大の剣状集束砲を放った。至近距離での直撃にミヤビは回避も出来ずに集束砲に呑まれて、共に地面へと激突。魔力爆発に呑み込まれた。爆発が収まったのを確認して地上近くまで降下する。濛々と立ち込める砂煙の中、ミヤビが倒れてるのを視認した。

「大隊のセーラー服じゃなくて小袖袴っていう本来の防護服だったら・・・ね」

セーラー服がボロボロになって、素肌や下着を晒してるミヤビの元へと歩み寄った瞬間、「甘いですよ!」ってミヤビが足払いを掛けてきた。転倒する前に展開し続けたままの両翼を羽ばたかせて体勢を立て直す中、“キルシュブリューテ”の刀身を左手で掴まれて、さらに「せいやっ!」わたしの腹部に拳打を打ち込んできた。

「かはっ・・・!」

魔力付加がされていないのにこの威力。激しく咽て、膝を折りそうになるのを懸命に耐えつつ、「雷牙・・・!」刀身に電撃を付加する。僅かでも感電させてしまえば、反撃に移れるはずだ。

「今の私には通用しません」

「はぁはぁ・・・まさか・・・!」

「はい。鬼身城塞の発動時間、3分から6分まで延びたんです。まだ効果時間中ですよ」

ミヤビが右手でわたしの胸倉を掴んできて、そのままグイッと持ち上げられて背負い投げされたわたしは「ぐふっ!」背中から地面に叩き付けられた。仰向けで倒れるわたしに、ミヤビが四つん這いで覆い被さってきた。

「シャル隊長。私と一緒に・・・行きましょう?」

なんて言いながらミヤビがわたしの首に顔を埋めて、「ひゃん!?」首にキスしてきた。わたし、女の子も好きだけど、でもそれは性的な好きじゃないから「ちょっ、待っ、うえええ!?」激しくうろたえる。とそんな時・・・

「ちょっと。何してるの?」

「ルミナ・・・!?」「ルミナさん!?」

恐ろしく低い声でそう聞いたルミナがミヤビの首根っこを引っ掴んだ後、「退きな!」ってあの子を軽々持ち上げるとふんっとブン投げて、また別のビルのエントランスドアに突っ込ませた。

「来な、ミヤビ。ここからは師匠の私が相手をしてあげる」

そう言ってルミナはちょいちょいとミヤビに向けて手招きをした。
 
 

 
後書き
今年最後の投稿です(31日なので当たり前。
残り僅かな2018年。皆様、良いお年を! 
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