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稀代の投資家、帝国貴族の3男坊に転生

作者:ノーマン
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6話:顔合わせと晩餐

 
前書き
・三点リーダー修正 2018/10/08 

 
宇宙歴752年 帝国歴443年 1月9日 オーディン
ルントシュテット伯爵邸
ザイトリッツ・フォン・ルントシュテット

乳兄弟と誓約を交わして数日が経過した。主治医のローゼからやっと退院の許可が出て、俺はオーディンにあるルントシュテット伯爵邸にいる。

生まれて以来、俺は領地であるシャンタウ星域の館で養育されてきたし、力をつける意味でも早く領地に戻りたい。
とはいえ、本来は両親と兄たちとの顔合わせの為に領地からわざわざ出てきたわけだし、あんなことがあったとは言え、両親は多忙、兄たちもそれぞれ士官学校と幼年学校に在籍していることを考えれば俺抜きでも家族が揃うことはまれだろう。

事故の後遺症を理由に領地に戻りたがればおばあ様は了承しそうだが、それはそれで悲しませることにもなりそうだ。

金儲けをするにも多少は元手がいる。元手の出元はおばあ様しか当てはないし、そうでなくても溺愛されながら養育されてきたのだ。おばあ様がしっかり俺を養育していると示す意味でもここは時間を割く必要なあるだろう。
特に父上や兄たちはいずれ俺が支える人物になる訳だから早いうちから人柄を見ておくに越したことはない。

今夜の晩餐は家族揃ってとり、明日には領地に出発する予定だ。フランツに追加で頼んだ資料を読み込んでいると扉がノックされ、おばあ様が部屋に入ってきた。

「ザイトリッツ、退院したとはいえ、あまり根を詰めては身体に障りますよ。ローゼから聞きましたがだいぶ資料を読み込んでいるようですね。いったい何を読み込んでいるのです?」

「おばあ様、ご心配には及びません。体調は万全です。ローゼは私のお産の際に取り上げてくれたことは後から知りましたが何やら彼女には安心感を覚えてしまい、甘えてばかりでした。私は良い患者ではなかったようですね。」

ローゼが俺の事を心配してくれるのは有り難いが、正直おばあ様はローゼの数倍難敵だ。攻め口上を与えるような告げ口は控えて欲しいところだが。
俺が落ち込むそぶりすると、

「別に責めている訳ではないのです。ただ、事故の前はザイトリッツは身体を動かす事を好んでいたのに急に資料にくぎ付けになりましたから、心配になったのです。」

「そうでしたか。実は記憶の確認のための資料をフランツに頼んだのですが、それを読み込むうちに領地を豊かに出来そうなアイデアを思いついたのです。とはいえ、若輩者の浅知恵で失敗すれば当家の名誉に関わりますし領民の生活にも関わりますので、思いついたことが実現できるのか資料とにらめっこをしている次第なのです。」

少し腹黒いが、ここは布石を打っておこう。おばあ様は少し驚いた表情をしながら

「あらあら、領地にいてくれるだけでも私の支えなのにさらに力になってくれるつもりなのね。今後に期待という所かしら。とはいえ、まずは今夜の晩餐会です。あなたはこの5年間ずっと領地におりました。本来なら両親や兄弟と一緒に養育されるのですが、いろいろな事情でこういう形になりました。緊張はしていませんか?」

おばあ様は心配げな視線を向けてくる。

「兄上たちがどんな方々なのかは気になっておりました。ローベルト兄上は士官学校、コルネリアス兄上は幼年学校にご在籍と聞きました。おそらく今後も年に数回会えるかという状況でしょう。しっかりご挨拶できればと思います。」

俺は伯爵号にはあまり興味はないし、三本の矢の話ではないが兄弟で争うこと程、無駄なことは無い。さすがに門閥貴族みたいな血と爵位だけが誇りみたいな人柄なら困るが、爺さまの薫陶もあっただろうしこの数年、門閥貴族の軍部への浸透を食い止めるのに四苦八苦していた両親をみているはずなので、それなりにまともに育っているだろう。

晩餐の用意が整ったとメイドが呼びに来たので、おばあ様と一緒に遊戯室に向かう。
今回は顔合わせがメインなので、それが終わった済んでから晩餐になる予定だ。

遊戯室に入ると既に両親と兄達が揃っていた。俺のせいではないが、初めて家族揃っての年末年始が大事になったわけだし、先手を打っておこう。

「父上、母上、お久しぶりです。ローベルト兄上、コルネリアス兄上、初めまして。ザイトリッツでございます。この度はご心配をおかけしました今後ともよろしくお願いいたします。」

すると兄たちはびっくりしたようだが長兄ローベルトが近寄ってきて

「心配したぞ、ザイトリッツ。私がローベルトだ。ずっと会うのを楽しみにしていたのだ。よく来てくれた。」

としゃがんで目線を合わせて肩に触れながら答えた。

「5歳にしてはかなりしっかりしてますね。おばあ様、厳しくし過ぎなのでは?次兄のコルネリアスだ。ザイトリッツこちらこそよろしくね。」

と次兄は頭をなでてくれた。

ローベルトの印象は、体育会の熱血キャプテンと言えばいいだろうか。いま15歳で士官学校1年次のはずだが、年齢以上にがっしりした体つきをしている。言葉遣いもまっすぐで良くも悪くも剛の者って感じだ。おそらく爺さまの若いころはこんな感じだったのではないだろうか。

コルネリアスの印象は、生徒会長ってとこかな。12歳で幼年学校2年次。長兄に比べると線は細いが、言葉遣いも柔らかく、柔軟な印象を感じた。

「これこれ、兄弟仲がいいのは良いことだが、父をのけ者にするのは感心せんな。」

父、ニコラウスが会話に混ざってくる。爺さまは前線指揮官としてより後方支援に適性があると判断したらしいが、確かに軍人ってよりデキるビジネスマンって雰囲気を感じる。

ただ、この5年間かなり激務だったのだろう。今年40歳のはずだが年齢以上にくたびれている印象があるし眉間の皺も深めだ。ただ歓迎はしてくれているのだろう。表情は柔らかい。
この後、初めての家族揃っての談笑が始まった。みんな意識したのだろう、交通事故の件は話題に出なかった。

父上は爺さまの逸話を話し、兄たちは士官学校や幼年学校での出来事を話してくれた。
はっきりしなかったが、兄たちも忙しいのだろう。こういう風に近況をお互いに話し合うのがとても楽しそうだった。

士官学校でも幼年学校でもやはり門閥貴族はわがまま放題な様だ。明言はしなかったが、爵位があるだけで試験に加点されたりすることもあるらしい。
だが、彼らの多くは実際に任官することはほぼ無いし、実際の評価で成績が下位になった場合、教官たちや成績上位者になにをするか分からない為、嫌がらせを防ぐ意味でも暗黙の了解になっているらしい。
もっとも兄たちは首席とはいかないが、実力で成績上位を保っているそうだ。

家族揃っての会話は思った以上に楽しい時間だった。その後、晩餐室に皆で移動して、コース料理っぽいものを食べながら、さらに会話を楽しんだ。テーブルマナーもバッチリだったのでまた驚かれた。少しやり過ぎたかもしれない。

晩餐が終わると父上と兄たちはシガールームに移動していった。俺はおばあ様と母上と一緒にお茶会だ。シガールームの方に参加できるかと思ったが、次兄が今回初めてシガールームに入るので、順序を守る意味で遠慮する事になった。
次兄コルネリアスが、そんなことは気にせず参加すればいい。頻繁に来れるわけではないのだからと言ってくれたのが嬉しかった。

お茶会といえば聞こえはいいが、ただの女子会だ。おばあ様に母上が愚痴ではないが色々と相談していた。
今更の話だが、俺を領地で養育する件もお願いしていた。正直、オーディンには悪い印象しかないし仮にこちらの屋敷に来たところで、父上も母上も俺に割く時間は無いだろう。
俺自身も、領地のほうが気が楽だし、今は金儲けというやりたいこともある。

母上は俺の養育に関われないことを寂しく思っている様だがこればかりはそうせざる負えない状況なのだから気にする事は無いのだが。

おばあ様は終始ご機嫌だった。顔合わせもうまくいったし、しっかり養育していると示す事もできた。駆け足になるが明日領地に戻る予定だ。 
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